「iOS 12」では買い物がより便利に Appleが新機能を小売関係者にプレビュー:鈴木淳也のモバイル決済業界地図(2/2 ページ)
全米小売協会(NRF)の「Retail's Big Show 2018」で、Apple Pay事業の責任者が登壇。そこでiOS 12の小売店向け新機能を紹介。Appleが対外イベントで情報を出すのは異例のことだ。
AppleがiOS 12の新機能を一部プレビュー
今回のBailey氏の講演で感じた変化は2つある。1つは自社イベント以外の業界イベントに顔を出すことで歩み寄りを見せたこと。そしてもう1つは、これまで正式発表まではクローズドで作業を進めて情報公開を行ってこなかったAppleが、あえて次期iOSに搭載予定の機能をプレビューすることで、早期に関係者を取り込もうという姿勢を見せたことだ。同氏は2018年中にもリリースされるとみられる「iOS 12」の小売店向け機能を一部紹介し、その活用と対応を促している。
店舗とユーザーが直接チャットできる
ここでプレビューされた新機能がBusiness Chatだ。店舗やサポートセンターが通話の代わりにチャットインタフェースを使って顧客とやりとりする機能で、今後はApple Maps(iOS標準のマップ)やSafariの店舗検索のメニューに標準追加していくと述べている。
基本的にiOS側で利用するのはiMessageのアプリで、Bailey氏は「iMessageは標準的なチャットインタフェースに全て接続でき、企業の設備との組み合わせでユーザーの対話チャネルを増やせる」とそのメリットを強調する。
チャット型インタフェースのメリットは、電話の自動応答よりは顧客にフレンドリーで応答性が早いこと、そして素早く決済等の仕組みに誘導できること。実際、NRFの展示会ではチャットインタフェースでおすすめ商品を選んだ後、そのまま決済へと遷移するサービスのデモストレーションがいくつか見受けられる。
私見ではあるが、チャットの応用範囲は広く、今後はアプリの一部はその機能の比重をチャットへと移し、こちらがモバイル端末利用の中心になるとみている。現在はモバイル利用時間の87%がアプリという状況だが、今後数年でその比重は下がり、最終的にチャットやMessengerなどの仕組みがマジョリティーに近い水準になるのではないかと予想する。
Appleとしてもこのトレンドをいち早く取り入れ、チャットインタフェースを活用するであろうビジネスユーザー(小売店)を先行して取り込んでおこうという狙いのようだ。
屋内地図検索で店舗を表示
機能プレビューの2つ目は「Indoor Maps」、つまり屋内地図だ。既に現行のApple Mapsでも一部建物については屋内地図が実装されているが、今後これをさらに強化していくというのがAppleの方針だ。屋内や地下ではGPSが使えず、道案内を含む直接的な誘導(ナビゲーション)が行えないという問題がある。
そこで、店舗検索を行った際に、建物上のどこに店舗があるのかをハイライトし、そこへの簡単な案内を挿入するだけでもユーザーフレンドリーだというのが同社の考えだ。このあたりのUI(ユーザーインタフェース)の工夫が機能強化のポイントとなる。
NFCタグの読み取りが可能に
最後がCore NFCだ。これはiOS 11以降に実装された機能で、iPhone 7以降のデバイスで利用できる。簡単にいえば5種類あるNFC Forum標準のNFCタグを読む機能で、FeliCaタグの読み込みも可能になっている。
AppleのiPhoneにおけるNFCインタフェース開放の第1弾となるが、現状はまだフォアグラウンドのアプリからタグの読み出しが可能な仕組みであり、AndroidのようにNFCタグをトリガーにして別のアプリを呼び出す仕組みは直接的には実装できない。iPhoneにおけるNFCタグやQRコード読み取りといった標準機能はまだ活用が進んでいないのが現状で、これをアピールするためにあらためて紹介したとみられる。
iPhoneが標準でこれら機能をサポートしたことで、これまであまり導入の進んでいなかった小売で今後活用される可能性が出てきており、特にマーケティング誘導などの面での変化が予想される。これまでは、こうした店舗誘導やプッシュ配信では「Core Location+BLE」といったBluetoothと位置情報を組み合わせた仕組みの活用を促していたAppleだが、2018年後半には新しいアイデアで店舗誘導の仕組みを構築する事業者が出現すると予想している。
関連記事
- 複雑化している国内の「モバイル決済サービス」を総整理する
国内外のモバイル決済トレンドを解説する連載がスタート。一言で「モバイル決済」といっても、さまざまなサービスが存在する。第1回では「国内の決済サービス総括」と題して、複雑化している電子マネーや各種決済サービスを整理していく。 - 世界の決済事情から考える「日本でモバイル決済が普及しない理由」
日本ではスマートフォンを使ったモバイル決済の認知度は高いものの、利用率は低い状況が続いている。一方中国では、日本とは対照的に、AlipayやWeChat Payが急速に市民権得ている。今回は、日本を含む世界の決済事情について読み解いていく。 - iOS 11の「Apple Pay」は何が便利になったのか
iOS 11によって「Apple Pay」は何が変わったのか。注目の新機能をはじめ、カード会社やサービスの対応状況、今後の見通しを解説する。 - Apple Payのデータを新しいiPhoneに移行する方法
iPhone 7/7 PlusからiPhone 8/8 Plusに乗り換えた人もいるだろう。その際に気になるのが、Apple Payのデータを移行する方法。Suicaとクレジットカードで方法が異なるので注意しよう。 - 今日から始める「Apple Pay」生活(クレジットカード編)
新生活の始まりを機に、新たにクレジットカードを契約した人も多いのでは。もしiPhoneを使っているなら、Apple Payを利用してみてはどうだろう。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.