有機EL採用の狙いは? カメラはなぜ単眼? ソニーモバイルに聞く「Xperia XZ3」:IFA 2018(1/3 ページ)
ソニーモバイルが「IFA 2018」で発表した新スマホ「Xperia XZ3」。ディスプレイに有機ELを採用し、本体前面にも曲面デザインを取り入れた。開発の背景を商品企画担当者に聞いた。
ソニーモバイルコミュニケーションズがIFA 2018で発表した最新のフラグシップスマートフォンが「Xperia XZ3」だ。ディスプレイに有機ELを採用し、本体前面にも曲面デザインを取り入れたことで、これまでのXperiaとは大きく印象が変わっている。
その一方で、前モデルの「Xperia XZ2」では本体の厚さに不満の声が挙がり、Xperia XZ3でもカメラは単眼にとどまり、Compactモデルが存在しないなど、気になる点は多い。XZ3開発の背景はどのようなものか、ソニーモバイルで商品企画を担当する矢部椋氏にIFA 2018の会場で話を聞いた。
XZ2の全画面デザインは好評、厚さには厳しい声
―― 前モデルのXperia XZ2からデザインが大きく変わりました。その反響は?
矢部氏 Xperiaの基本にある、ユーザーに寄り添った美しい見た目と手にフィットする形は変えていません。18:9の全画面ディスプレイは好評をいただいています。ただ、厳しい声があったのは厚みです。
―― ソニーの決算発表では、スマートフォンの販売台数が落ち込んだことが話題になりました。
矢部氏 十時(裕樹前社長)の時代から、販売台数を追うのではなくプレミアムにフォーカスするよう方針を変更しました。スマホの買い換えサイクルが長くなっており、以前は2年に1回の買い換えだったのが、いまは2年半から3年弱に伸びています。当社に限らず、市場全体が成熟しています。
―― Xperia XZ3の開発にあたって、XZ2のフィードバックを生かした部分はありますか。
矢部氏 XZ3が目指したのは、有機ELの採用によるシームレスな美しい見た目と映像の美しさを兼ね備えつつ、2〜3年前から買い換えていただくお客さまにAIの力で使いやすさを提供することです。XZ2では全画面を優先して厚くなったので、そのフィードバックを生かしつつ、薄型化を目指しました。
有機ELでシンメトリーな曲面デザインが実現
―― 有機ELのメリットを教えてください。
矢部氏 一般にディスプレイとして液晶と有機ELがありますが、必ずしも有機ELが優れているわけではありません。テレビのBRAVIAと同様、いい画を届ける画作りが重要です。Xperiaへの採用は数年前から候補にありましたが、2018年秋のタイミングで、当社が画作りに求めるレベル感と、有機EL技術の進化が合ったことでXZ3への採用に至りました。
―― パネルの種類やメーカーは公表していますか。
矢部氏 メーカーは公表していませんが、ガラスではなくプラスチックOLED(POLED)を採用した理由は、曲げられるからです。XZ2では背面が曲面になりましたが、前面も曲面になれば美しいシンメトリーになります。XZ3では表示領域を含めて曲げることで、非常に細い側面フレームを実現できました。そうしたデザインのモチベーションという面も大きいのです。
―― 有機ELで問題になりがちな、焼き付きへの対策はありますか。
矢部氏 さまざまな対策をしています。アイコンの色味の調整や、人間が視認できないレベルでアイコンを動かしています。「Always on display」の表示も、時間とともにずれていく仕組みです。
BRAVIAシリーズの知見も利用しつつ、テレビとスマホは使い方が異なるため、数十時間のハイスピードカメラによる検証など、独自の工夫をしています。
―― 今後のXperiaのディスプレイは有機ELになっていくのでしょうか。
矢部氏 有機ELありきではなく、各商品がターゲットとする国や地域、ユーザーを考えながら選定していきます。
―― Xperia XZ3はXZ2の厚さが11.1mmから9.9mmに薄型化しています。
矢部氏 3つの理由があり、1つ目は有機ELによりバックライトがなくなったこと。2つ目にアルミニウムに7000番台の新素材を採用し、強度を保ったままガラスを薄くできたこと。3つ目に内部構造として、回り込むような基板レイアウトでスペースを有効活用できたことがあります。
側面には細いフレーム、背面にはラウンドフォルムを採用したことで、実機を見ていただいた方からは、9.9mmという数字よりも薄く感じていただいています。
―― 曲面デザインになったことでGalaxy Sシリーズに似ているとの声もあります。開発にあたって差別化を意識した点はありますか。
矢部氏 カメラに単眼を選んでいる理由でもありますが、ユーザーにどう使っていただけるか、実際に使用する上でどれくらい価値があるのか、といった点を重視しています。XZ2では好評だった電池持ちは、バッテリーの容量だけでなく、どう使うかという点で「スマートSTAMINA通知」や純粋な消費電力の改善もしています。
スペックの数字が大きい方が安心いただけるのは分かっていますが、実際のユーザー体験は十分に高いものをお届けしています。
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