「5Gに向けて弾を込めている」 ファーウェイ呉波氏が語る、激動の2019年と2020年の展望:SIMロックフリースマホメーカーに聞く(4/4 ページ)
2019年は政治に振り回されたHuaweiだが、日本ではミドルレンジのP30 liteが好調だった。一方で、今後の機種にGoogleサービスを載せられるかは分からず、自前のアプリサービス「HMS(Huawei Mobile Service)」に切り替えた端末がどう評価されるかは未知数だ。ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波氏に、同社の現状と今後の方針を聞いた。
2020年は、過去10年で一番のチャンスがある
―― 発表会では「1+8+N」という戦略が語れました。8が意味するスマートフォンに連携するアクセサリーも多数登場しましたが、まだ幾つかないものもあり、8製品には達していません。残りは今後、どうされるのでしょうか。
呉氏 スマートスクリーンやVRグラスなども、全て日本で発売する予定です。これらについては、2020年中に発売したいと考えています。「1+8+N」は、グローバルでの新しい製品戦略ですが、ウェアラブルやオーディオ製品については店舗でも売れています。
しかも、どれも消費者に(売りが)分かりやすいように作っています。例えば、スマートウォッチは1回の充電で2週間使えるため、毎日充電しなくてもいい。他社のものは毎日充電する必要があるため、それが煩わしいと思います。イヤフォンも、ノイズキャンセリングは風のノイズまで除去でき、音質もいい。技術的な説明を聞かなくても、実際に身に着け、体験するだけでよさが分かります。
イヤフォンは申し訳ないことに欠品状態になってしまいました。今、本社をせかしているところですが、日本の消費者は、新しい技術を搭載したいい製品を作れば、必ず受け入れてくれます。ただ、8の製品を一気に投入すると手が回らなくなってしまうため、徐々に日本でも発売していきたいと考えています。
―― 最後になりますが、2020年の目標は例年通り、やはり「生き残ること」でしょうか。
呉氏 2019年は、本当に何とか生き残ることができました。
―― 2019年はその言葉に、例年以上の実感がこもっているような気がします……。
呉氏 毎回申し上げていることですが、(2019年は)よくお分かりいただけるのではないかと思います。弊社の創業者も、常に危機感を持つように言っていますが、グループ全体に関していえば、コンシューマービジネスグループも含めて好調で、業績も伸びています。
2020年は、過去10年で一番のチャンスがあると思っています。私がそう思っているだけでなく、客観的な証拠もあります。日本では東京オリンピックがあり、5Gもスタートします。さらに、総務省の政策で分離プランが義務化され、端末の購入補助の上限も2万円になっています。このチャンスをつかむことができれば、2020年、スマートフォン市場の構図を塗り替えられます。一般に予想されていることを超える出来事も、たくさん起こるでしょう。
ただし、目標はやはり生き残ること。われわれもしっかりとそのチャンスをつかみ、5Gの立ち上がりや東京オリンピックに貢献して、盛り上げていくことができればと思います。
取材を終えて:2020年は真価が試される1年に
インタビューからは、HuaweiのHMSに賭ける本気度が伝わってきた。ただし、あくまでこれは“保険”のようなもの。保険の割には投資額も大きいが、結果としてAppGalleryを充実させることができるのであれば、掛け捨てではなく、積み立てのようなものだ。事態が好転したとき、すぐにGMSを搭載した端末を発売する準備を整えていることが伺えた。販売延期などのゴタゴタはあったものの、P30 liteも販売は好調なようだ。
とはいえ、HMS搭載端末がどこまで受け入られるのかは、未知数の部分がある。当たり前すぎてあえて語られていないが、P30 liteがヒットしているのも、やはりGoogleのサービスが使えるAndroid端末という前提があるからこそ。特にカメラやディスプレイなどの付加価値で勝負しづらいミドルレンジモデルは、GMS抜きだと厳しい戦いになることも予想される。このハンディキャップを吹き飛ばせるほどの端末を出せるのか、それとも突如として制裁が終わるのか――2020年はHuaweiの真価が試される1年になりそうだ。
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