News:アンカーデスク | 2003年3月4日 00:05 AM 更新 |
まず、再生専用ディスクのサポートだが、以前、松下電器産業にインタビューしたときに同社では、製品の発売時期の見通しを次のように話していた。「基本的には、できるだけレコーダにROMの再生環境を入れ込むことが重要だと思っている。その認識は、皆さん共通だと思う。ROMを再生できるようにしてから発売したい、という価値観は(私たちも)だいたい合ってます」(松下電器産業メディア制御システム開発センター所長田中伸一氏)。
ソニー自身ではないが、これはBlu-ray陣営の主要メーカーである松下のコメントである。最初の製品リリースという重要な問題については当然、陣営内での調整はあったのだろう。そう考えると、再生専用ディスク規格は現状でプレリリースバージョンにあたる「Ver0.9」のリリースが間近なのかもしれない。
だが、そうでなかったとき、この製品は、再生専用ディスクを再生できない可能性がある。詳細が不明であるため、実際にどうなっているのか分からないが、この点は非常に気にかかる。
また、2層記録メディアについてだが、同じ松下のインタビューにおいてもはっきりと「オプション」扱いと明言されている。つまり、サポートは、メーカー間の自由でよいということになる。この製品では、もちろん、記録はサポートしてないが、“再生”に関してはどうしたのだろう。一般に光ディスクは、記録に使用するレーザーパワーは、再生よりも高い。つまり、記録はできなくても再生のみをサポートできる可能性はある。この点についても現時点では不明だ。
次が、コピーワンス番組のアナログ出力に関してだ。HD-TVをターゲットとしたBlu-ray Discでは、デジタル放送を記録し、それをアナログ出力するだけでもかなり高い画質をえることができる。このため、著作権保護技術に関してもかなり高レベルなものを考えているということが知れらている。事実、松下電器産業のインタビューでもアナログ出力に関しても著作権保護技術の導入を予定しているとしていた。この製品で、これはどうなったのだろう。
BSデジタル放送などでは、コピーワンスの番組が放送されている。もちろん、これらを録画したものをデジタルでコピーできないことは当然にとしても、アナログで出力したときの複製管理をどうしたのか。これまでの経緯を考えれば、当然、何らかの保護技術を導入しているはずだ。この点をどうしたかにも注目が集まる。
また、BDZ-S77では、BSデジタルチューナーと地上波アナログチューナーの2つのチューナーを内蔵しているが、まだ放送が始まっていない地上波デジタルのチューナーをどうやって接続するのだろう。BDZ-S77では、i.LiNK(BD)と呼ばれる端子を2つ搭載しているので、これを使用して接続することになると想像されるが、いずれにしても詳細は不明だ。 さらに、i.LiNK(BD)という端子自体についても、現在のところ詳細は明かされていない。言葉からも分かるようにおそらく、これまでのi.LiNKに何らかの機能を追加したものだろう。可能性が高いのはIEEE1394を使って著作権保護されたコンテンツを転送する際に使用される規格「DTCP(Digital Transmission Content Protection)」を絡めたものだが、これも詳細は不明だ。
最後が、キーパーツとなる「青紫色レーザー」の数に関する問題だ。実のところ、青紫色レーザーの歩留まりにつは、現在でも詳細は不明だ。専門家に話を聞いても「長時間発信できるレーザーは確かに取れる。だが、そんなに多くとれないのではないか」――とする声が多い。あるメーカーは、「ソニーは、日亜さんと提携を結びましたし、その点については、何か裏技でもあるのかもしれませんね」と話す。
いずれにしても、以前より言われていた話だが、BDZ-S77では、「選抜レーザー」を採用している可能性が高い。とすると、その数は、かなり少ないのではないかと想像される。そしてそれは、BDZ-S77の希望小売価格にも現れている。光ディスク業界には、レーザーの価格の100倍の価格が製品価格になるという1:100原理というのがある。これから想像すると今回の製品レーザーの価格は、4500円ぐらいということになる。もちろん、この場合のレーザーの価格というのは、ユニット化されたものではなく、純粋なレーザーそのものの価格である。これが4500円と想定できるということは、間違いなく数はそう多くないはずだ。
ソニー広報部では、現在のところ、BDZ-S77の初期出荷台数、月産台数ともに「公表できない」と話している。
いよいよ出荷が始まるBlu-ray Discレコーダだが、他のメーカーがどうするのかにも興味が集る。松下電器産業では、「BDの開発は当然やっているが、発売時期等は未定。当社では、DVDレコーダを中心において開発を行っている」(広報部)と話す。
また、DVDフォーラムにおいてAOD規格を策定中の東芝では、「今回のソニーの発表については、特にコメントはありません」としながら「AODの規格化は順調に推移している。当社では、デジタル放送が立ち上がるのはまだ先のことだと考えており、現状すぐに製品化する予定はない」(広報部)と言う。
発表を受けて関係者に話を聞いてまわったが、その謎は深まるばかりだ。さて、次世代光ディスクレコーダのこの静かな船出は、“嵐の前の静けさ”となるのだろうか。
[北川達也, ITmedia]
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