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インタビュー

これがITベンチャーのリアル――堀江貴文氏が語る、小説『拝金』の裏側 (4/4)

若くしてITベンチャー企業を立ち上げ、数年で上場、時価総額を急激に拡大させていき、プロ野球チームや放送局の買収に動く……。そんなどこかで聞いたことがあるような筋書きの小説が、堀江貴文氏が書いた『拝金』だ。かつてライブドアがたどってきたような道をなぜ今、小説として堀江氏は書いたのか尋ねた。

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Twitterの書評とiPhoneアプリのランキング入りが大きかった

――今、何万部くらい売れているんですか?

堀江 紙で5万部です。ただ、電子書籍では1万部を超えていて、この記事が掲載されるころには1万5000部を超えている、という感じです。

 最初、Amazon.co.jpですごく売れたんです。本部門のランキングでトップ10くらいに入ったのですが、在庫切れになってから100位くらいまで落ちちゃいました。在庫切れが解消されてからは30位くらいまで戻ってきてコンスタントに売れています。

 第2の山は電子書籍です。まず電子文庫パブリで発売したのですが、電子文庫パブリは買いにくかったので、イマイチ売り上げが伸びませんでした。しかし、次にiPhoneアプリを出すと、いきなり本部門のランキングでトップになって、有料アプリ全体でも2位までいきました。それが宣伝効果になって、さらにiPhoneアプリが売れるようになって、一時期『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』のiPhoneアプリを超えるくらいの勢いになっていて、いまでもその次くらいにロングセラーで売れている感じになっています。


電子文庫パブリ

 また、Twitterで書評を書いてくれる人が出てきて、結構うざがられつつも、1日10本くらいしつこくRTしていたら、それを読んだ人が買ってくれていて、これが意外と効いています。有名人でも、茂木健一郎さんや勝間和代さんが書評を書いてくれていました。僕たちもそういう人たちには戦略的に献本するようにしています。これからは、『拝金』に共感しそうな若者に影響力を持つ人と対談をしていこうと考えています。

 Twitterの書評の威力はすごいなと感じています。ウソではない感想を、140字の制限の中で簡潔に書いてくれるわけですからね。また、多くの人たちは僕にRTされることによって、フォロワーが増えることを期待して、積極的に感想を送ってくれるという部分もあって、それがうまく相乗効果を生んでいると思います。

 僕は猪瀬直樹さんをフォローしているのですが、猪瀬さんは書評を書いてくれる人があまりいないので、たまに自分で著書のエピソードを書いているんですね。それで、『昭和16年夏の敗戦』『東京の副知事になってみたら』『ジミーの誕生日―アメリカが天皇明仁に刻んだ「死の暗号」』といった書名を僕も覚えるようになっていて、買ってみたいなと思う自分もいるので、本についてツイートすることはうざがられるのですが、言われるほどはうざがられないんですよ。

――同様に著書の書評をツイートしている人は多いのですが、「フォローを外される」といった声もよく聞きます。

堀江 それによってフォローを外す人もいますが、フォローする人もいるので、それはそれでいいんです。処理能力が高い人は外さなくて、そういう人はフォロワーも多いので、影響力という意味では多分そんなに変わらないと思います。怒って外す人の影響力はそんなに大きくないので、そんなに気にしなくてもいいと思っています。

 マーケティングではTwitterの書評とiPhoneアプリのランキング入りが大きくて、その2つだけで売っているようなものです。最近、本屋でポツポツと平積みで置かれるようになって、大きいロットで増刷がかかるようになっていますが、書店は後追いですからね。ほとんどネットのクチコミで売っています。

――ネット上で『拝金』の一部を公開されていますが(参照リンク)、その効果はどのくらいありましたか?

堀江 全7章のうち3章の途中までを公開しているのですが、そこから買った人も多いですね。どれくらいページが読まれたかはちょっと分からないのですが。

――Amazon.co.jpの『拝金』のページでは、動画を使ったプロモーションもされています。

堀江 『徹底抗戦』を出した時から動画は始めていて、毎回やろうやろうと出版社に言っているのですが、動きが鈍いところはやらないですね。僕は『拝金』は力を入れて売りたかったので、僕らがやれることは全部やろうと思っていて、サイン会もできるところでやりましょうとこちらからも働きかけをしています。


堀江氏が出版について参考にしているという『宇宙兄弟』担当編集者のTwitterアカウント

――表紙を『ブラックジャックによろしく』の佐藤秀峰さんが描いていますが、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』の表紙を参考にされたのですか?

堀江 小説を書く時は、絶対表紙は漫画にしようと思っていたんです。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』は萌え系の表紙なのですが、萌え系だとどうしても客を選んでしまうので、普通の漫画にしようと思いました。


『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』公式Webサイト

 萌え系の表紙が多いライトノベルの読者は、10〜20代のオタク系が多いですよね。そうではなくて、もっと幅広い人に支持される絵を描ける漫画家ということで、僕が好きな漫画家でもある佐藤秀峰さんにお願いをしました。佐藤さんの漫画が売れている理由には、ストーリー作りだけではなくて、絵がきれいなこともあると思っていて、表紙を描いてもらって小説コーナーに置かれたら、明らかに違うので絶対目立つと思ったんです。内容も漫画くらい軽く読めるので、「漫画と誤解されてもいいじゃないか」というぐらいの勢いでやりました。

 僕は不思議だと思っているのですが、小説家の人たちは装丁にこだわっていないですよね。不気味な表紙とか幾何学文様の表紙とか、何も考えていない証拠ですよ。それに対してもコストを払っているわけですから、コストを払うのならちゃんと考えようと思いました。版形もコミックスに似せています。

 佐藤さんは「表紙を描くだけでお金をもらえてうれしい」という感じでしたね。コミックスの表紙の原稿料がタダということで、佐藤さんは小学館ともめていたのですが、ちょうどその時に頼んだら、「マジっすか、お金をもらえるんでやります」みたいな感じになりました。値段はそんなに高くはなかったようなのですが、「原画を返してほしい」と言われて、返したらすぐにネットで売られていました(笑)

――最後の質問なのですが、ブックファーストの方が、「いつ『池上バブル』が弾けるかが書店界で一番話題になっている(参照リンク)」とブログに書かれていました。堀江さんもたくさん本を出されていますが、同様にバブルが弾けてしまう可能性についてどのようにお考えですか。

堀江 僕はバブルになっていないので大丈夫ですよ。勝間さんの本みたいに売れていないので。大きな書店くらいにしか、コーナーはないみたいですからね。年間10冊くらい出していて、多い方なのかもしれませんが、バブルというほど売れていないです。

 それに僕は本が売れ続けなくても、メールマガジンがありますから。月840円なのですが、そのくらいの料金だと読者が減らないんです。雑誌の定期購読モデルと同じで、カードで毎月代金が引き落とされるというモデルは非常に強固です。「新書は3ついいことが書いてあれば、みんな満足する」と言われるので、メールマガジンでは「1号あたり、役立つことが1個書いてあれば読者に喜んでもらえる」と思ってやっています。

拝金』(堀江貴文著、iPhoneアプリ版

<あらすじ>

「藤田優作、君はどのくらいの金持ちになりたい?」「そうだな、金で買えないものはない、そう言えるくらいかな」「わかった。それでいこう」年収200万円のフリーター・優作はなぞのオッサン・堀井健史と握手を交わした。そこから彼の運命は大きく変わる。携帯ゲーム事業を成功させ、さらにあらゆる金融技術を駆使。瞬く間に会社は売上500億円の大手IT企業に変貌する。人はそれを「ヒルズの奇跡」と呼び、優作は一躍時代の寵児に。快進撃はさらに続くかに思われた―オッサンの無謀なミッションが下るまでは。金とは、勝者とは、絆とは? 感動の青春経済小説。


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