絵を描きはじめたのは22歳のころです。実生活では大学を中退して、実家でごろごろしていました。朝まで本を読んだりネトゲをしたり、それなりに愉快な暮らしでしたが、友だちは減るわお金も無いわで将来への不安もすごくて。でも働くのは嫌だったので、もっと楽しいことをみつけて現実から逃げきろうと決意し、思いあたったのが絵でした。
当時はお絵描き掲示板の最盛期かつ、お絵描きSNSの黎明期だったと思います。プロアマ問わず身軽に、楽しそうに絵を描いてる人がたくさんいて、ただただ憧れました。あとはひたすら独学ですね。教本を読んだり、好きな絵を眺めたり。描けば描くほど上達していくことも、ネットを通して感想がもらえることもうれしかったです。
褒められて調子にのっているうちに、どんどん絵を描くことが好きになっていきました。ちなみに、pixivがはじまったのと同じ月に絵を描きはじめたんですよ。
今はお休みの日は絵を描いては寝て、起きては絵を描いての生活をしてます。会社勤めもしているので、平日は多くても4〜5時間くらいです。
好きな時に好きな絵を描くばかりでしたが、昨年はお仕事もいくつかいただきました。楽曲のイメージイラストや、雑誌への書き下ろしに加え、趣味で描いた絵を小説の表紙に使っていただいたりもして、こんなこともあるのかと正直驚きました。今はまたガラガラのスケジュールに戻ってしまいましたが、イメージをすり合わせながら絵を作り上げるのはとても楽しかったです。お仕事いつでも募集中ですので何卒。
最もわかりやすく影響をうけているのは平沢下戸さんと岩本ゼロゴさんだと思います。色使いで表現できることの幅広さと、情報が整理された画面の気持ちよさは、お2人の絵に学びました。
平沢さんは本の装画で活躍されていますが、漫画の絵作りも素敵なんですよね。脳を揺さぶるような遠近感を味わえます。岩本さんは衣装のデザインがユニークで、あんなに可愛くシンプルに布を描ける人をほかに知りません。絵を描きはじめた頃からずっと憧れている方々で、活躍されている姿を見ると自分のことのようにうれしいです。
作業環境は27インチのiMacにIntuos4、Cintiq 13 HDを両方つないで使い分けています。色の調整と確認用にColorEdge(EIZO)も使っています。ソフトは仕上げまでSAI、たまにPhotoshopです。
最近、iPad ProとApple Pencilも加わりました。寝ながらのらくがき用に買ったんですが、思った以上に描きやすいですね。仕上げ作業には非効率すぎるので、今はまだCintiqの代わりにはなりませんが。進化が楽しみです。
憧れの絵描きさんが絵を気に入ってくれたときは、本当に描いてよかったと思います。ときには生きててよかったくらいにうれしいです。
教えて! 自慢の1枚
弾丸にくちづけを
なんかこう、いい感じにビシッと決まっていて気に入っています。
声の記憶
目鼻のない少女っていいよね、という絵です。いろんな遊び方ができるので、よく描くモチーフです。「既読スルーは死をまねく」という小説の表紙として使っていただきました。なんておそろしい題名。
Luft Hansa
「ルフトハンザ」という曲のイメージイラストですが、ラフがまとまらなくて、頭がおかしくなるほど曲を聴き続けた思い出があります。じっくり考えればなんでも描けるという自信がもてた1作でもあります。
シンプルなのに、イメージがわっと飛びだしてくる絵、という部分にこだわっています。ベタ塗りで影をつけない代わりに、色とシルエットで動きや立体感を表現します。温度も湿度も体温も――です。直接描いて見せるよりも、想像させるやり方を選びます。最近は海外の方も見てくれるようになったので、文化の壁を越えて伝わるモチーフを選ぶことが多いです。
あとですね、わたしの描く女の子は世界一かわいいんですよ。
関連記事
- クレヨンに絵の具に色鉛筆 カラフルに幸福を重ねて momocさん
おとぎ話のシーンのようなあたたかなイラストが印象的なmomocさん。現在はクレヨンをメインに描いていますが、その前はアクリル絵の具。画材を切り替えた経緯は……? - ディスプレイからにじみだす「寂しさ」と「無音」 白熱灯さん
込められているのは「寂しさ」と「無音」――白熱灯さんのイラストを見ると背筋が伸びます。 - 顔が見えない絵にも“表情”を宿して Re°さん
音楽や映画から受けたインスピレーションを形に――光あふれるどこか幻想的なRe°さんのイラスト。顔が見えない絵にも“表情”を感じます。 - 愛される「かわいい」を生み出す秘密 ぺこさん
ニコニコ生放送でのお絵描き配信が人気のぺこさん。視聴者の意見を取り入れて「かわいい」を作り上げています。 - 一瞬で電流が走るような「かわいい!」を 荻poteさん
見た瞬間に「かわいい!!」と電流が走るようなイラストを目指して――荻poteさんのやわらかくキラキラした女の子たちをご堪能ください。 - ボールペンから生まれる浮遊感 はしゃさん
イラストに漫画、海外旅行記――はしゃさんの作品はどれも、ボールペンのあたたかい質感が印象的です。 - 音楽に日常に色をのせて ゆのさん
ボーカロイド曲のMVなどで活躍するゆのさん。やさしいペンのタッチと色使いに引きこまれます。 - この瞬間の前後にあるストーリー motaiさん
表情と世界観がこだわりと言うmotaiさん。物語の一部を切り出したような瞬間の前後には、どんなストーリーがあるのでしょうか。 - 本の世界をもっと豊かに伝えるために 旭ハジメさん
書籍の装画や挿絵を中心に活動する旭ハジメさん。読者に小説のイメージを広げてもらうべく、心掛けていることは。 - 温かく優しい物語のある部屋 井田千秋さん
ミリペンで細かく描き込まれた、童話のような世界。生活感ある部屋から物語が広がります。 - 愛しい彼女に触れたいドキドキを絵に込めて 賀茂川さん
京都市営地下鉄のキャラクターなどを手掛ける賀茂川さん。女の子を描く時に意識しているのは「愛しさ」だそうです。 - 色鉛筆で織りなすノスタルジックな景色 カタヒラシュンシさん
色鉛筆を使ったアナログ原画でどこか懐かしい世界を生み出すカタヒラシュンシさん。アニメのようなキャラクターが、風景に溶け込んでいます。 - しろくま、星屑、水族館――輝く青に魅せられて のみやさん
さまざまなニュアンスの青を生み出す、のみやさん。絵の具のようなタッチはフルデジタルで描かれています。 - かっこよくと可愛くのおいしいとこどり 「主役じゃない人を描きたい」チヤキさん
人物を描くテーマは「主役じゃない人」――チヤキさんのイラスト、どことなくレトロな色味や立ち姿が印象的です。 - 光あふれる温かい世界を あんべよしろうさん
ゲームや書籍のイラストを手がけるあんべよしろうさん。ファンタジーの世界もレトロな雰囲気も、光の表現に思わず見入ってしまいます。 - pixivを美術の世界の入り口に 日本画家・イヂチアキコさん
少女をモチーフにした作品を手がける日本画家、イヂチアキコさん。美術作品を積極的にWebでも公開する理由は――。 - “偶像としての女の子”を遠くから りばたさん
「名前もわからない、何を考えているかもわからない、偶像としての女の子を描きたい」――制服を来た彼女たち、見てるこちらがいろいろ想像してしまいます。 - 女の子の輝きを絵に閉じ込めて るごさん
キュートからシリアスまでさまざまなテイストの女の子を幅広く描く、るごさん。ファッションや色使いがかわいさを引き立てています。 - 揺れる髪から生まれるファンタジー またよしさん
どこかファンタジックな雰囲気が目を惹くまたよしさんのイラスト。こだわりは、繊細に描き込まれた髪の毛だそうです。 - “男のかっこよさ”をシンプルに追求したい みっつばーさん
「男キャラをかっこよく」がこだわりと話すみっつばーさん。絵を描き始めたのは高3――漫画家を目指した「遅い出発点」からここまでの歩みを聞きました。 - ネットやテレビ横目に「集中しない」 描き込みと余白のバランスがこだわり へびつかいさん
細かいモチーフを使いながらもすっきりと整然と見えるへびつかいさんのイラスト。秘密は「描き込んでいない箇所」へのこだわりでした。 - 「このまま死ねたらいい」――現実では言えない言葉を伝えるために TCBさん
どこか憂いを帯びた人物画が印象的なTCBさん。「このまま死ねたらいい」「性懲りもなく引っ掻き回して、後戻りできなくなった」など、シリアスなタイトルにもドキッとします。 - 物語の世界へ導く色彩を探して 藤ちょこさん
イラストの世界に吸い込まれそうなくらい、細かく描き込まれた美しい背景が印象的な藤ちょこさん。「昔は背景を描くのが大の苦手だった」というお言葉が出るとは思いませんでした。 - アイデアの源泉は言葉や物――色鮮やかに暖かく iroricoさん
色鮮やかでどこかファンタジックな世界を描くiroricoさん。イラストだけでなく雑貨制作も手がけています。 - “等身大のおしゃれと萌えが共存”したキュートな女の子 U10さん
こだわりは「等身大のおしゃれ感と萌え感の共存」! U10さんの描く女の子、ときめきます。 - フルデジタルで描く絵本のような幻想世界――KATSUOさん
童話や絵本の世界を連想させる幻想的な絵を描くKATSUOさん。繊細なタッチはフルデジタルで描かれているそうです。 - 独学の日本画で描く妖怪の世界――アマヤギ堂さん
妖怪や動物の妖しげな世界を描いた日本画で、独特の存在感を放つアマヤギ堂さん。お気に入りの作品は「特にないです」と話す理由は……? - “きれいでかわいい”だけじゃない、“ミステリアスな女性”を美しく――マツオヒロミさん
ネットを中心に活躍する絵師さんにフォーカスする連載企画「教えて! 絵師さん」。第2回は、1度見たら忘れない、鮮やかな色使いの少し影のある女性が印象的なマツオヒロミさんです。 - こだわりは「目」――“ラスボス”イラストも手がけるおはぎさん
ネットを中心に活躍する絵師さんにフォーカスする連載企画「教えて! 絵師さん」がスタート。第1回は小林幸子さんの動画イラストなどを手がけるおはぎさんです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.