「Surface Go」日本モデルを冷静にチェックする:本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/2 ページ)
発表直後から「Office付きで米国モデルより割高」という面に注目が集まっている「Surface Go」の日本モデル。製品発表会で説明を聞き、実機にも触れた筆者の率直なインプレッションをお届けする。
やはり気になるパッケージ構成と価格の納得感
Surface Goは、何より北米でアナウンスされた際の399ドルからという価格のインパクトが印象的だった。日本国内向けにも教育機関向けにターゲットを絞ったと思われる最廉価モデル(税別4万7800円)は、頑張っているように見える。しかし、安価か高価かは絶対的な価格ではなく、その製品から得られる価値に対して、支払う金額が妥当か否かにその境目が浮かび上がるものだ。
下位モデルはメインメモリが4GBな上、ストレージは低速なeMMCが採用されている。どのモデルもプロセッサは同じで、第7世代のCore m3よりは少し遅い程度だが、元より絶対的な性能は求めていないだろう。モバイルツールに必要なのは瞬発力だ。もちろん、プロセッサの絶対性能も必要だが、メモリの少なさとストレージの遅さは、いずれも元から持っている瞬発力を「削ぐ要素」である。
電子教材を駆使して学習し、文書作成や画像などの取り扱いを学ぶといった、シナリオ通りの使い方をこなすための端末として、計画的にこうした構成を選んでいるのだろう。日本マイクロソフトは教育市場の調査を毎年行い、教育委員会や学校法人からの意見、要望などを集めてきた。
今回のSurface Goを、そうしたニーズに合致したものに仕上げてきたことは、発表会における「小学校の小さな学級用デスクでも使いやすいサイズ」「ランドセルにもコンパクトに収めやすい」といった展示にも現れている。
しかし、あくまで個人が使う道具として考えるならば、上位モデルしか選択肢はないというのが僕の意見だ。その上で、「現代のサブノートPCという考え方」を適用させるならば、一般消費者向けにOffice Home & Business 2016がプリインストールされたモデルの税別8万2800円(しかもType Coverは別売りである)という価格には、やはり「う〜ん」とうならざるを得ない。
このOfficeライセンスは、個人用途だけではなく業務にも利用でき、永続的に使い続けられるものだ。中には本機が1台目のPCというケースもあるだろうが、こうしてPC USERを読んでいる方の場合、既に何らかのPCを使っていると考えられる。もし、Officeが必要であるなら、既に何らかのOfficeライセンスを保有している。そしてOfficeを持っていなくても困っていないならば、そもそも必要ではない、ということになるだろう。
当たり前といえば当たり前だが、必要な人はサブ機も含めたOfficeのライセンスぐらい持っている。そして必要ではない人、用途的にオンラインサービスや他の選択肢で代替できる人は最初から不要というわけだ。
「ずっと使える仕事用もオッケーなOfficeが入ってるからお得だよ」といわれても、どこか釈然としないのは、こうした部分があるからではないだろうか。少なくとも筆者が本機を購入する上で引っ掛かるとすれば、絶対的な金額の高い、安いよりも、商品パッケージ全体に対する納得感がいまひとつ感じられない点だ。
Surface GoはLTEモデルで本領発揮か
一方でLTEモデム内蔵モデルが出たならば、そこには一定の納得感が得られるかもしれない。
もちろん、Officeのアンバンドルは大前提だ。LTEでネットワークに常に接続できることを前提とした使いこなしをするのなら、そもそもローカルで動作するOfficeのようなアプリは使わず、ほとんどの作業をMicrosoftストアベースのアプリとEdgeブラウザだけでこなすようなシナリオを構築した上で利用環境を整えられる。
また、既にOffice 365のライセンスを持っている人は、もちろんOfficeをインストールして使えばいい。米Microsoft本社の基本戦略として、Officeに関連したツールやサービスは、基本的にサブスクリプション型のビジネスモデルに沿うよう開発が行われている。日本だけはさまざまな事情で切り替えが遅れているが、いずれ「Officeのサービス化」からは逃れられなくなるだろう。
そう考えるならば、比較的廉価なハードウェアに、比較的高価なOffice Home & Business 2016がプリインストールされていることのアンバランスが最終的な懸念点として残る。
Surface Goの価格構成に関する分析は、鈴木淳也氏が詳細なコラムを書いているためこれ以上は触れないが、付帯するソフトウェアの価格などを精査すると、日本モデルが米国モデルに比べて高価というわけではない。だが、繰り返しになるが不要な人にとって、バンドルされるOfficeに価値などない。
こうした納得感さえ整え、LTEモデム内蔵版のモデル構成、あるいは発注時のオプション設定が増えてくるならば、タブレット的な使いこなしにちょうどいいコンパクトサイズと、優れたキーボード、タッチパッドの操作性などを含め、Surfaceシリーズの本領である「2in1」のコンセプトが生きてくるに違いない。
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