DMM.comの生成AI活用事例 23卒新入社員がAI推進を主導 問い合わせ業務を月163時間削減した裏側(2/2 ページ)
生成AIによるイノベーションにひかれ、さまざまな企業で生成AI活用が進んでいる。DMM.comもその一つであり、同社はその中心人物に2023年卒の新入社員を起用している。どのような経緯を経て、そのような体制へと至ったのか。同社に話を聞いた。
新入社員のAI推進は「狙い通りの成果を出せた」
渡部さんの上長である堀本史朗マネージャーは、社内のAI推進に渡部さんを起用した理由について「最初は、渡部さんには学習を兼ねて既存システムの保守作業を主に任せ、開発経験をじっくりと積ませることを想定していた」と話す。また、AIプロジェクトについて、その結果が早期に求められる状況になり、ためらうことなく渡部さんをこのプロジェクトにアサインする判断をしたという。
「AIプロジェクトは、新たな環境への挑戦に加え、未経験の領域にも踏み込むことになるが、新人の渡部さんがしっかりと対応できるだろうと期待を抱いていた。その理由は、配属前の面談での会話や、配属後の取り組みを通じて、その積極性と高いキャッチアップ能力が感じ取れたから。特に彼が持っているAIの知識と、その領域に対する強い興味が、言葉遣いや態度から明らかであり、このプロジェクトに最適な人材だと確信した」(堀本マネージャー)
この取り組みの結果、同社では狙い通りの成果を生み出せたと評価。堀本マネージャーは「(渡部さんは)一緒に働いていて、『新卒』の印象を感じることがほとんどなかったが、新卒という立場を再度考えると、期待を上回る結果を出してくれたといえる」と太鼓判を押した。
人より優れた生成AIのメリットとデメリット
今回の生成AI活用を通じて「今まで人がやらなければいけなかったことがAIで代替できるようになったことが最大のメリットだと思った」とDMM.comカスタマサポート部の牛丸潤一部長は感想を話す。
「サポートという業務は常に『お客さま』が主語になり、お客さまと対峙し会話することになる。お客さまとのやりとりの中で、その意図を正確にくみ取ることは(人でも)難しいが、すぐれた生成AIであれば人がくみ取らずとも良い、あるいは人がくみ取るよりも細部まで正確というところまで期待できる」(牛丸部長)
一方で問題点もあるとし「答えだけを求める人の成長を止める可能性がある」と指摘。「生成AIは『それらしい回答』や、自分が知らない知識を提供してくれるため、丸ごとAIを信じ行動してしまうのは少しリスクがあるのではないか。生成AIをよいパートナーとして位置付けて、AIの苦手を補えるスキル教育はわれわれとしても課題だと感じている」と述べる。
カスタマサポート部では、23年3月時点で生成AIに関するガイドラインを部内で制定し周知した。うまく利用してもらうことはもちろん、内在するリスクも把握してもらうため牛丸部長による部内教育をメンバー全員に実施したという。その後DMMグループの全従業員向けに、法人向けAIチャットサービス「シゴラクAI」を設置したため、現在は個人が自由に生成AIを利用できる環境にある。
同社は今後も生成AI活用を推進していく考えで、ゆくゆくは電話応対業務に残る手動対応の部分をなくし、完全自動化したいという。「人がやる必要の無いことは自動化・AI化を推進していきたい。その上で『人だからできること』の価値を大切にしていきたいと思っている」(牛丸部長)
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