「誰これ?」 流行の“写真→AI動画”を試したら、動く別人ができた これは“記憶のディープフェイク”か(2/2 ページ)
写真の中の人物を動かして、動画にするAIを試してみた。自分は「動く他人」になったし、子どもの写真でやってみて強く後悔した。
子供の写真で生成して後悔
筆者は自分の写真で試す前に、軽い気持ちで小学生の娘の写真で試してしまい、強く後悔した。娘の写真から、まったく違う子の動画が生まれてしまったからだ。
AI生成された動画では、抜けていたはずの歯が生え、目が大きくなり、表情は不気味なほど豊か。照れ屋のはずの娘が、顔のあらゆる筋肉を使って満面の笑顔を見せる。
娘が他人になってしまう動画は、「気持ち悪い」を通り越して「やってはいけないことだった」と思った。
AIによる“記憶のディープフェイク”化
一方、昔の自分の紙焼き写真で試してみたら、違和感があまりなかった。
過去の自分の姿はよく覚えていないし、そもそも自分自身が動く姿を見る機会はほとんどないので、「私、こんな風だったのかも?」と思ったのだ。
加えて、元の画質が悪いため描写が荒く、動画になってもアラが気にならない。口が開いた写真なので、閉じた写真から口を開けた動画を作るよりAIが動きを想定しやすかったのか、「口が開きすぎ」とも感じなかった。
ただ、最近の写真を使って別人ができたことを思うと、古い写真によるAI動画も、本人とは遠いだろう。
古い写真を動かして、「こうだったかもしれない」と思うのは、自分の記憶をディープフェイクにかけているようなもの。AIが記憶を塗り替え、「AIが創造した偽の本人」の記憶が上書きされてしまう恐怖も感じた。
二度と会えないあの人が、動いている姿を見たいという気持ちは分かる。「亡くなったあの人を動かしたい」「もし生きていたらどんな風か知りたい」という気持ちは尊い。だが、写真からAIで生成した動画は現状、“誰かと混ざった”偽者であり、本人と世界中の他人とのキメラだ。
会えない人に思いを馳せるためにAI動画を作ることも、心を慰める一つの手段ではる。ただ、色あせた写真1枚からそのまま当時を思い出すほうが、本物の記憶を書き換えずに済むのではないだろうか。
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