ビジネス職もAIでアプリ開発──DeNAの内定者研修をのぞいてきた 「AIオールイン」の実情は(2/2 ページ)
10月2日、DeNAが開催した2026年春入社の内定者向けAI研修をのぞいてきた。
内定者に「AIオールイン」の理解を促進
今回の内定者研修は、DeNAが進める「AIオールイン」戦略の一環だ。
同社は2月に南場智子会長が「AIオールイン」を宣言。同月からDevinの利用を開始し、「大幅な生産性向上」を確認した。7月には、Devinを開発する米Cognition AI社と戦略的パートナーシップを締結。子会社のDeNA AI Linkを通じて、日本企業へのDevin導入支援も行っている。
採用戦略部の村上僚氏は、今回のような研修を実施した目的を2つ挙げる。
1つ目は、「AIオールイン」の意味を伝えること。26年春入社の内定者の多くは、24年10月ごろから内定が出始めており、途中からAIオールインという方針を聞いた。「内定者期間中に、ある種、寝耳に水のような形で聞いた」という学生たちに、背景や現状、展望を知ってもらう必要があった。
2つ目は、スムーズな立ち上がりのためのスキル習得だ。「新卒がスムーズに立ち上がりができるように、AIのスキルや、使う上での考え方、マインドセットをある程度身につけた上で入ってくれるといい」(村上僚氏)
1日の研修だけでは十分ではない。同社は入社までの期間、希望者に月額100ドル(約1万5000円)のAIツール費用を補助する。
社内では既に働き方が変わり始めているという。1つのプロジェクトにアサインされていたエンジニアが「1つでは物足りない」と複数プロジェクトを担当するケースや、企画職がDevinでデモを作成し、企画書ではなくプロトタイプを作ってディスカッションするといった動きが出ている。
一部の部署では既に、ビジネス職に求められるスキルが変化している。
AIイノベーション事業本部では、企画提案時に「プロトタイプありき」が条件だ。プロトタイプを作るだけでなく、周囲の何人かに使ってもらって、その声も集めることも求められる。
従来は仕様書を書いてエンジニアに依頼していたが、今後はDevinで自分でプロトタイプを作り、「ここまで行けたので、フィードバックをもらえますか」とエンジニアと協業する形になる。
他の部署でも必須になるのか。村上僚氏は「今すぐ必須ということはない」としつつも、「もしそこの部署で一定の成果が上がれば、その流れが徐々に広がる」と見通しを語った。
“ChatGPT世代”から既存社員へ、好影響も期待
村上僚氏は、4月の新入社員研修でも「この流れを組んだもの」になるとの見通しを示す。AIありきのサービスを企画・開発するグループワークや、エンジニア向けには大規模コードベースでのAI活用と品質維持の両立手法などを検討している。
採用基準にも変化が起きそうだ。「現時点では、一定のスキルを見るような方針に変えていくかどうかは、議論中」と採用担当者は話す。 「少なくとも関心は持っておいてほしい」という。
村上僚氏は新卒の可能性にも期待を寄せる。「学生期間の半分以上をChatGPTと共に過ごしてきた世代」である新卒が、既存社員より高いAI活用スキルを持つ可能性があるからだ。事前アンケートでは「ほぼ毎日使っている」と答えた内定者が全体の6〜7割に上った。
「彼ら彼女らが持っている知識やノウハウを現場に伝えていって、むしろ広げてくれることも期待したい」(村上僚氏)
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