一方、清野氏は、AI推進で最も困難だったポイントとして「セキュリティ対応と社内調整」を挙げる。セキュリティ部門はもちろん、法務部門や社内のITツールを管轄する部門など、複数の関係者と調整を重ねてきたという。
「チャットAIに入力した社内データを学習され、他社に出力されないか。著作権的に問題のある出力をそのまま外部に出さないか。ガバナンスを担うチームとの話し合いでは、『向こうは守りたい』『こっちは推進したい』という状況になり、折衝が大変になる」(清野氏)
もちろん企業として安全性を守る必要はある。とはいえ、AI活用が進まなければ競争力の低下にもつながりかねない。こうした社内調整を乗り越えるコツはあるのか。清野氏は関係部門を説得するための「根気強さ」が重要と説く。
「例えば、AIの利用ガイドラインの1項目を改定するため、半年以上議論したこともある。セキュリティ部門からすれば、日々の業務に比べ、AI推進の対応の緊急度は高くないので、後回しにされがちだ。それでも諦めずに対策を立て、調整を進める必要がある」(清野氏)
AIで“本当の成果”は出ている? 今後の展望
清野氏は今後のAI推進で注力したい点として、AI活用の成果の定量的な測定を掲げる。マイナビではこれまで、さまざまな施策を展開してきた一方、実際に業務をどれほど効率化できたのかなどを測る指標がなかった。
その第一歩として、ノーコードでAIアプリを開発できるツール「Dify」に関する取り組みを実施している。マイナビは25年後半にDifyを導入し、26年3月時点で従業員1600人以上が利用中。従業員はDifyで作成したAIアプリを全社に向けて公開でき、約100個のAIアプリが使える。
特徴は、AIアプリの公開を社内で申請する際、見込める効果も同時に報告する仕組みだ。申請フォームには、AIアプリを使う前後の業務時間の変化や、業務の質が向上するか、付加価値を生み出せるかなどを聞く項目を設定した。これにより、費用対効果などの定量的な把握を目指す。
加えて、すさまじい勢いで変化するAI技術のトレンドに、取り残されないための打ち手も必要になる。昨今は、タスクを自律的にこなすAIエージェントが脚光を浴びている。一方で清野氏は、マイナビのAI活用はAIエージェントの領域まで進んでいないとの認識を示す。
「われわれは、チャットAIからワークフロー型に移行したくらいのレベル感。次のステップとして、AIエージェントの導入に向けた戦略と技術選定が必要だ。AIツールの導入にも2軸あり、従業員のニーズベースでそろえるものと、時代を先読みし、今後発生しうる課題に対応できる先端技術を検討するものがある。この両方を進めていきたい」(清野氏)
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