インタビュー
» 2007年04月17日 12時33分 公開

田口元の「ひとりで作るネットサービス」探訪:ネットもプログラミングも全部“ゲーム”――3分クイズ・秋元裕樹さん (2/2)

[田口元,ITmedia]
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ヘッドハンターからの電話がきっかけで転職、米国へ

 帰国後のある日、1本の電話がかかってきた。「英語でよくわからないから秋元さん、お願いします」そう言われて取った電話はヘッドハンターからだった。「外資系のヘッドハンターの常套手段なのです。英語で電話をかけると、そのフロアで一番英語ができる人が出ますからね。そして『あなたは今の仕事に満足していますか?』と聞くのです」

 当時思うところがあった秋元さんは、話だけでも聞いてみることにした。そしてその喫茶店での話がきっかけで、転職して米国に渡り、3年半滞在することになる。仕事はグループウェアであるサイボウズオフィスの国際化。PFUでのグループウェア開発の実績が買われたのだ。

 開発チームのリーダーとして参加したこのプロジェクト。「米国に渡った頃は、とにかく馬車馬のように働きました(笑)」という秋元さん。仕事は辛かったが、米国という国に魅せられた。冬は雪雲に覆われる北陸出身の秋元さんにとって、カリフォルニアの天候は「世の中にこんなところがあったのか」というぐらい気分の良いものだった。抜けるような青空のもとでの仕事をすることが楽しかった。

 技術者が会社を超えて交流できる点も気に入っていた。「meetup」や技術者のメーリングリストを通じてさまざまなイベントにも足を運んだ。それらのイベントを通じて分かったのは「これからはオープンソースだ」ということだった。オープンソースの周りには優れた技術者が集まってくることを目の当たりにしていたからだ。当時、サイボウズオフィスは独自のアーキテクチャで作られていた。そこに「オープンソースも積極的に検討すべきだ」と秋元さんは提案し、PHPやMySQLが採用されることになった。

 楽しかったカリフォルニアでの生活は長くは続かなかった。サイボウズの海外進出が思うようにいかなかったからだ。結局、米国から引き上げることになる。そして秋元さんは今度は日本でサイボウズ・ラボ立ち上げに携わる。

 サイボウズ・ラボは、サイボウズの技術ブランドを確立するための組織で、優れた技術者を集めて社会に情報を発信していく役目を担っている。参加メンバーは基本的にはサイボウズ以外から採用する。サイボウズ本社から参加したのは秋元さんと経営陣の畑慎也氏のみ。秋元さんのこれまでの実績が買われた結果だ。

 カリフォルニアの生活も楽しかったが、サイボウズ・ラボでの仕事や生活にも満足している。「予想外にいい人が集まってしまった、というのが正直な感想です」と話す秋元さん。サイボウズ・ラボのメンバーとの議論を通じて、日々「ほかでは得がたい経験」を積んでいるという。

サイボウズ・ラボで机に向かう秋元さん。横にある「プーアル茶」は自宅でも飲んでいるお気に入りだという

実は、コンピュータの中身には興味が薄い――「ハッカーではないんです」

 同じくサイボウズの出身であるサイドフィードの赤松洋介さんが主催する開発合宿にもよく参加している。有給休暇を取ってまで参加することもしばしばだ。「日々、作りたいもののアイデアは湧いてきます。それをどこまで1人で作れるか試したいのです」

 制限時間内に答えるクイズを作ることができる「3分クイズ」を思いついたのは米国のソーシャルニュースサイト「digg」を見ていたときだった。ある日「10分でアメリカの州を答えるクイズ」が話題になっていた。そしてその人気にあやかり、海外では同様の仕組みで似たようなクイズがどんどん登場していった。

 それを見ながら「これは自分でオリジナルのクイズを作れたらいいのでは?」と考えるようになった。ちょうど開発合宿のタイミングだったので作ってみることにした。“旬の話題”だったので、スピードを重視。既存のライブラリを駆使して1日で作りあげ、開発合宿メンバーのフィードバックも取り入れて合宿参加後すぐにリリースすることができた。

著書「PHP×WebサービスAPIコネクションズ」

 思いついたアイデアをどんどんカタチにしていきたいという秋元さん。しかし彼は自分のことを「自分はあらゆる意味でハッカーではありません。真のハッカーは尊敬していますが、自分は頑張ってもそうなれないと思います」と話す。コンピュータの中身が分かって応用ができる、そんな真のエンジニアになれればベストだが、そこまで手が回らない。そこで手っ取り早くやりたいことが実現できる“応用”として、APIやWebサービスに注目している。

 彼のブログ「秋元@サイボウズラボ・プログラマー・ブログ」でもAPIやライブラリまわりの話題が多い。それを見た編集者の提案から生まれたのが著書「PHP×WebサービスAPIコネクションズ」である。ブログでも数多く取り上げられたこの著作。これを読んで「手っとり早くサイトを作る楽しみを知ってほしい」という。

「かばんを持たない」ポリシーの理由は故郷にあった

 秋元さんの仕事術の根底にあるのは「機械ができることは機械にやらせること」。開発の現場では自動化ツールの「Ant」を駆使している。開発に限らず、情報収集もできる限り自動化する。検索結果をRSSで購読することによって、情報が自動的に集まってくる仕組みを作っているのだ。「サイボウズ・ラボ」や「秋元」を「Googleアラート」や「Freshfeed」に登録している。

 ブラウザはFirefox。拡張機能が充実していることもあるが、Netscapeの姿勢に共感しているからだという。「最初にがんばった人には敬意を示さないと」と秋元さんは話す。その他によく使うのはSkype。チャット機能が優れているからだ。「複数のPCを使う人にとっては、ログがすべてのPCに残らないと意味がないですよね」

 ユニークなのは「かばんを持たない」というポリシー。その理由は彼の出身地にあった。「雪国出身の人は基本的に両手を開けておきます。そうでないと転んだときに危ないですから(笑)。荷物を持ち歩くと疲れるので、持たなければいけないとしても、なるべく手ぶらに近い状態がいいです」と話す秋元さんは、現在モバイルでの仕事に興味があり「Let's note R3だけが入る」バックパックを探しているという。

 インターネットやプログラミングを“ゲーム”として楽しんでいる秋元さん。アイデアを「手っ取り早く」カタチにする手段を日々模索中である。「一緒にこのゲームを楽しんでくれる仲間はいつでも募集していますよ」。興味がある人は秋元さんに連絡してみてはどうだろうか。

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