GPS腕時計とGoogle Earthを結ぶ現代の“赤い糸”樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

筆者の行動は、すべてGoogle Earthに――。2週間前に購入したGPS搭載腕時計「GlobalSat GH-615B」で計測した情報をアップロードしているのだ。

» 2008年08月07日 18時01分 公開
[樋口健夫,ITmedia]

 8月6日から筆者の行動は、すべてGoogle Earthに記すことになった。GPS搭載腕時計「GlobalSat GH-615B」である。GH-615Bで計測した情報をアップロードしているのだ。

 GH-615BをPCに接続すれば、Google Earthが自動で立ち上がり、たちまち該当地域に画面が移り変わる。地下鉄や地下街など、衛星からの電波を感知できないところは赤い直線で表示するが、地表面ではほぼ正確に移動したところをトレースしてくれる。誤差は数メートルほどのようだ。地上を行く限り、Google Earthに自分の足跡ルートマップができていく――というわけである。

 このGH-615Bを使用する上で、注意したいことは2つ。移動した日にPCに登録する必要があること、またGH-615Bの電池が約10時間で切れること。電池については、こまめに電源を切ったり、毎晩充電を欠かさないようにしたりするといい。

飛行機の機内で、飛行情報を知る

 このGH-615Bを使い始めて2週間、海外にも持っていった。あれは中国・大連からの帰途である。飛行機は離陸直後、軽く周辺を半周して南東方向に一直線で飛行し始めた。高度は1万メートルを超え、速度も時速950キロ以上になった。実はこれらのデータ、筆者の右腕に付けたGH-615Bで確認したのだ。刻々と変わる速度や高度のほか、緯度、経度、距離を確認できるのである。

編集部注:2007年10月1日から、航空機の離発着時にはGPS受信機が利用できなくなりました。機内での利用には客室乗務員の指示などに従って下さい。国土交通省の告知サイト

 順調な飛行だったが離陸後1時間を少し過ぎたとき、突然、機体がガタガタと揺れた。ふっと、GH-615Bの画面を見たら、高度が1万メートルから急速に下がり始めた。9900メートル、9800メートル、9700メートルと下がっていく。「おいおい、どこまで下がるのだろうか」。一瞬、地表面まで下がるのではないかと感じてしまったほどだ。

 だが不思議なことに、シートベルト着用のサインは出ない。揺れも止まらないし、高度もどんどん下がっている。そんな中ふと考えたが、筆者自身が飛行情報を把握して、一体どういうメリットがあるのだろうか。

 万が一、どんどん高度が下がり続ければ、「わあ、どうしよう」とでも叫ぶつもりか? もしくは、パラシュートでも探すのだろうか? 実際は何もできないだろう。しかし、何も知らないままでいるよりは、事態を知って受け止めるほうが、ほんの少しだけでも幸せな気がする。というわけで筆者はGH-615Bの画面を見続けていた。

 すると、高度約9000メートルのところで、GH-615Bの表示高度が安定し、機体の揺れもなくなった。その途端、「こちら機長です」との機内アナウンス。「本機は現在、朝鮮半島の沖合に出て、成田空港に向けて飛行航路を変更しました。本機の成田到着時間は、約20分早くなり○○時××分ころになります。成田の天候は曇り、気温は……。先ほど機体が揺れましたが、乱気流のためです。現在は揺れも収まりました。飛行にはまったく心配はありません。安全のため、シートベルトの着用を引き続きお願いします」

 これを聞いて「なるほどなあ」と思った。乱気流に入って、急いで飛行高度を下げ、安定してから乗客を安心させるために、機長がアナウンスをし始めたのだ。

 それにしても、乗っている飛行機の主要な飛行情報を、乗客が腕時計から入手できる時代が来たのだ。


 ちなみにGH-615BのデータをGoogle Earthで表示させると、通過したところを赤い点線で表示する。筆者は東京・港区の自宅をGPSに登録した。そこから数十キロはなれた成田と自宅が赤い線でつながっているのを見ると何か感慨深いものを感じた。

今回の教訓

赤い点線は、現代の“赤い糸”か――。


著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちら


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