熱や緊張で余裕のない中では、最低限4項目だけ医師に伝えればいい――というのが前回の話。余裕があればどこまで説明したらいいのでしょうか。
外科系女医の仁科桜子(にしな・さくらこ)です。前回は「先生には最低限何を説明すればいい?」という質問についてお答えしました。さて今回の質問は?
ご質問ありがとうございます。これは前回の質問、「症状は、最低限どう説明したらいいか」よりも、さらに患者さんに余裕がある場合に伝えてほしいですね。
なんてことも情報として加えていただけると、さらにいい場合があります。ま、この辺は症状の種類によってもさまざまですが。とにかく、1つでも多くの情報を医師に与えることが鍵を握っているわけです。
私が実際に診た患者さんたちの中には、これらの症状や経過などを紙にメモして持ってきてくださる方もいました。そうすると、より短時間で正確に伝わりますし、何より「緊張してコレを言うの忘れちゃった!」というのが防げます。
私の場合は、メモをいただいた場合にはその内容を参考にしながら、さらに詳しいお話を聞くようにしており、患者さんのメモは診察の上でとても有難いです。しかし中には、メモを渡したら「素人が偉そうに医者に対してこんなもん書くなんて!」と激高された、なんて話を聞いたことがありますが、これはかなりレアケースでしょう。そんな医師なら、残念ながらほかの病院に変えたほうがいいかも。それこそこの連載の1回目で書いた「かかりつけ医って必要ですか?」にも関係してくるテーマですね。
余談ですが、医師の側としては当然、患者さんの話を聞きながらカルテを書くわけです(最近は電子カルテに打ち込むことも多いけど)。で、必ず最初に「主訴」というものを書きます。つまり、そのカルテをパッと見た時に、一番上に一言で「どんな訴えで来院したのか」が分かるようにしておきます。
例えば、「主訴:頭痛」とか、「主訴:嘔気(おうき)」とか。要はタイトルのようなものですね。ですから、最初にまず、「今日は何が辛くて来たのか」を一言で言ってから本題に入っていただけると非常に助かります。
非常に辛いパターンとしては、「えーっといつだっけな、ちょっと前から、あ、以前にも同じようなことがあったんだけど……あ、そうそう。うちの子供も最近具合悪くてね、それでねそれでね(略)」と、マシンガンのように話し続けてくれるのはいいんだけど、「結局、症状は何なの?」という例。
これだと患者さんの家族構成や近所づきあいについては頭に入りますが、どこの具合が悪いかさっぱり分かんねー、というトリッキーな展開になります。私の個人的な経験では、おばさま達に非常に多いパターンです(統計とったわけじゃないけど)。
「まあまあ、落ち着いて」と言いたくなるけど、それを言う隙さえ与えないくらいしゃべり続けてくれます。こういう場合だと、カルテ1行目の「主訴」さえ書けないまま時間だけが過ぎていっちゃう。言うなれば、ラーメン屋に来た客が店内のインテリアとかばっか眺めていて、いつまでたっても麺を食べてくれない感じでしょうか。例えがよく分かりませんね。
というわけで、緊張しがちな人はぜひともメモに経過を書いて持参しましょう。走り書きでも構いません。最近はサービス精神旺盛なドクターが増えています。リラックスしていらしてくださいね。決してマシンガントークにはならないように(笑)。
次回の質問に続く――。
「以前同じ症状になったことがあるか、全く初めてか」
「家族や周りに同様の症状の人がいるか」
「薬のアレルギーについて」
女医。 医大生時代には体育会に属しつつ、某社キャンペーンガールや大手塾講師など数々のバイトをこなす日々を過ごす。 現在は、酒と体力だけには自信アリの外科系ドクターとして病院勤務。
ドクトル・ピノコ名義で「週刊ビジスタニュース」などにコラムを執筆している。2009年1月、仁科桜子(にしな・さくらこ)名義で『病院はもうご臨終です』(ソフトバンク新書)を発売した。
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