ソーシャルメディアを活用してパーソナルブランディングを行うためには、自分の「プロフィール」をしっかりと考える必要があります。単なる自己紹介ではありません。自身のプロフィールを太い輪郭線で描き直せるかどうかは、パーソナルブランディングの成否を分かつ極めて重要な出発点です。あなたがアピールしたいと思う人に向けて、心に響く内容を記載することが大切です。
具体的には、下記の内容を伝えることができているプロフィールが、よいプロフィールと言えます。
例として、Twitterに掲載されている実際のプロフィールを見てみましょう。以下に挙げる実例は、パーソナルブランディングを意識している3人のものですが、具体的にどんなことを書くと前述の内容を伝えることができるのか、お手本になると思います。なお、Twitterを選んだ理由は、プロフィールを160文字以内とするルールなので、PRしたい内容が凝縮されているからです。
上図はTwitter上の私のプロフィールの構成ですが、全体を大きく4つのパートに分けています。
最初に著書があることと、テレビ出演をアピールしています。これらが象徴する社会的ステイタスは強力な差別化要素となり、誰が見ても分かりやすいので、一番上に記載しています。
次に、自分が何者であるかを示すために、専門分野を記載しています。この部分では、自分がどういうことに興味を持っているかを伝えると同時に、「こういう人たちとつながりたい」とアピールする効果があります。
その次に、どういった内容の発言をつぶやく傾向にあるか、私の場合はおおよその比率で表わしています。
最後に、自分の発言はあくまでも個人としての意見であり、所属企業とは関係ないという断り書きを記載しています。ソーシャルメディアは公共の場なので、万が一自分の発言が会社の見解であるかのように扱われることのないように、所属企業に対し配慮しました。
イケダハヤト氏は、コツコツとブログを書いていたところ、現在の勤務先からお誘いが掛かったという、まさにソーシャルメディアで転職活動を成功させた経験をお持ちです。Facebookの解説書もいち早くご執筆されました。同氏のプロフィールを見てみましょう。
まず、出自や主な活動内容から始め、ご自分が何者であるかを明らかにしています。自称「86世代」という表現には、ITバブルで跋扈(ばっこ)した76世代に代わる、ネットワークネイティブなニュージェネレーションの気概を感じます。次に連載や著書といった社会的ステイタスにつながる事柄を紹介しています。続いて「テントセン」やエイズ孤児支援団体のPLASといったNGOに所属し、社会人ボランティアのプロボノとして活躍中であることが分かります。そして最後に「奥さん大好き」という一言で締めくくられており、氏の人間的な横顔、愛妻家で温厚な人柄であろうことが伝わってきます。たった160文字の中に、専門分野と人間味を織り込んだ素晴らしいプロフィールです。
筆者にとってはオルタナティブ・ブログ(ITmedia主催)の先輩でもある林雅之氏のプロフィールを見てみましょう。
氏はクラウドコンピューティングの分野で地道にパーソナルブランディングを実践しています。クラウド関連書籍の執筆や講演などを多数手がけ、新聞などに取り上げられた経験もお持ちです。
林氏も所属企業、著書などの社会的ステイタス、活動内容を記載しています。最後にPTA副会長というキーワードがあり、家庭想いで地域から信頼されているという人柄が読み取れます。
3人のプロフィールからは、表にある内容を盛り込むと、伝えるべきことが伝わる良いプロフィールになると言えます。
記述内容の並び順も重要です。人から見て最もインパクトのある自分のアピールポイントや、多少でも「凄い!」と思ってもらえる事柄は、原則として一番上に置きます。また、何かの注意事項のような、機械的な箇条書きの羅列では、面白く読んでもらえません。簡潔で、全体にメリハリやリズム感のある構成にしたいものです。場合によっては、最も重要な事柄を最後の締め括りに使うことで、自分を印象づけるという手もあるでしょう。
プロフィールに盛り込みたい内容 | |
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社会的ステイタス | 所属企業、業界、著書、メディア出演履歴など |
専門分野 | 自分の専門性、取得資格など |
活動内容 | 社会貢献などの仕事以外の内容 |
発言内容 | つぶやく頻度や割合、嗜好性 |
人間性 | 家族思いであるなど、パーソナリティを伝える |
発言の責任 | 発言の責任は個人に帰属するのか、組織を代表するのかなど |
では、以上を踏まえて、プロフィールの作成にとり掛かりましょう。この作業は下図のような5つのステップを踏んで進めます。
まず、ソーシャルメディアを活用し、パーソナルブランディングを実践していくにあたって、自分にはどんな夢があり、どのようにそれを実現したいのかを明確にする必要があります。それを明らかにするために、以下の二つの質問について考えてみてください。
質問1 あなたがソーシャルメディアで実現したい目標は何ですか?
本章のはじめの方で解説した「パーソナルブランディングで何ができるのか」、「自分はソーシャルメディアを使ってどういうことができそうか」を意識して考えてみてください。
質問2 何年後までにそれを実現したいですか?
1年後に実現するのか、10年後に実現するのかで、活動内容は大きく違ってきます。ブランディング活動には時間がかかるので、到達目標時期がはっきりしない場合には、三年後のゴールをイメージすると書きやすいでしょう。
プロフィールを作成するのは、自己満足のためではありません。パーソナルブランディングの実践を通して、あなたがリーチしたいと思う人たちにアピールするプロフィールを作成する必要があります。ターゲット業界を正しく認識し、そこに訴求するキーワードを考えます。
あなたがブランディング活動でリーチしたい業種・業界を決めます。これは多くの場合、あなたの顧客となるべき層であるため、あなた自身が所属している業種・業界とは異なるでしょう。「日本標準産業分類表」を使ってターゲットを絞り込むのが1つの方法です。
ターゲット業界を選定できたら、「そこにいる人達が欲しがる情報は何か?」を明らかにします。これを考えるときの手掛かりとして、ターゲット業界の技術トレンドと、規制緩和に関する情報を収集するという方法があります。
規制緩和については、ターゲット業界の監督省庁や関連行政機関を調べ、その政策方針を探ります。通信業界なら総務省、電力業界なら経済産業省といったように、各業界には規制法案などを起草する行政機関があるはずなので、それを調べます。そして各省庁のホームページに行くと、年度ごとの取り組み事業などが掲載されているので、今年度分の政策などを見て、ターゲット業界でどんなことが課題として議論されていて、これからどんなことが起ころうとしているのかを調べてみるとよいでしょう。
技術トレンドを調べるには、ターゲット業界を対象とした展示会やセミナー、出展企業のホームページ、業界紙の目次などに目を通します。おおまかなトレンドはこれで把握できます。
こうした方法で集めた情報の中から、ターゲット業界で興味を引きそうな「キーワード」を選び出します。プロフィールにそれを盛り込んでおくと効果的です。また、抽出したキーワードは、経営幹部層を多く含むような有力な人脈を作るうえで、近道を示してくれます。
ターゲット業界で「オピニオンリーダー」とか「エバンジェリスト」と呼ばれる人がいないかを確認します。業界のリーダー的立場の人を発見できたら、彼らが今、何に興味を持ち、どういった台詞をつぶやき、プロフィールにどんなことを記載しているかチェックします。オピニオンリーダーと目される人から、その業界で評価される振る舞いを学ぶのです。
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