「言っても無駄」では、何も変わらない――話す相手を間違えていませんか田中淳子の人間関係に効く“サプリ”(1/2 ページ)

職場でよく聞く「言っても無駄だし」「言っても何も変わらないし」――。でも、こうしたケースではときどき、言う相手を間違っていることがある。正しい相手に正しく伝えなければ、変わらないのは当然だ。

» 2013年10月31日 11時00分 公開
[田中淳子Business Media 誠]

田中淳子の人間関係に効く“サプリ”:

 職場のコミュニケーションに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。「上司にこんなことを言ったら怒られるかもしれない」「部下には気をつかってしまうし」――。

 本コラムでは、職場で役立つコミュニケーション術をご紹介します。具体例を挙げながら「なるほど! こういうやり方があるのか」「これなら自分でもできるかもしれない」と感じてもらえるよう、筆者が見聞きした出来事をちりばめています。

 明日から……ではなく、いますぐに試すことができる「コミュニケーションのヒント」をご紹介しましょう。


 総合病院の口腔外科外来で、自分が呼ばれるまで待合室のベンチに座っていた時の出来事だ。

 口腔外科の隣には皮膚科がある。その皮膚科を受診するために来院したらしい若い女性が、口腔外科の案内に目をとめ、受付窓口の看護師にこう話しかけた。

 「あのぉ、ちょっと聞いていいですか? 今日は皮膚科で来院しているんですが」

 「はい」

 「私、ちょっと前に歯が痛くなって、近所の歯医者さんに行ったら、虫歯だというので、痛み止めを貰ってそのままにしているんですけど、その薬を飲み続けていたら、気のせいか、味覚がなくなってきた感じがして……。それって、虫歯が進行しているんでしょうか?」

 「……ええと、かかりつけのお医者さんがいるのですか?」

 「はい、近所です。味覚がなくなってきたし、やっぱり、病院に行ったほうがいいでしょうか?」

 「ええ、そうですね、何が原因かは分かりかねますが、かかりつけ医があるなら、まずはそちらに」

 「そうですよねぇ。ありがとうございました」

 ……

 フシギな会話だなあと、思わず聞き入ってしまった。

 この女性、皮膚科に行く途中でたまたま歯科の窓口が目に止まったので、最近気になっている歯の症状について、受付の看護師さんに尋ねたのだろう。しかし、通りがかりの看護師さんに、どんな回答を期待していたのだろう。

 仮に、看護師さんが「あ、大丈夫ですよ。味覚異常なんて気のせいですから」と言ったらどうしたのか。(そんなことを看護師さんが言うわけもありませんが)安心したのだろうか? 「ま、いいか、味覚は異常だけど、放っておこう」と気にするのをやめたのだろうか。「そんな事態であれば、今すぐ早くかかりつけの病院に行くべきです」と言われたら、それに背中を押されて、ようやく、地元の歯科にかかるのか?

 これは、病院での出来事だが、こういった「しかるべき相手に言わず、無関係な誰かに言う」というケース、意外にあるように思う。

「言っても無駄だし」「言っても何も変わらないし」では、何も起こらない

 ある時、若手層への研修でのグループワーク中、20〜30代の方たちが愚痴り始めた。

 「上司が分かってくれない」

 「そうそう」

 「上司がムチャ振りをする」

 「あるある」

 「上司が……」

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 グループワークのテーマは職場の課題だったので、その中に多少の愚痴が混ざるのは構わないのだが、とはいえ、少し数が多かったので、問いかけてみた。

 「上司に”私はこう思っている”って話しています? 例えば、“今、その仕事を引き受けるのは無理。スケジュール調整をしてほしい”とか“誰かサポートを付けてほしい”とか、何でもいいけれど、上司に伝えてみました?」

 すると、「言っても無駄だし」「言っても何も変わらないし」という答えが返ってきた。

 もし、仕事において何らかの課題があるならば、課題の当事者と話さなければ一歩も先に進まないのに、と思うのだが、やはり「しかるべき相手」にはなかなか言えないようなのだ。

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