ある日突然やってくる「燃え尽き症候群」ストレスをためない技術(1/2 ページ)

ストレスはできるだけ感じたくはないもの。けれど決してなくなりはしません。本連載を通じて「ストレスとどう付き合うか」を知っていきましょう。

» 2014年01月08日 11時00分 公開
[松島直也,Business Media 誠]

集中連載『ストレスをためない技術』について

 本連載は、2012年2月16日に発売の松島直也著『ストレスをためない技術』(日本実業出版社)から一部抜粋、編集しています。

 ストレスは、決してなくならない。ストレスはできるだけ感じたくないものです。けれど、世の中からストレスは決してなくなりません。一歩外に出れば、さまざまなことがストレス要因となり、あなたを襲います。自分だけが「安全地帯」に逃げ込むことはできないのです。

 大事なのは「ストレスをなくすこと」ではなく、「どう付き合うか」を知ることです。本書では、NLP(神経言語プログラミング)の専門家である著者が、ストレスとの正しい付き合い方を紹介します。


 あなたはストレスとの付き合い方を、きちんと学んだことがありますか?

 ストレスというのは、実は知らず知らずのうちに私たちの心や体にたまっています。ストレスとの付き合い方を知らないために、気が付いたときには精神がダウンしてしまっている。そんなケースもけっこうあります。

 つい最近、私もこんな経験をしました。

 もともと私はハワイなど南国の海が大好きで、自分の気持ちをリラックスさせたいときに海をイメージするようにしています。それが私にとって「リラックスモード」に入るスイッチだからです。

 ところが東日本大震災の後、そのスイッチが機能しなくなりました。自分なりに原因を探ってみると1つの体験が思い当たります。震災後、私はボランティアのために被災地を訪れました。私はカウンセラーの養成校の社長が中心になった団体、一般社団法人全国心理業連合会の発起人メンバーです。

 その中の「チーム300」の活動で海岸線を見て回りました。ある道路を隔てた海側ではすべてのものが流され、何もない状態が延々と続く。建物も、木々もなく、ただ荒れ果てた泥の大地が広がるだけの衝撃的な光景でした。ですが私自身、現場で激しくショックを受けたかといえば、決してそうではありません。それまでテレビの映像を何度も観ていましたし、それなりに予想をしていたからです。

 ひどい現場ではあるけれど、大きなショックは受けていない。自分ではそのつもりでした。ところが実際は違いました。

 被災地を訪れて以降、私にとっての「海」は「荒れ果てた泥の大地」とリンクしてしまい、事あるごとに、じっとりと辛い気持ちになるようになってしまったのです。知らず知らずのうちに私の心はダメージを受け、やんわりと暗い気持ちになっていたのです。

 震災後、似たような感覚を訴える人も多くいます。携帯電話から緊急地震速報が鳴るたびに過度な恐怖を感じたり、夜寝る前に「あれ、揺れているんじゃないか」と不安になってなかなか寝つけないなど、数え上げればキリがありません。

 しかし当人たちに話を聞いてみると「それほど大きなショックを受けたとは思っていない」という答えが返ってくる。ストレスの正体は、意外なほど自分では気が付きにくいものなのです。

ある日突然やってくる「燃え尽き症候群」

 日常のちょっとした瞬間にも「ストレスの正体」は潜んでいます。

 十数年前、私は営業マンとしてバリバリ働き、それなりの成果も上げていたのに、あるとき突然、燃え尽き症候群に襲われました。それから数カ月、自分の部屋に閉じこもりっきりという状態に陥ってしまったのです。本当にある日突然です。

 営業という仕事、人とのつき合い、結果を求められるプレッシャーなど、さまざまな要因が私の肩にのしかかっていたのでしょう。とはいえ、当時の私は「自分が燃え尽き症候群になる」なんて想像すらしませんでした。

 確かに仕事はきついものでしたが、十分な成果を上げ、それなりに充実しているという実感もありました。それなのにある日突然、私の心は壊れてしまいました。自分のストレスに気が付かず、ストレスとのつき合い方を知らなかったせいだと、今では冷静に振り返ることができます。

 だからこそ私は、「ストレスとのつき合い方を知ること」の大切さを、声を大にして訴えたいのです。私はNLPの専門家として、ストレス処理に関するセミナーを何度となく実施し、ストレスに苦しむ人たちと大勢向き合ってきましたが、「ストレスとのつき合い方」を知らない人がじつに多い。非常に危険な状況です。

 大抵の人は「ストレスは嫌だ」「解消したい」と思っていますが、そんなことははっきり言って不可能。世の中からストレスはなくなりませんし、あなただけがストレスのない「安全地帯」に逃げ込むことはできません。

 一歩外に出れば、あらゆることがストレス要因としてあなたに降りかかってきます。夏が暑いのも、冬が寒いのもストレス。電車に乗ればマナーの悪い人もいるし、会社へ行けば気に入らない上司や同僚がいるのは当たり前。といって家に閉じこもっていたら、それはそれでまたストレスになる。世の中とはそんなもの。それは仕方がありません。大事なのは「ストレスをなくすこと」ではなく「どうつき合うか」を知ることです。

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