人は去っていく。いったんは心が通じたと思っても、どちらかのせい(相手のせいもあるし、自分のせいもあるだろう)で亀裂が入り去っていく。あるいは心に共鳴を残したまま、それぞれの新しい生活、それぞれの夢に向かって去っていく。
大企業に勤めているときには知り得なかった、自分の力が及ばない不幸の存在を身近なものとして知ることがある。
僕の場合、雇用して暖かく見守ることだけでは救えない、とても不幸な境遇の人がいた。本当に救うつもりなら、その存在すべてを、トラブルも未来も一切合切を含め、自分の子でもあるかのように引き受ける覚悟が必要だった。
そのときの自分の無力感が胸を刺す。引き止めることができず、何年も前に去っていったあの人は今、どうしているだろうか。
「独立したら、損得勘定だけが交遊の基準になり、孤独になる」という人もいる。僕も、会社を興してから数年はそんな風に思っていた。
でもそんなことはない。“死闘”を演じたライバルが、状況が変わってかけがえのない友人になり、取引先との間に信頼と友情が育つことがある。
小さな会社をしていても、友人はできる。ある意味、損得勘定から始まって損得勘定を超えるのが、独立してからの友人づくりといえるのかもしれない。
アンティーク・リサイクル着物を国内外へ販売する「ICHIROYA」代表。昭和34年生まれ。京都大学水産学科卒業後、大手百貨店に入社。家庭用品、販売促進部など。19年勤めたのち、2001年に自主退職して起業。現在に至る。趣味はブログ執筆。
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