年末調整とは? その書き方を理解しよう:「大増税」時代に備えて(3/5 ページ)
読者の中にはなんとなく増税することを理解はしているが、そもそも税金の仕組みを分かっていない人が多いのではなかろうか。そんな読者もまずは年末調整から意識してみるといいだろう。
税金を計算してみよう
実際の税金を条件を変えながら計算してみよう。最初は年収480万円で独身の場合と家族持ちの場合の比較だ。独身は両親などの扶養家族なし、生命保険への加入もなし。家族持ちは専業主婦の奥さんと高校生、大学生の子供、生命保険は元々加入している生命保険、学資保険などが20万円、今年8万円の医療保険に加入という条件だ。
同じ480万円の年収で独身と家族4人で所得税は9万円、住民税は約13万円、合計約22万円差となった。この差の元となるのは各種所得控除の差だ。奥さんがいる控除、子供がいる控除、生命保険に入っている控除などで独身の人より納税額が少なくなっている。図の金額を算出した計算式、控除の内訳を一応書いておくのでご自身の税金を計算する方は参考にしていただきたい。
- 給与所得控除=480万円×20%+54万円=150万円
- 給与所得=480万円−150万円=330万円
所得税 | |
---|---|
各種所得控除の内訳 | 基礎控除38万円 社会保険料控除65万円 配偶者控除38万円 扶養控除(高校生)38万円 扶養控除(大学生)63万円 一般生命保険料控除:20万円(旧制度)の控除5万円 介護医療保険料控除:8万円(新制度)の控除4万円 所得税の課税所得 独身:330万円−(65万円+38万円)=227万円 家族4人:330万円−(65万円+38万円+38万円+101万円+9万円)=79万円 税額の計算 独身:227万円×10%−9万7500円=12万9500円 家族4人:79万円×5%=3万9500円 |
住民税 | |
---|---|
各種所得控除の内訳 | 基礎控除33万円 社会保険料控除65万円 配偶者控除33万円 扶養控除(高校生)33万円 扶養控除(大学生)45万円 一般生命保険料控除:20万円(旧制度)の控除3.5万円 介護医療保険控除:8万円(新制度)の控除2.8万円 住民税の課税所得 独身:330万円−(65万円+33万円)=232万円 家族4人:330万円−(65万円+33万円+33万円+78万円+6.3万円)=114.7万円 税額の計算(課税所得×10%+均等割−調整控除) 独身:232万円×10%+4000円−2500円=23万3500円 家族4人:114.7万円×10%+4000円−16500円=10万2200円 |
次に年収を820万円に変更し、他の条件は同じまま独身と家族4人の所得税、住民税を計算してみよう。
年収が820万円に増えると、年収が同額でも所得税で約28万円、住民税で約12万円、合計約40万円の差となった。年収が増え税率が上がったため差が拡大した。しかし、40万円はそれなりに大きな金額だが、年間40万円で家族3人を養えるわけはない。50歳男性の2割が結婚していないというニュースを聞くと、税制面では子育て環境が整っているとは言えず、ますます少子化が進みそうな感じがする。こちらも計算式を書いておこう。
- 給与所得控除=820万円×10%+120万円=202万円
- 給与所得=820万円−202万円=618万円
- 社会保険料控除113万円
所得税 | |
---|---|
所得税の課税所得 | 独身:618万円−(113万円+38万円)=467万円 家族4人:618万円−(113万円+38万円+38万円+101万円+9万円)=319万円 税額の計算 独身:467万円×20%−42万7500円=50万6500円 家族4人:319万円×10%−9万7500円=22万1500円 |
住民税 | |
---|---|
住民税の課税所得 | 独身:618万円−(113万円+33万円)=472万円 家族4人:618万円−(113万円+33万円+33万円+78万円+6.3万円)=354.7万円 税額の計算(課税所得×10%+均等割−調整控除) 独身:472万円×10%+4000円−2500円=47万3500円 家族4人:354.7万円×10%+4000円−2500円=35万6200円 |
所得税は毎月天引きされ年末に微調整
各月の残業、業績や成績で決まるボーナスなどで年収が確定し、支払った社会保険、生命保険、年の途中で家族が増えた場合は扶養家族などの各種所得控除額が決まればその年の所得税が確定する。ということは税額が確定するのは12月の給料が決まってからとなる。
ではその税金はいつ納めているのか。サラリーマンの場合、毎月の給料と扶養家族の状況などを加味してその月に所得税を天引きされている。平成24年(2012年)1月にはその月の所得税を納めて2月、3月……ボーナス、と都度天引きされる仕組みだ。しかし、正確な税額は12月にならないと確定できない。
11月までは見なしの金額で納め、12月に生命保険料なども計算して微調整をして12月の給料で1年分の所得税の納付が完了する。この微調整を行うのが年末調整だ。
今年の年末調整のポイントは生命保険
会社は社員に支払った給料は把握しているが、何歳の子供がいるかといった家族形態などは知らないことがある。どんな保険をいくら払っているかなども知らない可能性が高い。それらの控除(節税)に関係する内容は年末調整で自己申告する必要がある。
サラリーマンの方は手元に「平成24年分 給与所得者の保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書」「平成25年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」と書かれた2枚の紙が配られ、自宅には生命保険会社から「平成24年分 生命保険料控除証明書」も送付されているはずだ。
今年の年末調整のポイントは生命保険だ。今年契約した生命保険は新制度となり控除の仕組みが変更となっている。そのため記入する用紙、方法も昨年までと異なっている。昨年と今年の給与所得者の保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書を比較すると保険料控除申告書の部分がかなり大きくなっている。これにともない他の部分は小さくなりレイアウトも大きく変更されている。
まず、昨年2011年までに契約した生命保険と今年2012年以降に契約した生命保険の生命保険料控除について確認しておこう。
旧制度 | 新制度 | |
---|---|---|
全体の所得控除限度額 | ||
所得税 | 10万円 | 12万円 |
住民税 | 7万円 | 7万円 |
一般生命保険料控除の所得控除限度額 | ||
所得税 | 5万円 | 4万円 |
住民税 | 3.5万円 | 2.8万円 |
介護医療保険料控除の所得控除限度額 | ||
所得税 | - | 4万円 |
住民税 | - | 2.8万円 |
個人年金保険料控除の所得控除限度額 | ||
所得税 | 5万円 | 4万円 |
住民税 | 3.5万円 | 2.8万円 |
旧制度(一般、年金に摘要) | 新制度(一般、年金、介護医療に摘要) | ||
---|---|---|---|
年間の支払保険料等 | 控除額 | 年間の支払保険料等 | 控除額 |
2万5000円以下 | 支払保険料等の全額 | 2万円以下 | 支払保険料等の全額 |
2万5000円〜5万円以下 | 支払保険料等×0.5+1万2500円 | 2万円〜4万円以下 | 支払保険料等×0.5+1万円 |
5万円〜10万円以下 | 支払保険料等×0.25+2万5000円 | 4万円〜8万円以下 | 支払保険料等×0.25+2万円 |
10万円〜 | 一律5万円 | 8万円〜 | 一律4万円 |
※一般、年金併せて10万円が限度 | ※一般、年金、介護医療併せて12万円が限度 |
旧制度(一般、年金に摘要) | 新制度(一般、年金、介護医療に摘要) | ||
---|---|---|---|
年間の支払保険料等 | 控除額 | 年間の支払保険料等 | 控除額 |
1万5000円以下 | 支払保険料等の全額 | 1万2000円以下 | 支払保険料等の全額 |
1万5000円〜4万円以下 | 支払保険料等×0.5+7500円 | 1万2000円〜3万2000円以下 | 支払保険料等×1/2+6000円 |
4万円〜7万円以下 | 支払保険料等×0.25+1万7500円 | 3万2000円〜5万6000円以下 | 支払保険料等×0.25+1万4000円 |
7万円〜 | 一律3万5000円 | 5万6000円〜 | 一律2万8000円 |
※一般、年金併せて7万円が限度 | ※一般、年金、介護医療併せて7万円が限度 |
まず、昨年までに契約した生命保険だけで、特約の更新や新規の契約をしていない人は旧制度の適用となり、控除額も従来のままだ。今年2012年1月1日以降に契約、あるいは更新をした生命保険は新制度の適用となる。
従来の生命保険料控除は一般生命保険料控除で所得税の控除額が上限5万円、住民税の上限が3万5000円。個人年金保険料控除も同様で、それぞれが上限の場合は所得税の控除額が合計10万円、住民税の合計が7万円となっていた。
新制度では、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の3つに分かれ、それぞれの所得税の控除額が上限4万円、住民税の上限が2万8000円となっている。3つそれぞれを足した控除額の上限は所得税合計12万円、住民税は合計7万円のままだ。
新制度、旧制度の生命保険を組合せた場合は少々複雑となるので住民税は無視、所得税に関して説明しよう。一般生命保険料控除と個人年金保険料控除は旧制度と新制度の控除額を合算できる。その場合も旧制度の控除上限額の5万円は有効なので、旧制度だけで5万円の控除があれば5万円が有効となる。控除額4万円以下の旧制度と新制度を合算した場合は新制度の限度額4万円が適用される。
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