マンガを使うのもOK!――感情をふるわせて覚える:世界で通用する人がいつもやっていること
脳の中には海馬という記憶を形成するのに重要な部分があります。勉強中に笑ったり感動したりするとこの海馬が働き、記憶が定着しやすくなります。たとえ読むのがマンガであっても効果は同じなので、これを利用しない手はありません。
集中連載「世界で通用する人がいつもやっていること」について
本連載は、世界で通用する仕事やコミュニケーションをこなす一流の人たちが実践していることを紹介している、中野信子氏著、書籍『世界で活躍する脳科学者が教える! 世界で通用する人がいつもやっていること』(アスコム刊)から一部抜粋しています。
世界で通用する人がいつもやっていることとは、具体的にはどういうことなのでしょうか? 実は、「空気は読まない」「敵を味方にしていく」「適度なストレスを与える」「いつでも仕事が楽しそう」など、ちょっと練習が必要なものもありますが誰もが簡単に身につけることができるものばかりなのです。
著者の中野氏は、東京大学大学院医学系研究科出身の脳科学者。世界上位2%のIQ所有者のみが入会を許される「MENSA」に所属し、フランス原子力庁勤務の経験もあるという。本書は、世界で活躍する脳科学者・中野信子氏が世界中で出会ってきた、世界で通用する仕事やコミュニケーションをこなす一流の人たちが実践していることを紹介した、今までにない自己啓発書です。本書を通じて、自分を磨くことをどんどん楽しめる人になってください。
著者プロフィール:
中野信子(なかの・のぶこ)
東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻修了、医学博士。2010年までフランス原子力庁に勤務。世界で上位2%のIQ所持者のみが入会できるMENSAの会員。
現在、脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行っている。
学習法だけにとどまらず、音楽と脳、セックスと脳、コスプレと脳、恋愛と脳、人工知能と脳、言語と脳、香水と脳など、従来にない脳の分析も得意とする
言葉を介した記憶と介さない記憶がある
人間がずっと覚えている記憶(長期記憶)には、言葉にできる記憶とそうでない記憶の大きく2つに分けられます。言葉にできる記憶は「陳述的記憶」といい、言葉にできない記憶は「非陳述的記憶」と呼ばれます。
このうち、陳述的記憶には「意味記憶」と「エピソード記憶」があります。意味記憶は知識としての記憶のことで、感情の動きは伴いません。言語の意味や情報の記憶がそれにあたります。
エピソード記憶は経験した記憶のこと。情緒を伴うことがあり、思い出もこれに該当します。心に傷を負ってPTSD(忍耐の限界を超えたストレス)の症状が出るときには、特にこのエピソード記憶が混乱しているのです。
非陳述的記憶は「身体の記憶」とも呼べるもの。自転車の乗り方、泳ぎ方、お経の唱え方などの「技能記憶」と、人と会ったときのお辞儀や挨拶の言葉かけなどの「連合記憶」があります。これらを総称して「手続き記憶」と呼ぶこともあります。
たいてい、大学受験などの筆記試験で必要とされるのは前者の陳述的記憶のほうだと思います。最終回となる今回は、陳述的記憶をうまくこなすちょっとしたテクニックをお教えします。
記憶するかどうかを判断する海馬を味方につけよう
前の記事でも紹介した京大卒お笑い芸人の宇治原さんは「暗記は感情を伴う形で覚えるといい」とアドバイスしています。例えば、歴史などを覚えるときは「すごいな〜」「怖いな〜」「ずるいな〜」など、感情や感想を口に出して読むと覚えやすくなります。これは、海馬が「生存に必要な知識を優先的に記憶する」という機能を持っているからです。
海馬は脳の真ん中あたりにあり、長期記憶を形成するのに非常に重要な部分です。タツノオトシゴのような形をしているので海馬という名前がつけられました。この海馬で必要な記憶と不必要な記憶を分類して、必要な記憶を残すという「仕分け」を行っているのです。
つまり、仕分け人である海馬に「この記憶は大事だからちゃんと記憶しておこう」と判断してもらう必要があります。そのためには「怖い」とか「興奮した」などの感情を伴う経験が効果的なのです。
エピソード記憶は心の動きを伴うので、より記憶されやすくまた思い出しやすいと言えるでしょう。例えば、自分自身で計画を立てて実際に旅行をした場所のことはよく覚えていますよね。そして、その場所にまつわる歴史的人物や歴史的事件については、授業で習ったときにより印象的に感じたりして、記憶に刻まれやすくなることを経験したことはありませんか?
また、自分が実際に応援しに行ったスポーツについては、他に比べるとルールをより詳しく記憶している、ということもあるでしょう。
このように、感情を伴う体験はより強く記憶されるのです。さらに、自分が実際に体験していなくても、例えばマンガなどによる擬似体験でもエピソード記憶として貯蔵することができます。
勉強は本来楽しいもの。マンガを使うのもOK!
受験生時代に、私は地理の先生から「マンガの『ゴルゴ13』を読むと良いですよ」と勧められました。確かに「どこそこの国ではこの産業が……」などと無機的なデータをただ暗記するよりも、『ゴルゴ13』の主人公と一緒にその国をまわった気になって擬似体験的に覚えるほうがはるかに簡単で、また楽しく覚えられると思います。
「マンガで勉強なんて大丈夫か?」と心配する人もいるかもしれませんが、脳にとって記憶しやすい状態を作ってあげるのもまた、その人の能力であると言っても過言ではありません。自分を苦しめるだけが勉強ではありません。本来、勉強とは新しい世界の扉を開くもの。むしろ、楽しいものなのです。
(世界で通用する人がいつもやっていること=終わり)
関連記事
- 日本地図、世界地図をかっこよく描いて、グローバル時代を生き抜く!
日本、そして世界。グローバル化するビジネスにおいて、世界レベルのロケーションで物を視る機会も増えていることでしょう。今回は、世界の形をしっかりと観察し、自分なりに描けるようにします。交通の要所をおさえれば、何も見なくても描けますよ。 - 年末年始に身につけたい、トップ1%の人が実践する思考ルール
成功する一握りの人々だけが実践する、共通の「思考の法則」を知るためには、いったん私たちが常識だと考えてきたルールをリセットする必要があります。そして、彼らの行動や考え方に注目し、そのエッセンスを吸収して、その根底にある思考のサイクルを身につけることが重要です。 - 説明とは相手に向かって話すことではない――話し下手な人のための説明力向上法
日常業務の中で必須となる「説明の場」。でも説明が不得意な人っていますよね? 今回は相手の理解、納得度を高めるテクニックを紹介します。 - 40代でできること、できないこと
10代や20代のころには「自分は何でもできる!」という幻想を抱いていたとしても、40代ともなるとそれがだんだん崩れてきます。完全に失望しているわけではありませんが、できることやできないこと、得意不得意など自分のことが自然と分かってきます。40代は、理想と現実の狭間にいる微妙な年代といえます。 - 想像することが苦手な人に、年間ビジョンの作り方
新年を迎えて「今年はこんなことにチャレンジしたい」という人も多いのでは。しかし実際には、なかなかうまくいかない。なぜうまくいかないのか。今回は「1年の計画の立て方」について紹介しよう。 - グローバル化と国際化ってどう違うの?
近年よく使われるようになったグローバル化(=globalization)という言葉。かつては国際化(=internationalization)という言葉の方がよく耳にしましたが、それが入れ替わった背景を考えると、今のビジネスの流れも見えてくるのです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.