本をスキャンしてPDFなどのデータに変換する作業は、俗に「自炊」と呼ばれる。タブレットなどで大量の本を持ち歩いて読める用途の他にも、劣化しない、置き場所をなくせるといったさまざまなメリットがある。自炊を目的に、ドキュメントスキャナなど大量の用紙のスキャンに向いた製品を購入した人も多いはずだ。
スキャンした本を見やすい状態に整えて保存するには、傾きや向きの補正、不要ページの除去などの加工が必要になる。スキャンと並行してこれらの作業を行う場合、スキャナ付属のユーティリティ、例えば「ScanSnap Organizer」などを利用するのが一般的だが、あとでまとめて補正を行う場合や、異なるデバイスで生成されたPDFを一括で補正する場合は、Acrobatなど専用のPDF編集ソフトを使ったほうが操作が統一できる。綴じ方向の変更など、スキャナのユーティリティでは行えないさまざまな調整が行えるメリットもある。
今回は、本の自炊データを加工する際に便利なAcrobatの機能を集めてみた。スキャナ付属のユーティリティでは他社製品で取り込んだPDFデータは編集できないことが多いので、こうした制限のないAcrobatはなにかと重宝する。なおリンク先の説明は、基本的にAcrobat XI Proでの操作に準拠している。
傾きを修正する
スキャン時に傾いたデータを修正するには、「表示」→「ツール」→「文書処理」で表示される「スキャンされたPDFを最適化」機能を利用する。傾きの自動補正と合わせて、テキストのシャープネスや背景の除去などによるサイズの縮小も実行される。
向きを修正する
スキャンの過程で原稿が90度回転してしまった場合は、「表示」→「ツール」→「ページ」→「回転」で、方向や対象ページを選択して正しい向きに戻してやるとよい。なお元データに手を加えず、表示だけを回転させてやる場合はこれとは別の方法になる。
複数のファイルに分割する
複数の原稿が1つのPDFにまとまってしまった場合は、「表示」→「ツール」→「ページ」→「抽出」を選択し、ページを指定したのち「抽出後にページを削除」「ページを個別のファイルとして抽出」にチェックを入れて実行することで、別ファイルに分割できる。
特定のページだけを抽出する
いったん全ページをスキャンしたのち必要なページだけを取り出したい場合は、サムネイル表示に切り替えたのち、目的のページサムネイルをデスクトップ上などにドラッグしてやるとよい。選択したページが1つにまとまった別ファイルとして生成される。
画質を落としてファイルサイズを小さくする
保存先の容量の関係などで、肥大化してしまったファイルサイズをなるべく小さくするには、「表示」→「ツール」→「文書処理」を開き、「スキャンされたPDFを最適化」を選択するとよい。画質の調整も可能なので、クオリティとのバランスも好みに応じて変更できる。
互換性を下げてファイルサイズを小さくする
「ファイル」→「その他の形式で保存」→「サイズが縮小されたPDF」を選択し、Acrobatの互換性を新しいバージョンに限定することでファイルサイズを縮小する方法もある。効果を見ながら前述の方法と使い分けるとよい。ほかに「Webとモバイルに最適化」という機能もある。
作成者名などの情報を削除する
作成者名やPDFを生成した際の環境など、PDFに埋め込まれた非表示情報を取り除くには、「表示」→「ツール」→「保護」で「非表示情報を検索して削除」すればよい。「プロパティ」で見られる情報以外にも、検索しなければ分からない多数の情報が削除できる。
左綴じを右綴じに変更する
PDFを日本語書籍によく見られる右綴じに変更するには、「ファイル」→「プロパティ」→「詳細設定」の中にある「綴じ方」を「左」から「右」に変更してやるとよい。これにより、見開きページなどで最初のページが右側、次のページが左側に表示されるようになる。
見開きで表示されるようにする
- 参考記事:PDFを見開き設定のまま保存したい場合は
ビューアの表示設定にかかわらずPDFを見開きで表示できるようにするには、「ファイル」→「プロパティ」で表示される「開き方」で、「ページレイアウト」を「見開きページ」に指定してやるとよい。PCの画面上で本やカタログを表示するには必須と言っていい設定だ。
64ビット版Windowsでサムネイルを表示する
自炊ファイルをWindows上で閲覧する場合、64ビット版WindowsではPDFのサムネイルが表示されず、ファイル名以外での識別が難しくなる。こうした場合は「Adobe PDF iFilter 64」および「Fixes for 64-bit Adobe Reader preview handler and thumbnails」を導入するとよい。
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