「少人数チーム」でビジネスの壁を突破する:時代が求める「少人数チーム」の作りかた(2/2 ページ)
仕事の質や働き方が大きく変わりつつある今、仕事を効率よくこなすための“チームのありかた”に変化が現れています。スタッフが生き生きと働く元気な会社にするための“ベストなチームの形”とはどのようなものなのか――。その秘けつを紹介しましょう。
働き方は変わった、チームはどう変わる?
「仕事の質が大きく変わってきている」というのは、どういうことなのでしょうか。例えば大きな田んぼに人力で田植えをするような場面を想像してください。この場合、労力はかかりますが、やることは基本的に同じ作業の繰り返しであり、「量は多いけれど均質な仕事」を複数の人が分担して進めるイメージです。人によって多少の進みや遅れはあっても「多少」であり、AさんもBさんもやっていることは同じなので代替が効きます。
こうしたイメージの「仕事」については、昔の営業部門にありがちな「個人にノルマを課して『売ってこい』と叱咤(しった)激励(と称しつつ売れなかったら罵詈(ばり)雑言)」するようなマネジメントが通用しました。しかし、それが現代では事情が違ってきます。
今やメンバーはそれぞれ違う仕事をしていて、それが「連携」しないと価値を生まないのです。右も左も田植えをしているから自分も田植えをすればいい、というのは30年前の話。現代では単純な繰り返し作業は基本的に「機械化、自動化」が進んでおり、みんなが同じことする仕事は減っています。現代では、「Aさんがエンジンを作るならBさんはギアを作る」といったような分担をして、それが「連携」する必要があり、しかもその連携は毎回少しずつ違うのです。
田植えだったら、昨日のテレビ番組の話など「仕事に関係ないおしゃべり」をしながらでもできますが、現代の仕事は「毎回違う連携の調整」が必要になるため、密なコミュニケーションを図らなければ進みません。こうしたコミュニケーションが重視される現代のビジネス環境で必要なのが「少人数チーム」なのです。
「少人数チーム」で仕事のスピードを上げていく
ここでいう「少人数」の目安は5人以下程度と考えてください。というのも、「チームの人数が6人以上になるとマネジメントが難しくなる」という複数の証言があるからです。20人のチームでも特に問題なく回っているという声もあるため、絶対的なものとは言えませんが、例えばチームリーダーの経験者や独立起業を果たした経営者には「5人以下」を目安として語る人が目立つため、重要な参考値として知っておくべき数字でしょう。
それにしても、なぜ「少人数チーム」なのでしょうか? これに関する私の仮説は、「チームの人数が増えると合意形成に時間がかかり、応答が遅くなりやすいのではないか?」というものです。
ビジネスは何であれ、「顧客」の「要求」に応えることによって成り立ちます。この「要求→応答」にかかる時間が問題で、現代はここにあまり猶予がありません。ぐずぐずしていると他社に顧客をさらわれます。そこで機敏に合意形成をしてすばやく「応答」を返すためには、「チーム」は小さい方がいい――ということです(ただし、これはあくまでも私の仮説なので、肯定否定を問わずご意見募集中です)。
次回は「チームの最適人数」と、マネジャーとして「やってはいけない」ことを紹介します。
連載:時代が求める「少人数チーム」の作りかた
- 第1回:「少人数チーム」でビジネスの壁を突破する
- 第2回:会議もチームも飲み会も――うまくいくのは6人まで
- 第3回:多くの企業が陥る、リーダー不足という“勘違い”
- 第4回:「成果が出ない」「人間関係がうまくいかない」――この問題は少人数チームで解決できる
- 第5回:少人数チームでは、“リーダー”という言葉に惑わされてはいけない
著者紹介:開米瑞浩(かいまい・みずひろ)
IT技術者経験を元に、技術系の複雑な説明書、報告書などを分かりやすく書くスキルを技術者向けに教える研修事業を手がける。「エンジニア向け 図解思考再入門講座」「図解 大人の『説明力』」「ITの専門知識を素人に教える技」など著書多数。
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