「民主的なチーム」が崩壊するワケ:サイボウズ式(2/2 ページ)
政治における「民主主義」は、非常に画期的な発明であったと評価できます。しかし、ビジネスにおいて「民主的」であることは本当によいことでしょうか? 今回は、話し合い重視の雰囲気の良いチームが必ずしも成果を出せるわけではないという話です。
民主主義は効率をはじめから犠牲にしている
そもそも、「民主的」であることが本当によいことなのでしょうか?
確かに、政治における「民主主義」は、非常に画期的な発明であったと評価できます。権力が容易に暴走し、それによる悲劇がもたらされることは歴史をひも解けばよく分かります。そういう「1つの価値観による暴走を防ぐ仕組み」として、民主主義というシステム自体はとてもよくできていると言ってよいはずです。
しかし、そんな「民主主義」も完全無欠の制度というわけではありません。権力の暴走を防ぐために、民主主義は「効率」を犠牲にすることを選びました。話し合いを繰り返せばそれだけ時間がかかりますが、それでも1つの価値観が暴走して悲劇が起きるリスクを回避する選択をしたのです。
こう考えると、民主主義はあくまで国家統治の方法であり、そのままビジネスにおけるチームに援用すると問題があることが分かります。ビジネスにおいて「効率」は非常に重要なファクターです。ただでさえ変化の早い現代において、悠長になんでもかんでも話し合いをして決めるというやり方が、うまくいかないのはある意味当然と言えるでしょう。 「民主的なチーム」=「よいチーム」という等式は、当然ながら成り立たないのです。
理想のチームはどうあるべきか
では、チームにおいて、どういう形が理想なのでしょうか? リーダーの完全なる独裁で、メンバーをリーダーがコマのように扱えばいいのでしょうか?
確かに、この方法は効率という観点では最強かもしれませんが、果たしてそんなリーダーについていくメンバーがいるのか疑問です。リーダーがメンバーから信頼されなくなってしまったら、そのチームはやはり崩壊してしまいます。民主的すぎても問題ですが、超独裁的でもまた問題なのです。
このあたりのバランスは非常に難しいのですが、やはり重要なのはリーダーの果たす役割です。リーダーのすべき仕事は、メンバーの言いなりになることではありません。一方で、メンバーをコマのように強引に動かすことでもありません。ビジョンをメンバーに示し、そのビジョンをメンバー全員が納得するように働きかけること。それこそがリーダーの果たすべき役割だと僕は思います。
ここでいうビジョンとは、チームの未来におけるあるべき姿、理想状態のイメージのことです。ビジョンはチームにとっての旗印のようなもので、よいビジョンはチームメンバーの意思を1つにまとめ、各自が自走できる状態をつくります。
メンバーがリーダーの描いたビジョンを自分のものとして共有できるようになれば、「すべて話し合いで決める」ようなことはしなくて済むし、一方でリーダーの方針に従うことについて必要以上に不満を蓄積させることもありません。このようによいビジョンを描き、さらにそれを周囲に納得させられるかどうかが、リーダーの一番重要な能力と言っても過言ではないでしょう。
「民主的なチーム」は一見居心地がいいように感じますが、それは見かけに過ぎません。水面下では崩壊に向かって、着々と進んでいるのかもしれないのです。自分のチームが「民主的」になっていると感じたら、メンバーが共有しているビジョンは何か、リーダーはそれをメンバーに正しく示そうとしているかについて、一度立ち止まって考えてみるとよいでしょう。
「みんなでよく話し合うから、うちのチームはいいチーム」という考え方では、必ずしも成果は出せないのです。(日野瑛太郎)
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