部下が“やる気をなくす”ハッパのかけ方:上司はツラいよ(2/2 ページ)
やる気を鼓舞しているはずなのに、部下は「言われたことだけすればいい」「怒られない程度にやっておこう」という態度になっている……。これは“問題アリ”の危険信号。部下じゃなく、上司であるあなたの、です。
部下のモチベーションを上げるヒントは“意外なところ”に
厳しい状況の時こそ、主体的に取り組む姿勢を見せてほしい――。そんな思いを上司は部下にどう伝えればいいのか。
ここで思い出してほしいのが、「北風と太陽」という童話だ。
旅人のコートを脱がそうと、北風と太陽が競い合う。北風は強い風を吹きつけるが旅人のコートを飛ばすことはできない。なぜなら風が強くなればなるほど、旅人はコートの襟をきつく合わせて飛ばされないようにするからだ。しかし、太陽が温かい光を照らしたとたん、旅人はコートを脱ぐ。この話からは、モチベーションに関する大切な教訓が見て取れる。
脅しや恐怖で人を動かすことはできる。しかしそれは強制的なものであり、心からやりたいと思っていないので質を期待できるはずもない。さらに内面から湧き出るモチベーションに動かされているわけでもないため、長続きもしないだろう。つまり、ネガティブな状況から行動を起こさせることには、質と量の両面で、課題を残すのである。
これを踏まえて、冒頭の新任上司が部下に言うべき言葉を考えてみよう。
「たしかに売上が伸び悩んでいるけれど、今期の売上目標を達成することで、来期は新しいビジネスへ投資もできるようになる。そうすればもっと楽しく仕事ができるようになるはずだから、今は苦しいけど、皆で頑張ろう」
「今期の目標を達成することで、うちのチームの底力を内外にアピールしたいんだ。認められるためには、まずは結果を出すことだ。この苦境を一緒に乗り越えるために力を貸してほしい」
部下に話す前には、まず一呼吸おいて、「否定的なことを言おうとしていないか」と、確認することを習慣づけるといいだろう。これから起こりうる厳しい状況をそのまま伝えるのではなく、乗り越えるための方法をきちんと伝えているか、ただダメというのではなく、その背景と原因を説明して改善策につなげる話し方をしているか――。このように意識して話すようにすれば部下も共感し、ともに頑張ろうと思ってくれるはずだ。
あるマネージャがこんな話をしてくれた。
「上司の仕事は、部下をその気にさせること。ホントに大変だけど、地道にやっていくしかないんだよ。人の行動は、心から納得しなければ変わらない。あなたはこのままじゃダメだよ、と言っても、たいていの人は、自分は“ちゃんとやっている”と思っているから、変わるのには時間がかかる。“上司命令”という伝家の宝刀を抜くことはできるけれど、それは取るべき手段がなくなった時のこと。強制しても人は動かないし続かないんだ」
大変だなぁ、上司。
上司は、自分のモチベーションも気にかけなければならないが、部下のやる気にはさらに心を砕くべき立場にある。「北風上司」ではなく、前向きな言葉を上手に使い、部下をその気にさせる「太陽上司」でありたい。
著者プロフィール:田中淳子
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。
1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。
- 著書:最新の著書は「田中淳子の人間関係に効く“サプリ”」。ほかにも「ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック」(日経BP社)、「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)、「はじめての後輩指導」(日本経団連出版)、「コミュニケーションのびっくり箱」(日経BPストア)などの著書がある。
- @IT自分戦略研究所の連載「田中淳子の“言葉のチカラ”」はここから。
- シゴトに効く姉妹連載「そのひとことを言う前に」はここから。
- ブログ:「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」
- Twitter:@TanakaLaJunko
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