2月21日、NTTドコモがプリペイド携帯電話から撤退する方針を打ち出した(2月21日の記事参照)。プリペイド携帯が振り込め詐欺をはじめ携帯電話関連犯罪の温床になっている中で、業界最大手として今回の措置は致し方ないものだろう。ドコモは社会に対する責任をしっかりと果たしたと言える。
むろん、プリペイド携帯そのものが悪いわけではない。海外には多くの成功事例があり、日本でも携帯電話利用の少ない低ARPUユーザーを中心に一定のニーズがある。日本のプリペイド携帯市場を積極的に開拓したボーダフォンが、「便利だと思って使っているユーザーがいる」と主張している事もまた当然だ。
だが、プリペイド携帯が悪用されるケースがある以上、徹底的なセキュリティ向上か、サービスそのものの廃止をしなければ、悪いイメージはなかなか払拭できない。
セキュリティ向上で乗り切るならば、課題は「継続的な本人確認」である。昨年11月30日、携帯電話4社は新規加入時の本人確認強化と既存ユーザーの再確認の方針を打ち出したが(2004年11月30日の記事参照)、真の問題は「名義貸し」のように実際に本人確認を受けたユーザーと、実際上の利用者が異なる場合だ。これを防ぐには、プリペイド携帯電話のチャージのたびに本人確認をする仕組みが必要がある。あらかじめ登録した銀行口座からのチャージを行う、プリペイドカードをキャリア直営店のみの販売にして購入時に運転免許証や住民基本台帳カードなど写真入りの身分証明書の提示を求めるなど、本人確認の徹底が必要だ。「あまり厳格な本人確認をするとユーザーの利便性を損なう」(キャリア関係者)という意見もあるが、犯罪者以外でプリペイド携帯の必要性や魅力をしっかりと認識しているユーザーは、犯罪抑止のためのセキュリティ強化には協力してくれるはずだ。
一方、ドコモのようにサービスそのものを廃止にする場合は、プリペイド携帯に代わるサービスの提案が必要になるだろう。プリペイド携帯電話を求める層は、シンプルなサービス構成で、維持費の安さを求めている。しかし、2001〜2002年頃からポストペイド携帯電話サービスの料金プランは「パックプラン化」が進み、料金プランの選択肢が減少、特に「あまり発信しないユーザー」向けの維持費の安いプランが少なくなっている。例えばドコモの料金プランでは、movaで最も安いプランが月額3675円の「プランB」、FOMAだと月額4095円の「FOMAプラン39」になる。ドコモが推奨する、利用金額に上限を設けるプラン「リミットプラス」は月額4515円である。いちねん割引やファミリー割引を併用したとしても、プリペイド携帯の維持費と比べれば割高だ。プリペイド携帯を廃止する方針を打ち出した以上、「電話をあまりかけない」人向けの基本料の安いプランを再び拡充する必要があるだろう。
ある意味、日本におけるプリペイド携帯のニーズは、キャリアが低価格料金プランを相次いで廃止した結果にある、という見方もできる。セキュリティを強化するのか、それともポストペイドで代案を用意するのか。日本における低ARPUユーザー向けサービスの在り方まで掘り下げて考える必要がありそうだ。
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