6月6日、東京都港区で、モバイルマーケティングカンファレンス2005(6月6日の記事参照)が開催された。当日最終となるセミナーでは「モバイルFeliCaが変える生活の未来」と題して討論が行われた。
「(時代が)マスマーケティングから、ダイレクトマーケティングへ変わってきている。それができる、新しいツールが必要だし、それができる時代になってきている」と述べるのは、全日本空輸顧客マーケティング本部の内田晶夫氏。
同社では1997年から、電話で航空券を予約しておき、空港でピックアップするサービスを提供していたが、当時はほとんど利用されなかった。しかし今では「PCや携帯から航空券を予約し、空港でチケットをピックアップ」という習慣はすっかり根付いており、現在では、搭乗者のうち半数から3分の2くらいが、このサービスを利用しているという。
ANAマイレージクラブ(飛行機に乗ってマイルを貯める)も1997年から開始し、現在会員数は約1300万人。このうち、約1%が年間10万マイル以上飛行機に乗る会員で「プラチナ」「ゴールド」「ダイヤ」などと称される。「1%しかいないこの層の、ネットとかコミュニティへの参加率が、とても高いのです。こういう顧客に、細分化したサービスを提供したい」
「マスの顧客に対して提供するのではなく、もっと細分化し、顧客に応じたサービスをプッシュ型で提供する……そのようにサービスの提供の仕方が変わってきています」と内田氏はいう。
当初、飛行機に乗ったマイルを貯め、次に飛行機に乗るときに利用する……というシンプルな仕組みだったマイレージサービスは、「ホテルに泊まれる」「レンタカーに使える」と徐々にサービス対象を拡大していった。マイレージサービスの魅力を高める取り組みとして同社が重視しているのが他社とのコラボレーションだ。「自社のサービスだけでは提供できるものに限りがある。マイレージを共通化・共有化することで、第三の通貨のように価値のあるものになる」
成功事例として紹介されたのが、同社のマイルと楽天のスーパーポイントとの乗り入れ(2004年3月25日の記事参照)。全日本空輸と楽天は共同で、「ANAマイレージカードの会員になると、楽天スーパーポイントが500円分加算される」というキャンペーンを行った。
当初全日本空輸では、ANAマイレージカードの会員は、PCや携帯のサービスを使いこなしている人が多いため、楽天の利用者層と重なるだろうと予想していたが、フタを開けてみると、予想外に顧客は重なっていなかった。結果として、全日本空輸、楽天共に新規顧客を獲得できたという。
マイレージが第三の通貨、という方向性をさらに進めたのがEdyの採用だったという。「他社とのコラボが進んでオープン化してくると、どこでも使えるようになり、(マイレージが)バーチャルマネー、共通の通貨のようなものになる。それならば、より通貨性の強いもの、電子マネーに変えやすいものにしようという意識があったので、早めに参入したかった」と話した。
今後はどう展開していきたいか、という問いに対し「自社が得た顧客についてのデータを、上手く他企業と連携して横に渡せると、さらに一歩進めそう。膨大なデータをうまく集約して、使いやすい形にすることが必要でしょう」と答えた内田氏。利用者としての立場で考えたときに、自分が受けたいと思うサービスをどのようにビジネスにしていくかが大事、とまとめた。
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