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» 2005年09月15日 09時19分 公開

韓国ケータイ成功の鍵は、ブランド戦略 神尾寿の時事日想

NTTドコモ、KDDI、ボーダフォンの3社共に韓国メーカー製端末の採用を決定、日本市場に韓国製の携帯電話がいよいよ本格的に上陸しようとしている。しかし日本市場で韓国メーカーが成功するためには、確かなブランド戦略が必要だ。

[神尾寿,ITmedia]

 8月29日、+D Mobileに「Pantech & Curitel」のインタビュー記事が掲載された(8月29日の記事参照)。韓国メーカー製の携帯電話は、ドコモ、KDDI、ボーダフォンが採用を表明しており、Pantech & CuritelはKDDIと手を組む。韓国勢は世界シェアが高い事もあり、注目している読者も多いはずだ。

 詳しくはインタビュー記事に譲るが、Pantech & Curitelは日本市場の特性について研究し、受け入れ側であるKDDIの協力も得て、「日本人向け」の端末を用意する方針のようだ。特にデザインとクオリティ、アフターケアにしっかりと目を向けている点は評価できる。KDDIに限らず、日本のキャリアは韓国をはじめとする海外メーカー製端末を「コストが安く、価格競争力の高いもの」と公言してはばからないが、“安さだけ”を武器に参入すれば、ユーザーによいイメージが根付かない。日本のメーカー以上に、韓国をはじめとする海外メーカーはあらゆる面での「品質の高さ」を訴えていかなければならないだろう。

一貫したブランド戦略が必要

 しかし、韓国メーカーが日本市場で成功するには、「価格と品質」だけでも足りないと思う。コンシューマー主導で発展し、身につける存在である携帯電話は、ライフスタイルツールという側面を持つからだ。そこには合理性を超えた価値観、ブランドという要素が加わる。クルマや時計、ファッション分野ほど前面に出ていないが、携帯電話でもキャリアやメーカーのブランドに対する信頼やイメージが、消費者の購入意欲を左右する。

 誤解を恐れずに言えば、Pantech & Curitelをはじめとする韓国メーカーにとって「価格と品質」がよいというのは、“スタートラインに立っただけ”という段階にすぎない。日本のメーカーは、日本の携帯電話市場の成長とともに「ユーザーとの信頼関係・ブランドイメージ」を醸成してきたが、韓国メーカーにはそれがない。まさにゼロから、信頼関係とブランドを作っていかなければならない。

 今回のインタビュー記事では、日本におけるPantech & Curitelのブランド戦略はあまり語られなかった。しかし、実際に日本に参入する際には、明確かつ一貫したブランド戦略が必要だ。そして、それは日本メーカーよりもプレミアムなブランド位置でなければ、今後の発展が厳しいと思う。LG電子やサムソンも同様である。

 同じく海外メーカーとして、日本市場の本格参入を目指すフィンランドのノキアは、ブランドの重要性を熟知している。同社は各キャリアとの協力体制を敷きながらも、欧州ブランドのイメージを打ち出し、「クルマでいえば、(身近だがプレミアム感がある)フォルクスワーゲンのようなイメージを狙う」(ノキア・ジャパン関係者)という。UIの一部や言語環境などは日本市場にあわせながらも、ノキアとしての文化やリテラシーをユーザーに理解してもらう事で、ブランド構築・維持をする戦略だ。欧州ブランドは、クルマや時計、ファッション分野がブランドイメージ作りで成功している。昨今ではデザイン家電分野でも注目されており、それらの好影響を受けやすいというのは、ノキアにとって有利な点だろう。

“高くても買いたいプレミアムブランド”になれるか

 クルマの世界に目を向けると、「プレミアムブランド」になれなかった海外メーカーは、日本市場で苦戦している。“ドイツ御三家”と呼ばれるメルセデスベンツ・BMW・フォルクスワーゲンを筆頭に、アウディ、プジョー、アルファロメオなど欧州車メーカーはブランドイメージの高さを背景にして、好調もしくは堅調だ。しかし、その一方で、プレミアムブランド化で失敗したヒュンダイなど韓国車メーカーは、日本市場でのシェアが低い。ヒュンダイは世界販売ランキングで一部の日本車メーカーを超えており、コストパフォーマンスの高さに定評があるにも関わらず、日本でのブランド力が低く、結果として日本市場では苦戦を強いられているのだ。

 世界シェアは高い韓国の携帯電話メーカーだが、ブランド戦略で失敗すれば、日本のクルマ市場におけるヒュンダイと同じ苦戦を強いられる可能性がある。日本キャリアの期待に反するが、韓国メーカーが日本市場で成功するかの鍵は、名実ともに「高くても買いたいブランド」として消費者に受け入れられるかにある。

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