今後の携帯電話に必要な「正しい時刻」:神尾寿の時事日想
KDDIに続き、ドコモも自動時刻補正機能を搭載した携帯電話を発表した。今後、携帯電話がさまざまなデジタルデータを扱っていくようになると、正確な時刻は必須になっていくはずだ。
5月17日、NTTドコモが「901iS」シリーズが発表された(5月17日の記事参照)。本シリーズでは、かねてから公言されていた「おサイフケータイ」機能の標準装備が行われるなど、マイナーチェンジとして着実な機能向上、進歩をしている。
901iSシリーズについてのレポート、総評は本誌記事に譲るが、同シリーズの中で筆者が注目したのが、P901iS/F901iS/D901iSに搭載された「自動時刻補正」機能だ(5月17日の記事参照)。 これはネットワーク側の情報を参照し、携帯電話の時計を常に正しく保つもの。KDDIグループのauでは、基地局のGPS時計を使うことで、同様の機能をすでに実現している。
自動時刻補正機能は携帯電話の役割が拡大する上で極めて重要だ。なぜなら、デジタルデータが信頼性を得るための“よりどころ”が正しい時刻だからだ。特に携帯電話が企業の情報システム、ビジネスに浸透していくためには、端末における時刻の自動設定・補正は必須と言える。
例えば、必要性が分かりやすいのが、産業廃棄物処理業者における携帯電話の活用だ。産廃処理をめぐっては不法廃棄・不正処理防止の観点から、廃棄物トレーサビリティの整備・導入義務付けへの動きが高まっているが、その際の正当処理完了レポートとしてカメラ付き携帯電話の「写真」機能が検討されている。しかし、デジタル写真が「本物」だと裏付けるには、画像ファイルに埋め込まれる日付時刻情報が正当でなければならない。端末の自動時刻補正だけでなく、時刻設定の手動変更が不可能な機能が必要だ。
コンシューマー用途でも、正しい時刻の必要性はある。DRMだ。
着うたフルなど携帯電話向け音楽配信サービスでは、配信後のコンテンツの再生期間を設定できるDRMを用意している。「ダウンロード後3日間」や「音楽CD発売日まで聴ける」コンテンツを配信できるのだが、その期間設定を裏付けるには正しい時刻情報が必要だ。この場合、再生する都度、基地局時計もしくはDRMサーバーに問い合わせる手法もあるのだが、それだと携帯電話が圏外の時は再生できないことになる。理想は端末側の時刻が自動設定され、ユーザーが手動で変更できないことだろう。
例えば、先に発表されたトヨタの「G-BOOK ALPHA」の音楽配信サービス G-SOUNDでは、車載器側のGPS時計を用いて、再生期限付きコンテンツの管理を行っている。
過日、衛星測位システム協議会の西口浩事務局長とお会いしたのだが、その際に西口氏が語ったのが、今後のIT社会において「正しい位置情報、正しい時刻情報が社会の基盤になる」という事だった。筆者もまったくの同意見である。
最も身近な情報インフラとなった携帯電話が、ビジネスインフラ/社会インフラとなるためには、正しい位置情報と時刻情報の取得機能は必須だろう。また端末側でも、エンドユーザーが位置情報や時刻情報を変更・改ざんできない仕組みを用意する必要がある。
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