「固定」「移動」を気にしない世界へ──KDDIのウルトラ3G構想
「“固定”も“移動”も関係なく1つの網の中で、その時々に応じて最も適した通信形態を提供する」──。これがKDDIが推進するウルトラ3G構想だ。
固定網も移動網も自社で持っているKDDIだからこそ──ともいえる、次世代ネットワーク構想が打ち出された。新旧の携帯電話網や各種無線規格、有線網を相互連携させ、1つの網の中で統合されたサービスを提供しようというKDDIの「ウルトラ3G」だ。
ウルトラ3Gは、携帯電話用のバックボーンネットワークを中心に据え、ADSLやFTTHなどの有線ネットワークと無線ネットワークをシームレスに統合するもの。これまで携帯電話専用だったバックボーンネットワークをIPベースで新たに構築、「CDN」と呼ばれるQoSを実装したIPベースの有線用コンテンツ配信ネットーワークをアップグレードさせることで相互接続を可能にする。
KDDIの小野寺正社長は、この構想の利点として「“固定”も“移動”も関係なく1つの網の中で、その時々に応じて最も適した通信形態を提供できる」ことを挙げた。
この構想は、これまで語られてきた第1世代から第2世代、第3世代を経て第4世代へ──という携帯電話システムの直線的な進化の流れとは一線を画したものだという。
「第4世代といわれる高速化された無線システムが(現行のEV-DOの延長線上に)ダイレクトに結びつくというのが一般的な考え方。だがKDDIは、現行の第3世代や(2006年にもサービス開始予定の)EV-DO Rev.Aなどと各種無線通信システムに、ADSLやFTTHといった特定のアクセスも含めた固定・移動の連携統合を図る」。つまり、次世代携帯電話システムは、ウルトラ3Gの構成要素の1つという位置付けになるわけだ。
「ウルトラ3Gは、さまざまなアクセス手段を包含しつつも、おのおののアクセス手段には依存しない、固定・移動を統合したネットワークシステムになる」
このような考え方は「Beyond 3G」と呼ばれ、世界各国で検討がなされているが、ウルトラ3Gはこの考え方をKDDIなりにモディファイしたものだと小野寺氏は説明した。
多様なアクセスをまとめ、MMD準拠のIPv6ネットワークを構築
ウルトラ3Gの移動体網には、3GPPで規格化が進められているサービス提供基盤の「MMD」を採用。MMDとはオールIPのコアネットワークを使い、複数のマルチメディアサービスを連携させたり、利用者の状況や好みに応じてサービスを切り替えるといった、多様なサービスを提供可能にする次世代移動網を指す。
パケットベースのコアネットワークにはIPv6を使う。「数千万台の携帯端末を捌くためには今のIPv4では無理。無尽蔵ともいえるIPアドレス空間を持つIPv6を採用する。これにより1つの端末に多数のIPアドレスを付与して、さまざまなサービスを提供したり、セキュリティを強化したりできる」
同社が既に構築しているCDNを次世代に進化させ、かつMMDの仕組みをその上に載せることで新サービスを提供するとしている。
ウルトラ3Gの実用化の時期について小野寺社長は、「次世代CDMA2000が2009年とか2010年になるかと思う。ウルトラ3Gについては、次世代CDMAがあろうがなかろうがKDDI単独で進めるので、ここはもう少し早めに実現していきたい」と話すが、時期については「明確に言える段階ではない」と言うに留めた。
当面の課題については、「MMDというマルチメディアドメインを、今、作り始めるところ。さまざまなアクセス系統とともにネットワークを作っていくところが大きな課題」だという。「従来の1Xの携帯電話網の無線系は、回線交換網ですべてやっている。ここをネットワークゲートウェイを経由してMMDとうまくつないでいかないと、既存ユーザーとの接続ができないようなことになりかねない。この網をきっちり作るのが大きな課題」
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