固まってきた、スーパー3Gの技術概要:ワイヤレスジャパン2005
3Gの周波数帯を使いながら、4G向けの技術要素を盛り込んだスーパー3G。ドコモが現在の技術的状況を話した。
NTTドコモが現行の3G(W-CDMA)と4Gの間の“架け橋”として進めている(7月23日の記事参照)、スーパー3Gの技術的な概要が見えてきた。
同社IP無線ネットワーク開発部長の尾上誠蔵氏が7月15日、ワイヤレスジャパン2005で講演した。ちょうど1年前のワイヤレスジャパン2004で、一般にスーパー3G構想を披露して以来、初めての技術アップデートとなる。
「ある程度、具体的なところで技術のディスカッションが進んでいる」と尾上氏。スーパー3Gのスペックを2007年6月目処に提案する流れになっており、技術仕様も絞られつつある。
通信速度が上がり、容量も増加するスーパー3Gだが、尾上氏が重視するのは遅延の解消だ。「(現在の携帯向け通信方式は)無線効率を求めて遅延が出る。それが制約になっている。そこを含めて検討したい」
接続遅延は、「アイドルからの場合で100ミリ秒以下、ドーマント状態からでは50ミリ秒以下。かなりcharエンジングなターゲットだ」と尾上氏。伝送遅延については、「5ミリ秒以下。今の基準は10ミリ秒なので、それよりもかなり小さい」(尾上氏)。
通信速度は、電波状態が悪くなるセルの周辺部分でHSDPAの2〜3倍。平均では3〜4倍をターゲットとする。具体的にはドコモは30M〜100Mbpsを想定している。
利用する周波数幅は複数想定する。ドコモ自身は5M〜10MHz幅を想定していたというが、細切れの周波数を利用するオペレータも存在する欧州の事情を勘案し、1.25MHz、2.5MHzも含めて検討に入った。
下りはOFDM、上りはシングルキャリア
こうした目標スペックを満たすために、どんな通信方式を使えばいいのか。
提案としてはFDDが3方式、TDDが3方式、シングルキャリア(1つの搬送波)からOFDMまでさまざまなものが出されたが、「下りはOFDM、上りはシングルキャリアでW-CDMAの拡張。これをサポートする人が、現時点では一番多い」(尾上氏)。
最新通信方式の多くが採用するOFDMだが、携帯電話の上り方向の場合は現在と同じシングルキャリアが有望だという。「アンプのリニアリティなどを見ると、マルチキャリアのOFDMは苦しいだろう」(尾上氏)。複数の搬送波を使うOFDMは緻密なスペクトル分布を持つため、直線性(リニアリティ)のよいパワーアンプが求められる。さらにダイナミックレンジも求められ、消費電力が大きくなる傾向にあるからだ。
ドコモがスーパー3Gで想定するこの方式は、同社が4G向けに開発を進めているものに近い。4Gでは、下りに可変拡散率を用いたOFDM、上りにシングルキャリアを用いる。マルチアクセスにはTDMAを想定している(2004年12月17日の記事参照)。
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