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おサイフケータイ対応マンション、入居者の本音を聞く神尾寿の時事日想(2/2 ページ)

FeliCaを使った安全で便利な電子錠。導入済みのマンションで、実際におサイフケータイを鍵として使っている住民の意見を聞いた。

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課題は「対応端末/エリア」と「設定の煩雑さ」

 おサイフケータイ対応マンションに住む2人は、電子錠サービスに対する満足感は高い。不満はないのだろうか。

 まず末長さんがあげた不満点は対応端末のバリエーションだ。「(おサイフケータイは)対応している端末が少なく、(ハイエンドの)高い端末しかない。子ども向けのおサイフケータイがないのが大きな不満です。高い端末しか対応してないから、子どもはカードキーしか持たせられない」(末長さん)

 沖田さんは、おサイフケータイが利用できる場所の少なさが不満だと話す。「自宅では毎日使っているわけですが、それ以外の場所では使える場所がほとんどない。東京ではJR(東日本)がおサイフケータイに対応するそうですが、九州ではそういう話が全然ない。おサイフケータイが使えるお店も少ない。(結果としておサイフケータイを)鍵としてしか使ってないのが現実です」(沖田さん)

 「使える場所の少なさは私も感じます。(ジョイナス吉塚ではマンション)下のお店はEdyが使えるんですけど、それ以外は使える場所がない。ポイントカードとか、どんどんおサイフケータイ対応にしてほしいのに」(末長さん)

 また、今後の課題になりそうだと筆者が感じたのが、kesakaサービスの鍵アプリの初期導入や設定に関するサポートだ。

 ふたりに詳しく聞くと、kesakaサービスの鍵アプリの設定は、入居時にKESAKAシステムの担当者にしてもらったのだという。これは、ジョイナス吉塚とアテネOP博多がおサイフケータイ電子錠の初期導入物件だからこその対応だろう。今後の入居者ケア/サポートは誰がするのか、また入居者がおサイフケータイを機種変更した場合の鍵アプリの移行手続きをはたしてユーザー自身ができるのか、といった課題は残されている。

“日常的に使える場所”が着火点になる

 今回インタビューをした2人は、おサイフケータイ対応マンションに対する満足感が高く、「普通の(鍵の)マンションにはもう住めない」(末長さん)という点で意見が一致していた。入居後に、FeliCaカードからおサイフケータイ利用に切り替えるユーザーの多さからも、自宅など“日常的な場所”がおサイフケータイ対応になることは、非常に強い訴求力を持つことが分かる。

 そして、「日常的な場所」でおサイフケータイ利用が始まると、ユーザーのニーズは急速に拡大する。

 取材の中で、2人から熱気ある意見・要望・不満が飛び出したのが、「おサイフケータイを家以外で使いたい、(鍵以外の)こんなことにも使いたい」といった部分だったからだ。おサイフケータイの“日常的に使える場所”は、いわば着火点であり、ここに火が付けばユーザーニーズは一気に燃え上がる。

 先日発表された「エントリーロック」(7月20日の記事参照)や、来年1月にスタートするJR東日本の「モバイルSuica」(参照記事12)などは、多くのユーザーにおサイフケータイ利用のきっかけを与える着火点になるだろう。しかし、おサイフケータイの端末やサービス提供体制、キャリアのサポート部分には改善すべき課題も多く見られた。本格的な普及拡大期が始まる前に、キャリアや端末メーカーはおサイフケータイのリファインを行う必要がある。

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