ボーダフォン版FeliCaに見えた“復活の兆し" :神尾寿の時事日想
初のFeliCa対応端末を含む4機種を発表したボーダフォン。「使いやすさ」へのこだわりや、ユーザーニーズに真摯に応えようとする姿勢が感じられる端末群に、筆者はボーダフォンの“復活の兆し”を見た。
9月20日、ボーダフォンが2005年秋冬モデルを発表(9月20日の記事参照)。同時に「ボーダフォンライブ! FeliCa」の内容を明らかにした(9月20日の記事参照)。詳しくはレポート記事に譲るが、今回、ボーダフォンが「おサイフケータイ」の商標に参加し、モバイルFeliCa市場に参入したことにより、おサイフケータイは既存キャリアのプラットフォームとして定着することが確定した。2006年以降、ボーダフォンもおサイフケータイ機能を主力ラインアップに標準搭載する方針だ。
ボーダフォンライブ!FeliCaのサービスを見ると、その内容は他社と基本的に同じだ。おサイフケータイはプラットフォーム色が強いので、これは当然であるのだが、その中でも“ボーダフォンらしさ”を出そうという意気込みを感じる部分があった。独自機能の1つである、リーダー/ライターからの端末機能呼び出しである。
この機能では、おサイフケータイを“かざす”という行為をUIとし、携帯電話とリアル店舗のコミュニケーションを発生させる。基本コンセプトはドコモの「トルカ」と同様だが、利用可能な機能・応用範囲はボーダフォン版の方が多い。ボーダフォンはおサイフケータイの実装にあたり、「コミュニケーション機能(としての側面)にもこだわった」(ボーダフォンプロダクト・サービス開発本部E2Eサービス統括部コマースサービス部の尾崎大輔氏)という。トルカと同じく、リーダー/ライターと携帯電話のコミュニケーションが増えることは、新たなサービスにつながるだけでなく、使いやすさ向上に効果がある。
ボーダフォンがドコモと同様の“こだわり”を、独自機能として用意したのも印象的だ。同社は昨年、ボーダフォングループのコンバージェンスプログラムによって「世界共通UI」の端末を投入し、その使いにくさから日本ユーザーの痛烈な反発を受けた(4月18日の記事参照)。しかし、J-フォン時代を振り返れば、同社はドコモに比肩する「使いやすさ重視」のサービス/端末作りをするキャリアだったのだ。その上で独自性のあるコミュニケーションサービスを積極的に投入したことから、“J-フォンブランド”は女性や若年層を中心に多くのユーザーに親しまれていた。
筆者はボーダフォンライブ!FeliCaを見て、ボーダフォンが「使いやすさ重視」と「新たなコミュニケーションの提案」という、かつての美点を取り戻しつつあると感じた。おサイフケータイ以外の新モデルを見ても、ユーザーニーズに真摯に応えようという姿勢が伺える。
ユーザーの信頼を取り戻すため、また来年のMNPに向けて、やるべき課題はまだ多いだろう。だが、ボーダフォンは日本市場での復活にむけて、第一歩を踏み出した。期待を持って、今後の動向に注目したい。
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