「パラダイムシフトを見破るのなんて、簡単だ」:短期集中連載・夏野さんに聞いてみよう(2/2 ページ)
10月5日、都内のセミナーにドコモの夏野剛氏が登場した。同氏が主張する携帯業界の「3つのパラダイムシフト」とは何なのか?
「こういうことをいうとNTTグループとしては嫌がられるが、Yahoo!BBの勝因はモデムを配ったこと。技術的な問題、例えば(NTTグループが標榜する)光ファイバーがなんとか……というのはブロードバンドを普及させる上であまり意味はない」。ソフトバンクの孫正義社長が、市場が拡大する前にいち早くADSLモデムを無料提供し、シェアをとったことが成功につながったとの見方だ。
夏野氏がいうパラダイムシフトの時期を見つけ、そこで勝負をかけられれば、ビジネスで勝てることになる。そして夏野氏は、「パラダイムシフト(が始まっているかどうか)を見分ける方法は、割と簡単」と強気のコメントをする。
その方法はシンプルだ。「業界の関係プレイヤーが、増えているかどうか見ればいい」。携帯業界にしてもブロードバンド業界にしても、ある時期を境にゲーム関連事業者やソリューションベンダーといったプレイヤーが飛躍的に増えた。これが、パラダイムシフトの起きている時期だという。「そしてもう1つは、他社が追随するということ」
夏野氏は、いま携帯業界は第3のパラダイムシフトを迎えていると呼びかける。夏野氏がいま最も注力しているサービス、iモードFeliCaによって携帯はさらなる進化を遂げるとの主張だ。“FeliCaでドコモがどう収益を上げるのか分かりづらい”という批判は根強いが、確かにFeliCaによって関連プレイヤーは増え、ほかのキャリアも追随している。
なお、ブロードバンド事業者などの携帯の新規参入でも「業界のプレイヤーは増えている」ことになるが、彼らについては夏野氏はマーケットチャンスはそれほどないと見る。
「モデムを自分で作って配った後は、携帯に来るという。ただしブロードバンドと携帯では構造が違うので、そんなに上手くはいかないだろう。反対にドコモが固定網の業界に入っていくというのも、まあ……だめだろう。これはFMC(Fixed Mobile Convergence:携帯と固定の融合)のとらえ方にもよるし、NTTグループとしてどう携帯と固定を融合できるかは考えるが」
夏野氏は、新規参入にはシェアを渡さないという意識を強くにじませながら、こう話す。「そんなに上手くいくんだったら、僕が先にやっていますよ」
関連記事
- 短期集中連載・夏野さんに聞いてみよう 「新規参入が値下げ競争にくるかぎりは、脅威じゃない」
10月4日、都内のセミナーにドコモのキーマン、夏野剛氏が登場した。同氏が話したドコモの戦略や、将来展望などを複数回に分けて掲載する。 - 短期集中連載・夏野さんに聞いてみよう 「ドコモは本当にマーケティングが下手」
10月4日、都内のセミナーにドコモのキーマン、夏野剛氏が登場した。同氏が明かすドコモのマーケティング戦略とは、どんなものだろうか。 - 今年も吼えた!〜携帯業界キーパーソンの発言を振り返る
携帯カメラのメガピクセル化、着うたのブレイク、初の定額高速データ通信サービス登場、3G時代到来の予兆──。さまざまな出来事が起こり、話題にこと欠かなかった携帯電話業界。キーパーソンたちも吼えまくった一年でした。 - 2002年,携帯電話は機能の“取捨選択”が勝負になる──ドコモ,夏野氏
次から次へと新機能が搭載されてきた携帯電話だが,2002年はそれも曲がり角を迎えそうだ。今後は過度な付加機能が価格としてユーザーに跳ね返ってくる可能性があるからだ。ドコモの夏野部長は,これからは機能の“取捨選択”がポイントになると予測する。 - キャリアの主導でiモードマーケットは生まれた──ドコモ夏野氏
iモードの企画担当部長である夏野氏は,iモードが日本で成功した理由として,通信キャリア主導でコンテンツと端末のあり方を決めてきたことを挙げる。オープン化が叫ばれ,iモードが海外に進出するなかで,“キャリア主導”は今後どんな方向に進むのだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.