「比率の低い出資では意味がない」KDDI小野寺社長、ドコモのフジテレビ出資を批判
2005年を振り返った小野寺氏は、NTTグループ再編への動きを痛烈に批判。また、ドコモがフジテレビの株を買収したことについても言及した。
12月21日、KDDIの小野寺正社長は定例会見を行い、2005年を振り返っての所感を述べた。最も長い時間が割かれたのが、NTTグループの再編問題について。次いで“放送と通信の融合”についての見解だった。
NTT再編の動きを痛烈批判
「2005年は、次の飛躍に向けて第一歩を踏み出した年だった。来年は事業成長に向けて、第2ステージを踏み出す」と2005年を締めくくった小野寺氏。2005年に行った施策として、有線・無線の通信網をシームレスに接続するウルトラ3G構想(6月15日の記事参照)、下り速度が現在の最大2.4Mbpsから3.1Mbpsに高速化するEV-DO Rev.Aを2006年中に導入すると発表したこと(6月15日の記事参照)、ツーカーの吸収合併(7月25日の記事参照)などを挙げた。
FMC(Fixed Mobile Convergence、固定とモバイルの融合)推進のため、KDDIは2005年、メタルプラスなど固定系サービスの拡販に力を入れていた。携帯と固定の請求書の一本化(3月16日の記事参照)も、FMCをにらんでの施策の1つだ。
そんなKDDIにとって、2005年後半のトピックとして大きかったのが、パワードコムを合併し、東京電力と包括提携を決めたことである(10月13日の記事参照)。東京電力グループとの包括提携を結んだ最大の目的が、NTTグループへの対抗軸を形成するためのものであることは、KDDI自身が明言していることだ(KDDIのプレスリリース)。
それから長い長い時間をかけ、小野寺氏はNTT再々編への批判を行った。「NTT法(日本電信電話株式会社法)によってNTT東西を分割した結果、当初NTT西日本は赤字で『値上げもやむを得ないかもしれない』としつつも、企業努力で黒字に転換した。また、NTTドコモの企業努力の結果生まれたのがiモード」と、NTTグループを分割したからこそ生まれた成果だとし、NTT東西とドコモが協力し、NTTコミュニケーションズにネット事業を統合するという方針を打ち出したNTTの和田紀夫社長を批判(11月9日の記事参照)。「NTTグループは構造分離ができていない。人的交流も続いている。これは再びNTTグループを1つにまとめる動きであり、これでは分離以降の(NTTグループ各社の)努力も水泡に帰すのでは。人、モノ、情報、カネの分離がまず重要だ」と力説した。
「99年のNTT法をきっちり守る。これは最低限のラインだ。NTTコミュニケーションズとうちが競って負けるなら仕方がないが、『NTT東西に迷惑がかかるから』といって(商談を)断られるケースがある。名前は出せないが、しかしこれが現実だ。資本分割をして、きっちり競争していった方が、地域の人々のためにも、そしてNTT各社の社員のためにもなるのではないか」(小野寺氏)
テレビ局はコンテンツプロバイダー
NTTドコモがフジテレビに2.6%出資することを正式発表したことについて(12月21日の記事参照)も触れた。
「安い出資――いや、金額自体は高いのだろうが、比率の低い出資では意味がない。KDDIでもテレビ局との提携は進めていきたい考えだが、出資はしない方向だ。テレビ局というのは、いうならばコンテンツプロバイダーであり、(出資するなどして)コンテンツプロバイダーをクローズドにすることには意味がない。出資しなくてもいい形で提携を進めることはできるはず」(小野寺氏)
ワンセグ対応端末「W33SA」(10月24日の記事参照)を発売したことに絡めて、「なぜ放送を携帯電話に入れるのか。一番必要だと考えているのは災害時だ。大規模な災害が起こったとき、どうしても通信網は弱い。その時、最も有効なのはやはり、ラジオであり、テレビだと思う。自分が気になる地域の情報を、放送で知ることができる。『放送と通信の融合』は、災害時に一番有効」と話した。
また、ソフトバンクとヤフーがインターネットによる動画配信事業を本格化したことについては(12月19日の記事参照)、「PCでの動画再生に対して、エンドユーザーがどれくらい魅力を感じているのか、少々疑問。コンテンツ配信ならば、(PCではなく)テレビへの配信を考えているので、セットボックスが必要になるだろう。 HDTV(High Definition TeleVision)に対してどうするかについては考えている」とコメントした。
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