流行を作る、携帯電話のニックネーム:韓国携帯事情
「チョコレートフォン」「横本能フォン」「オモナフォン」──。2005年に韓国で流行した携帯の“ニックネーム”を振り返ると、この1年の韓国携帯状況もよく分かる。
「チョコレートフォン」「横本能フォン」「オモナフォン」……。韓国では携帯電話を型番ではなくニックネームで呼ぶ場合が多い。ニックネームは携帯電話の機能やデザイン的な特徴から付けられる場合が多いが、このほかにも広告のキャッチフレーズ、広告に出演したスターの名前などから発生する場合もある。2005年に流行した携帯電話を、ニックネームから見ていこう。
CMが携帯電話のニックネームを作る
携帯電話のイメージは、CMやそれに出演する芸能人と直結するため、そこからニックネームが付けられる場合もある。CMの人気度によっては、そこに登場するスターの名前を付けて呼ばれる商品も少なくない。
こうした商品の今年の代表格といえばLG電子の「オモナフォン」(3月15日の記事参照)だろう。オモナフォンはCMに若手演歌歌手を起用するという思い切った宣伝方法が功を奏し、歌詞にある「オモナ」という言葉の響きとともに多くのユーザーの知るところとなった。
メイン機能プラスアルファで多機能さを演出
今年は5月に衛星DMB、12月に地上波DMBが開始され「DMBの年」だった韓国市場だが、それに伴いDMBフォンも花盛りだった(10月25日の記事参照)。DMBの番組を長時間視聴するという特性上、携帯電話にも画面を横にするというスタイルが多い。
画面を横にするといえば、Samsung電子の「横本能」シリーズだろう(2004年12月27日の記事参照)。2005年に第1弾が開始された同シリーズはすでに第3弾まで販売されており、さらに今年は衛星DMB対応の横本能フォンまで販売が始まった。
また衛星DMB対応携帯としては、LG電子の「LG-SB130」も個性的なニックネームを持っている。「タイムマシーン」携帯と呼ばれるLG-SB130の最大の特徴は、番組の視聴中に電話が来た際その時点から番組の自動録画をしてくれる「タイムマシーン機能」だ。これにより通話後に電話が来た時点にさかのぼって映像を見られるというものだ。
ニックネームがデザインや機能を代弁
新しい携帯電話のデザインをリードする韓国市場では、常に斬新なモデルが提案されている。今年も盛りだくさんのギミック携帯が登場しユーザーの目を楽しませてくれたが(11月15日の記事参照)、ニックネームはそうしたデザインを代弁してくれる役割をも持っている。
VK Mobileの「ヒップホップフォン」こと「VK600」は“Shall we hiphop?”をコンセプトとしている。最大の特徴は画面両脇2カ所に配置したスピーカーと、左右へ自在に回転できるリボルバースタイルだ。スピーカーを全面に出した音楽を強調したデザインと、楽しくポップなデザイン、そしてそれらを象徴するようなニックネームを採用することで、10〜20代の若者を取り込もうとしている。
今年最も奇抜なデザインの1つともいえる携帯電話は、Pantech&Curitelの「ポップアップスライドフォン」こと「PT-S170」だろう。これは一度スライドした画面をさらに折りたたみ携帯のように開くことができ、さらにその画面を本体と90度に折り曲げることでカムコーダのように撮影できる。一見スライド携帯のようでありながら、ポップアップウインドウのように開いて存在感を示す。画面を強調したニックネームとなっている。
全携帯電話にニックネームがあるMotorola Korea
今年は携帯電話のスリム競争が急速に進んだ年だった(10月7日の記事参照)。「名刺サイズ超スリムフォン」「8.8ミリフォン」などと呼ばれているVK Mobileの「VK-X100」や、LG電子の「チョコレートフォン」(11月30日の記事参照)こと「LG-KV5900」など、スリムブームを代表するような携帯電話が数々出たが、やはり元祖であるMotorolaのRAZR(「MS500」)のインパクトが最も強かった。RAZRはそのニックネーム通りシャープで、都会的なイメージで韓国のみならず世界で人気を博すこととなった。
Motorola KoreaではRAZR以外の携帯電話にも、必ずニックネームを付けている。320万画素カメラ搭載の「Motographer」、手のひらサイズの「Mini Moto」、リボルバータイプの「Spin Moto」など、ニックネームには必ず「Moto」が付き、単純で語呂の良いものが多いので、覚えやすいうえ聞いただけでMotorolaの携帯電話であることが分かる。そのため型番よりもニックネームの方が有名というケースも割と多い。
来年のニックネームの傾向は……
ニックネームを付けることの意義は、やはりなんといっても覚えやすいことだ。ニックネームを言うだけで携帯電話のイメージが浮かびやすく、単なるアルファベットと数字との組み合わせよりは親しみもわく。
ニックネームは商品のイメージを作り上げるためメーカーが意図的に付けているケースが大部分だが、「オモナフォン」のように広告などの特徴から自然とそう呼ばれるようになる場合もあるのは、ユーザーの好みや社会の流行を反映した面白い現象だとえいる。
今年はDMBなどの新技術やスリムデザインが市場を席巻した韓国だったが、同時にカメラやMP3、DMBやBluetoothなど、さまざまな機能を同時搭載した端末が多く登場し携帯電話の複合化が進められた年でもあった。来年にはWiBroの商用化や、KTFとNTTドコモの提携による新事業などもお目見えすることで(12月15日の記事参照)、さらなる複合化が進みそうだ。そうなると「WiBro DMB メガピクセルカメラ W-CDMAフォン」などといったようにニックネームが長くなる現象が見られるのだろうか。
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佐々木朋美
プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。
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