フィルタリングと児童買春の関係(2/2 ページ)
東京都は大手量販店に声を掛け、未成年が携帯を買うときに、携帯サイトのフィルタリングサービスについて親に説明するように求めている。東京都がフィルタリングサービスに期待する理由とは……。
実際、フィルタリングサービスなど携帯キャリアの取り組みについてはほとんど知られていないようだ。説明会には東京都公立高等学校PTA連合会と、東京都公立中学校PTA連合会の副会長がそれぞれ出席していたが、「フィルタリングというのはPCだけかと思っていた、携帯でフィルタリングサービスがあることを知らなかった」「PなんとかS……? URL? そういう言葉が出てきただけで難しいと思ってしまって分からない。誰にでも分かるように説明してほしい」「(ボーダフォンがトラブル回避のノウハウをまとめた小冊子を配布していることに対して)そういうものがあるとは知らなかった。配りたいので、無料なら数十冊欲しい」といった意見が出ていた。保護者の支持を得るには、“分かりやすさ”“無料”がポイントのようだ。
「携帯でググる」が当たり前になる今後はどうなる?
この説明会では触れられることはなかったが、周知の通り、携帯サイトとPC用Webサイトはどんどん近付いてきている。2004年にフルブラウザを搭載したPHSや携帯が登場し(2004年12月29日)、「携帯でPC用サイトを見る」ことは珍しいことではなくなった。最近は、携帯キャリアがPCサイトの検索に注力する動きが加速している。auがGoogleと提携してEZwebからGoogleの検索エンジンを利用できるようにしたように(5月18日の記事参照)、ドコモもボーダフォンも検索強化を打ち出している。
3キャリアのフィルタリングサービスを使えば、今は携帯サイトだけでなく、PCサイトも検索することはできない。しかし「携帯でPC用サイトを検索」が標準装備になっていくであろう今後、「フィルタリングサービスがあるから有害サイトにアクセスできない」と考えるのはあまりにお気楽に過ぎる。「キッズ」はともかく、中学生や高校生に対しては、単にアクセス制限をするのではなく、「なぜ出会い系サイトに行ってはいけないのか」「そこにどのような危険があるのか」を納得させなくては、とても問題は解決しないだろう。
最近では「出会い系サイトで知り合った高校生女子に2万円払った31歳男性」「ハンゲームで知り合った中学2年生女子に3万円支払った27歳男性」といった検挙例があった。しかし円谷氏によれば、児童買春で男性が検挙された場合、罰金の相場は20万円程度で、常習犯や相当重い場合で50万円程度。懲役刑が課されることはまずないという。たとえ検挙されても、加害者が失うものは、被害者が失うものに比べてあまりに小さいのが現実だ。
フィルタリングサービスは当面は有効かもしれないが、所詮は“始めの一歩”でしかない。本説明会でも「援助交際」という言葉が何度か使われていたが、その現実は「売春」だ。目の前の現実から目を背けることなく、根本的な解決策を考えないことには、被害は減らせないのではないかと感じた説明会だった。
関連記事
- 何のための携帯か――親と子どもの埋めがたいギャップ
携帯で子どもと連絡が取れると考える親、携帯があるから自由になれる、友達と仲良くなれると考える子ども。親と子どもの間には、大きな意識のズレがあるようだ。 - TCA、子ども用携帯への「有害サイトアクセス制限サービス」導入を呼びかけ
TCAは夏休みを前に、携帯キャリア3社が行う「有害サイトアクセス制限サービス」の告知キャンペーンを広く展開。7月中旬より地方自治体を中心に約6万枚の告知ポスターを配布する。 - 子供にケータイ、持たせますか?──「持たせるケータイ!安心説明会」
安全のために、子供に携帯を持たせる親が増え、携帯の安全教室なども開催されている。携帯ショップ、PTA、地元企業が一体で取り組む「持たせるケータイ!安心説明会」の模様を取材した。 - キッズケータイ「SA800i」は子供の“お守り”
小学生など子供を対象とした「SA800i」はデザインにもフォーカス。機能面ではGPSを搭載することで、さまざまなアクシデントの際に、保護者に位置情報を提供するようになっている。 - 子供も裏をかけない強力な制限〜「V301T」のリミットモード
ボーダフォンの東芝製端末「V301T」は、使いすぎを防ぐ「リミットモード」を搭載した端末。「使うか使わないか」という二者択一だけでないフレキシブルな設定が可能だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.