QUICPayに本腰を入れる理由は?――トヨタファイナンスの戦略 (前編) :Interview: (3/3 ページ)
MOPPA陣営の中で、ある意味本家JCBよりも積極的にQUICPayの普及に注力するトヨタファイナンス。QUICPayに力を入れる理由や、今後の戦略について聞いていく。
TS3カードすべてにQUICPayを内蔵
ミッドランドスクウェアを中心に、名古屋市中心部でQUICPay加盟店が一気に増加する。なぜなら、そこには利用者が“確実に”いるからだ。
「ミッドランドスクウェアにはトヨタ社員が約3300人が務めることになります。当然ながら、彼らは(トヨタファイナンスの)TS3ユーザーです。さらに、2006年10月以降のTS3カードにはQUICPayを標準装備します。これまでのような別体のカードではなく、TS3カードそのものにFeliCaチップを一体化し、QUICPayを内蔵します」(後藤氏)
QUICPay機能の内蔵により、TS3ユーザーは手持ちのクレジットカードを“かざすだけ”でQUICPay支払いが利用できるようになる。おサイフケータイの利用には別途申し込みが必要だが、一体型カードのQUICpay機能を使うには特別な申し込みは必要ない。
「2006年10月以降は、TS3の新規加入でQUICPay内蔵の一体型カードになります。また申し込み時に申請すれば、従来通りのQUICPay子カードやおサイフケータイ向けにもIDが発行されます」(宮本氏)
FeliCaクレジット決済機能を内蔵した一体型カードについては、三井住友カードも2007年1月以降の新規加入分から発行すると表明している(9月7日の記事参照)。トヨタファイナンスが三井住友カードの方針と異なるのは、既存ユーザーのカード更新時の対応だ。三井住友カードでは既存会員については“希望者にiD内蔵カードへ切り替え”という方針だが、トヨタファイナンスでは、既存ユーザーが契約更新するタイミングで、自動的にQUICPayを内蔵した一体型カードを発行するという。
「TS3は立ち上げてから今年で5年になりました。ちょうど今年は、初期に入会したユーザーの更新が始まる年なんですね。今年の10月以降、今年度末までに約85万人が更新でカード切り替えになるのですが、そのお客様すべてがQUICPayユーザーになります」(後藤氏)
QUICPayのユーザーは今年7月末時点で7万人余りに留まっている。FeliCaクレジット決済の会員獲得で先行するiD陣営のドコモも、今年7月末時点で約50万人だ。しかし、トヨタファイナンスのQUICPay内蔵化が始まれば、更新切り替え分だけで5ヶ月で約85万人の急増になる。しかも、クレジットカードをかざすだけですぐ使えるので、利用率の向上にも期待できる。
「(一体型カードによる)今後の会員数急増は、加盟店様のメリットでもあります。名古屋でQUICPayを面展開するというのは、トヨタの従業員すべてがQUICPayユーザーになるからです。もちろん、その他の地域でも(トヨタファイナンスの)一般ユーザー様すべてがQUICPayを標準装備しますから、これが加盟店側の大きな導入意欲になるでしょう」(宮本氏)
トヨタファイナンスがQUICPayの一体型カード導入と更新時の自動切り替えを決定したことで、この分野の会員獲得で先行するiD陣営とパワーバランスで拮抗するのが確実になった。また今後の加盟店獲得においても、iD陣営と同じく「ユーザー規模の大きさ」を武器にできる。このインパクトは極めて大きいと言えるだろう。
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