「NTTに頼らない光回線を」――KDDI、東電の光通信事業を吸収
KDDIが東電の光通信事業を来年1月に吸収する。自前のFTTH網を持てばNTTのダークファイバーに頼らない自由な事業展開が可能になるとし、携帯電話との連携サービスも展開していく計画だ。
KDDIは10月12日、東京電力の光通信部門を会社分割し、KDDIに承継させると発表した。NTTのダークファイバー網を借りるなどしてFTTH事業を展開してきたKDDIは、東電が保有している光通信網を統合し、独自の光通信網を構築。柔軟なエリア展開やサービス運営が可能になり、コスト競争力も高めてNTTに対抗する。
東京電力の社内カンパニー、光ネットワーク・カンパニーの事業を来年1月1日付けで分割。KDDIは東京電力に14万4569株を割り当てる。光ネットワーク・カンパニーの社員はKDDIに出向する。
東京電力との契約などはKDDIが引き継ぎ、「TEPCOひかり」ユーザーは当面は継続してサービスを利用できる。近い将来、新規ユーザーはKDDIの「ひかりone」に統合していく計画だ。
統合後は、光回線とau携帯を連携させたサービスの展開を検討するほか、東電が進めてきた高速電力線通信(PLC)やネット家電の研究なども行っていく。独自網を活用した動画配信にも力を入れる。
また両社は、光ファイバーケーブルなどの建設・保守を受託する合弁会社を1月1日をめどに設立することを検討する。新会社には、東電社員が出向する予定だ。
NTTに依存しない独自網を
KDDIのFTTHサービス加入者数は約19万、東電は先月末時点で34万。「首都圏でFTTHシェア3割を目指す」――KDDIの小野寺正社長こう意気込み、「自前の光回線を持つことで、NTTのダークファイバーに依存しないサービスを展開でき、品質の保証もできる。コスト競争力も高まる」と狙いを語る。
「例えば、NTT網を使ってGE-PON(1Gbpsの光ファイバーを分岐する技術)を展開する場合、1区画の広さをどう取るかはNTTに依存する。だが自社網を持っていれば、需要が大きい地域は区画を小さく、需要が少ない地域は大きく取るなどでき、コスト効率を高められる。NTTの回線接続料(の変動)という不安定な要素も排除できる」(小野寺社長)
東電の勝俣恒久社長は「FTTH事業からの撤退ではない」と強調する。営業面で連携していくほか、新会社でFTTHの設備構築や保守事業を引き続き行っていく。同社が研究してきたPLCのノウハウなどもKDDIに提供する。
KDDIは、関東圏以外のエリアでも、電力系通信会社と連携して光通信網を展開していきたい考え。ただ具体的な話まだないといい、「まずは今回の例を成功させ、モデルを見せることが当面の課題」(小野寺社長)とした。
KDDIは、昨年10月13日に東電の子会社・パワードコムを吸収合併し、今年4月には、東電とFTTH事業統合に向けた検討を行うことで合意した、と発表していた。
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