モバイルブロードバンド市場を広げる「2つの選択肢」 ――クアルコムジャパン :Interview(2/2 ページ)
クアルコムが次世代のモバイルブロードバンド技術として推す「FLASH-OFDM」。モバイルWiMAXが取り上げられることが多い中、802.20とFLASH-OFDMを並行して進めるという道を行くクアルコムの狙いは何だろうか。
クアルコムの提案する「2つの選択肢」
このようにクアルコムは、10MHz幅以上の広帯域での利用を想定した「802.20」と、1.25MHz幅から利用可能であり、より柔軟な利用ができる「FLASH-OFDM」のふたつのモバイルブロードバンド技術を提案している。両者は共通点が多く、クアルコムの中で技術・ノウハウが共有されているが、目指すべき市場は異なる。
「802.20とFLASH-OFDMは『従兄弟』のような関係。技術的に明確な線引きは難しいくらい、(技術・ノウハウの)共有は行われています。しかし、狙っているマーケットが明確に違うのです」(川端氏)
逆説的にいえば、「2つの選択肢」を持つことで、クアルコムが見据えるモバイルブロードバンド市場は、モバイルWiMAXよりも幅広く、可能性の大きなものになっている。
これまで日本におけるモバイルブロードバンドの議論は、広い帯域幅を使ったマスマーケット向けの視点でのみ語られてきた。乱暴な言い方をすればそれは「新たに割り当てられる広い帯域が取れるか否か」の陣取り合戦がすべてであり、技術的な経済合理性や将来性、モバイル産業全体の発展やエンドユーザーのメリットにどれだけ寄与するかといった議論は二の次にされているように見える。
クアルコムは、広帯域・マスマーケット向けの802.20だけでなく、狭帯域でもフットワークよく使えるFLASH-OFDMもあわせてラインナップすることで、モバイルブロードバンドの市場とサービスの裾野を広げようとしている。特定・小規模の無線システムの代替市場はもちろん、使用する周波数幅が少ないことはコンシューマー向けサービスでも事業者の参入障壁を低くし、競争の促進に繋がる可能性がある。これらは意義深い取り組みであり、モバイルの特性と市場の拡大を重視して技術開発を行うクアルコムの姿勢は高く評価できる。
モバイルブロードバンド市場はどこまで拡大するか。2.5GHz帯で採用される技術の動向だけでなく、幅広い視野で、この市場の拡大と発展に注目しておく必要がありそうだ。
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