シスコに聞く,「IP電話の現状と今後」2002年に,さらなる発展が予想されるIP電話。シスコシステムズはサービスの現状と今後の課題について,技術・動向両面にわたって話してくれた。
いまや多くのISPがサービスを提供し,普及が期待されるIP電話。しかし,市場の拡大とともに,いくつかの課題も浮き彫りになってきた。IP電話の現状と業界動向について,IPテレフォニー製品を多く販売しているシスコシステムズに聞いた。 取材に応じてくれたのは,ネットワークソリューションセンターボイス・ネットワーク部の財津健次部長代理,ネットワークシステム本部第二ネットワークシステム部の砂田和洋部長代理,ソリューションマーケティング本部の木下剛本部長の3人だ。
「ネットワーク環境は十分」IP電話でまず重要なのがネットワーク環境だが,ここ2〜3年で状況は大きく変わってきたという。 まず,WDMなどの技術により,ネットワークの伝送容量が大幅に増加した。「インターネットの使用量は年率4倍で増えたが,伝送容量は年率10倍の速度で伸びた」。現在は,帯域が“じゃぶじゃぶの状態”(=余裕がある)であるため,輻輳も発生しにくいという。 さらにネットワーク技術として,MPLS(Multi Protocol Label Switching)の開発が進んだことが大きい。MPLSは,パケットに固定長の「ラベル」を付加して伝送し,経路決定を高速化する技術。パケットのIPヘッダなどをもとに次のノード(ネクストホップ)を決定する従来方式に比べ,伝送の高速化が図れる。 「ホップバイホップで伝送していたものがMPLSに替わったことで,パケットの遅延(ディレイ)を片道数十ミリ秒まで短縮できるようになった」(シスコ)。 このため,大手事業者では実用レベルの品質保証が可能になっているという。別途,音声データをパケット化する際に優先制御を行えば,さらに通話品質は高まる。 「一般家庭ではコストの問題から,それほどインテリジェンスを持った(優先制御を行うような)端末は必要ないかもしれないが,ビジネスユースなどの際は有効だ」。
企業間の協調が課題逆に課題としては,緊急電話番号への対応,端末価格の低下,ユーザーインタフェースの改善などが挙げられる,また,「ネットワークを保有する通信事業者同士の連携」も難しい問題だという。 IP電話は本来,オープンなインターネット上でもベストエフォートで通話することができる。しかし実際には,各ISPが自社インフラ内で,帯域(=通話品質)を保証しているサービスも多い。ユーザーとしてはこれらのISPがバックボーンなりIX(インターネット・エクスチェンジ)なりでネットワークを相互接続してくれることが望ましい。 だが,シスコによると,「そもそも各事業者は,IP電話によってユーザーを囲い込むビジネスモデルを立てている。ネットワークを接続して自社インフラ外まで保証するようなことは,“やりたくもない”のではないか」。 インフラの格差も相互接続の障壁になる。ひとくちにIP電話のネットワークといっても,事業者のスタンスや設備投資額により,「単に音声データを送受信するだけのものから,高画質のテレビ電話を行えるものまで,大きな差がある」。これを十把一絡げにつなげてしまうのは不公平感があるようだ。 総務省が7日に公開した「IPネットワーク技術に関する研究会報告書(案)」では,事業者のネットワーク形態や通話品質によって分類/評価する必要性を説いている(1月7日の記事を参照)。これも,こうした問題を調整するためといえるだろう。
「5年のうちに従来の電話に置き換わる」?IP電話の将来については“一般の電話と混在しながら普及していく”という答えだった。携帯電話のように一般の電話機と互換性を持たせた上で,徐々に置き換わっていくという。 「従来の電話網は,インフラの維持コストがかかりすぎる。端末の外見はそのままで,機能・バックボーンはIPベース,といった形になるのではないか」。 IP電話は通話以外にも,テキスト・ビデオといったアプリを統合したマルチメディア通信に拡張できるという発展性が強み。総務省も加入者電話と同等の品質を持つサービスについては15桁以内の電話番号が付与する方向でおり,追い風は吹いている。 今回,話を聞いた3氏からは「あと5年のあいだに,今の電話がIP電話に置き換わるのではないか」という,思い切った予測も聞かれた。
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