最強を謳うNTT-MEのブロードバンドルータ「BA5000 Pro」を試す

「ブロードバンドルータ,最終章。」というキャッチフレーズを掲げて登場したNTT-MEの「BA5000 Pro」。しかし,実際に運用してみると安定性の面ではまだ若干の不安が残っているようだ。

【国内記事】 2002年4月5日更新

 ブロードバンドアクセス回線の普及により,ブロードバンドルータ市場は激しい性能・機能の競争を繰り広げている。その中で「ブロードバンドルータ,最終章。」というキャッチフレーズを掲げて登場したのが,NTT-MEの「BA5000 Pro」だ。このキャッチは機能,速度,デザイン。あらゆる面でこれ以上ない機能を備える,という意味である。

 すでに発売後,1カ月以上経過したが,わが家での稼働状況をレポートしたい。


本体サイズは140(幅)×202.5(高さ)×31(奥行き)ミリ

欲しい機能がすべてがそろう

 まずBA5000 Proの機能概要に関しては,NTT-MEによる製品紹介ページを参照して頂きたい。ライバルが備えるほとんどの機能を持つ多機能さ,がBA5000 Pro最大のウリと言うことができるだろう。

 ブロードバンドルータは,不毛なほどのスループット競争で70Mbpsを超えるスループットを持つ製品まで登場しているが,本機は(最近の製品としては)控えめな35Mbpsのスループット値を謳う。実際にLAN間接続でftpによる転送を行うと,ほぼこの数値に匹敵する数値が出る。現在の家庭向けブロードバンドアクセス回線のスループットが,20〜30Mbpsであることを考えれば,これで十分の速度だ。

 速度は遅いよりは速い方がいいというのは真理ではあるが,機能や価格とのバランスも重要である。シングルセッションの転送速度が高速なだけでなく,ブロードバンドルータに求められる機能をカバーしつつ,手頃な価格設定のハードウェアであることが求められる。BA5000 Proは,BAシリーズ最上位機種という位置付けだが,価格は1万6000円前後と手頃だ。

 それでいて,ステートフル・パケット・インスペクション対応のパケットフィルタリング機能を搭載し,H.323あるいはSIPを用いた音声・動画による通信をサポートし,「Windows Messenger」「MSN Messenger」をはじめ,H.323準拠のIP電話端末を利用できる。また4月末にはUPnP(Universal Plug and Play)対応ファームウェアも投入される。なお,内蔵プロセッサには最近の低価格な高速ブロードバンドルータで採用例が多いARM9が使われている。

 セキュリティ面では,前述したステートフル・パケット・インスペクション対応パケットフィルタリングに加え,DoS攻撃などを受けると自動的にポートを塞いだり,電子メールでユーザーに攻撃の状況を伝える機能が搭載された。またsyslogサーバに対してアクセスログをフォワードする機能があるため,長期間にわたるログを分析して不正アクセスの状況を把握することも可能だ。

 筆者がこの製品を選んだ理由も,こうした欲しい機能が一通りそろっているところに期待したためだ。従来はLinksysの「BEFSR81」を利用していたが,こちらは動作こそ安定していたものの,下位機種の「BEFSR41」などと比較するとファームウェアのアップデートが常に1世代古く(8ポートハブ内蔵のBEFSR81はユーザーが少ない上,下位機種とは異なるファームウェアが必要になるため),機能面での不満がありBA5000 Proの導入へと至った。

多彩なネットワーク環境に対応可能

 また,わが家の環境は8Mbpsの「フレッツ・ADSL」であるため利用できないが,複数のPPPoEセッションを張ることが可能な「Bフレッツ」では,プライマリとセカンダリのログオンアカウントを登録し,同時に接続することも可能だ。このとき,アクセス先ホスト名にキーワードを指定し,特定のホストにアクセスするときだけ自動的にセカンダリアカウントからアクセスするといった設定が行える。フレッツスクエアをはじめ,地域IP網を利用したネットワークサービスを利用する際に便利だ。


設定はすべてWebブラウザで行う。設定項目の書き方やメニュー構成,それに各項目のヘルプはなかなか親切に作られており好感を持った

 さらにアカウントはプライマリ,セカンダリ双方とも2カ所を登録し,片方のアカウントでアクセスできないとき,自動的に別のアカウントでアクセスする機能もある。バックアップ用のアカウントを所有しているユーザーに便利な機能だ。


接続アカウントは複数登録しておき,プライマリ,セカンダリ,双方ともに2カ所まで設定可能。各アカウントの状態もモニターできる

 このほか,複数のIPアドレスを利用可能なPPPoE接続(unnumbered接続)に対応しているため,小規模事業者の要求にも十分対応可能だ。もちろん,この場合でもNAPT(IPマスカレード)を利用可能で,LAN側ネットワークの特定アドレス範囲をDMZ(非武装地帯)にして,複数のグローバルIPをDMZへと引き渡すことができる。通常端末はIPマスカレードで利用し,メールサーバやWebサーバはそれぞれ外部から直接アクセス可能にするといった設定を簡単に行える。


セカンダリセッションの接続ルール設定部分。特定端末からのアクセスだけ,セカンダリ経由にしたり,相手先ホスト名やIPアドレスで切り替えるなどの設定が行え,複数PPPoEセッションを自動的に切り替えたアクセスを可能にしている

 なおNAT機能は,いわゆる1個のIPアドレスをシェアするIPシェアリングだけでなく,複数対複数のアドレス変換も可能であり,LAN間接続用に使うことも可能だ。もちろん,PPPoEではなくLAN型接続のアクセスサービスにも対応。またPPTPはもちろん,IPsecやL2TPのパススルーにも対応しているため,VPNを利用したいユーザーも,容易にこれらの機能を利用できる。


NAPTや各種パススルーの設定は,アカウントごと個別に設定できる。たとえば会社のVPNサーバに接続する場合だけセカンダリのアカウントで接続し,その場合のみPPTPを許可する,といった設定が行える


パケットフィルタリングは双方向のパケットをモニタ可能で,かつ接続アカウントごとに個別設定できる柔軟性を持つ。静的にフィルタ設定を行えるだけでなく,ステートフルパケットインスペクションや自動ブロックも可能


アクセスログは本体内メモリにも蓄積可能だが,syslogサーバがあればログをネットワーク経由で投げることも可能。イベント発生時にメールで通知する機能もある

多機能の反面で,まだ不安定さも

 機能面では不満点が少ないBA5000 Proだが,実際に運用してみると安定性の面ではまだ若干の不安が残っているようだ。わが家の場合は,BA5000 Proの初期設定が終わった直後からトラブルが発生した。

 BA5000 Proの初期ファームウェアには,PPPoEアカウント登録でキープアライブ(リンクがダウンした場合,自動的に検出して接続し直す機能)を有効にしていると,DHCPサーバとDNSリレー機能が働かなくなるというバグがある。

 わが家の場合,ダイナミックDNSを用いて外部から自宅LANにVPNでログオンできるように設定するため,キープアライブは常にオンにした状態で使ってきたため,設定してすぐに各端末がインターネットにアクセスできなくなってしまったのだ。これでしばらくの間,原因究明に時間を費やしてしまった。なお,この問題は最新のファームウェアで対策されているので,購入後,まずはアップデートしてから設定することを勧めたい。

 もっとも,最新ファームウェアにアップデートしてからも,たびたび挙動が怪しいところが見受けられる。本機はWebブラウザで各種の設定を行うが,希にルータ内のHTTPデーモンがダウンする場合があるらしく,ルータとしての機能は正常に動作しているのに,ブラウザから設定画面にアクセスできなくなることが何度かあった。

 さらに我が家のADSL環境では,日に数回,回線が切れることがあるが,キープアライブを設定していると,その後,PPPoE再接続の失敗を何回か繰り返し,そのままルータが反応しなくなる(再起動が必要になる)ことがある。この問題は,再接続までのディレイ時間を設定するか,キープアライブをやめれば回避できた。

 以前,わが家でのブロードバンドルータ選定の記事で,ルータはハードウェア製品ではなく,ソフトウェア製品と思って選ぶ方がいいと書いたが,自分自身でこの方針を破り,結果として不安定さを拾ってしまったことになる。

 何とも情けない話だが,今のところ機能面での要求をすべて満たしてくれる製品として,不具合を回避しながらBA5000 Proを使っていくことにしたい。各種のテストを行うために,UPnP対応ルータが欲しかったという事情もあるが,簡潔な設定方法と巧妙なアクセスアカウント管理,セキュリティ機能などを捨ててまで,BEFSRには戻れないと思うからだ。

 NTT-MEブランドのブロードバンドルータははじめての購入だが,これまでの製品は不具合があっても対応はきちんと行われてきた実績があるようだ。安定さえすれば,現在,もっとも有力な選択肢のひとつになるだけに,対策が進むことを切に願いたい。

関連記事
▼ わが家のブロードバンド計画(7)〜リスクもある8MADSLサービス
▼ わが家のブロードバンド化計画(6)──世界中からアクセスできることの意味
▼ わが家のブロードバンド化計画(5)──後悔しない? ルータ選び
▼ わが家のブロードバンド化計画(4)──固定IPを目指してISPを選んでみる
▼ わが家のブロードバンド化計画(3)──MTUのその後とインターネット接続の共有
▼ わが家のブロードバンド化計画(2)──速度が出ないのはなぜ?
▼ わが家のブロードバンド化計画(1)──やってこないハズのADSLがやってきた

関連リンク
▼ NTT-MEの製品情報

[本田雅一,ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


モバイルショップ

最新CPU搭載パソコンはドスパラで!!
第3世代インテルCoreプロセッサー搭載PC ドスパラはスピード出荷でお届けします!!

最新スペック搭載ゲームパソコン
高性能でゲームが快適なのは
ドスパラゲームパソコンガレリア!