NTTコム,月額1600円で“ホットスポット”を展開「HI-FIBE」として実験サービスを展開していたNTTコミュニケーションズのホットスポットが5月より商用化される。月額1600円で,無線LANはIEEE 802.11bにくわえて,高速なIEEE 802.11aもサポートした。
NTTコミュニケーションズが「HI-FIBE」として実験サービスを展開していたホットスポットの商用化を発表した。接続料金は,モバイルインターネットサービスの「Genuine」やYahoo! BBの「Yahoo! BBモバイル」よりも安い月額1600円。無線LANはIEEE 802.11bにくわえ,高速なIEEE 802.11aもサポートする。同社のアグレッシブな展開は,他社の戦略にも影響しそうだ。 サービスの正式名称は「ホットスポット」。一般化した用語を商標化した点は議論を呼びそうだが,NTTコミュニケーションズ ユーザアクセス部の榎並誠部長は,「できるだけ馴染みの深い名称にしたいと考え,あえて採用した」と話している。当初は東京23区内にあるカフェやホテルのロビーなど約200カ所に基地局を設置するが,年度内には全国1000カ所まで拡大する方針だ(スポット一覧は別記事を参照)。
サービスは5月15日に開始する予定で,これに先立って5月8日より専用Webサイト(http://www.hotspot.ne.jp/,未公開)で申し込み受付を行う。料金の支払いはクレジットカードのみ。申し込み手数料として,1500円が別途必要になる。 昨年7月から展開してきたHI-FIBE実験は5月12日に終了し,モニターが引き続きホットスポットサービスを利用する際は,新たにユーザー登録が必要となる。なお,5月15日〜末日までは,「無料お試し期間」として課金を行わない。
デュアルバンド対応APを開発IEEE 802.11aのサポートは,NTTアクセスサービス研究所(AS研)が開発したチップセットによって実現した。これを採用したデュアルバンド対応のアクセスポイントを各スポットに設置,IEEE 802.11b,同11aのどちらの端末でも同時に利用できる。 「市販のIEEE 802.11a無線LANカードとの接続性は確認した。ソニー,NEC,TDK,ATHEROS COMMUNICATIONSの各社と協力し,異機種間の接続検証を行っている」。
もっとも,ホテルなど一部のスポットを除き,多くはアッカ・ネットワークスの8Mbps ADSLを回線に利用しているため,IEEE 802.11aを使ってもそれ以上の高速化は望めない。また,対応機器も高価で潤沢とはいえず,むしろ「将来の普及」を見越した措置といえるだろう。 「かなりチャレンジングだが,いずれ光回線+無線アクセスが市場のメインになると考えている。さまざまな電波が飛び交う2.4GHz帯に比べ,5GHz帯は広帯域を安定的に使える点が魅力だ」(同社)。
企業向けにも積極展開セキュリティ面の脆弱性が指摘されるホットスポットだが,NTTコミュニケーションズは標準化された技術を組み合わせて利用する方針だ。ユーザー登録時に個別の認証IDとパスワードを配布しておき,無線LANの部分はESSIDとWEP暗号化を使用する。 接続時にはまず専用ポータルに繋がり,そこでユーザー個々のIDとパスワードを入力する。端末ではなく,個々のユーザーを認証する仕組みだ。特別なソフトウェアは必要なく,標準的な無線LANドライバとSSL対応のWebブラウザさえあれば利用できる点が魅力だろう。 ただし,スポット内のユーザーは同一のWEPキーを利用するため,スニファーなどを使ってパケットが盗聴される危険性は残る。この点について同社は「脆弱性は理解しているが,VPNなど,より高度なセキュリティ対策は,それぞれのユーザーで施してもらいたい」と話している。 このため,同社はAT&Tグローバル・サービスと提携し,VPNソリューションの販売に注力する方針を明らかにしている。「今後は,ICカードやOCNビジネスパックVPNを活用した企業向けサービスも提供していく」(同社)。ホットスポットには,企業向けビジネスの促進といった側面もあるようだ。 一方,同社のサービスではIDとパスワードだけでグローバルIPアドレスを動的に割り当てるため,IDやパスワードの「使いまわし」あるいはホットスポットの匿名性を利用したアタックも懸念される。こうした危険性に対しては,社内に設けられた専用サーバ,通称「ホットスポットシステム」で対応する。 機器固有のMACアドレスを事前に登録してフィルタリングする方法もあるが,それでは複数台のノートPCを持つユーザーが困る。そこで,「接続した機器のMACアドレスを収集してログを残す」。つまり,同じIDであまりにも多くの機器を接続したり,そこから攻撃を仕掛けたりするユーザーは,容易に判別できる仕組みだ。
オープンなホットスポット?ある程度の脆弱さを覚悟の上で,同社が標準的なセキュリティ技術にこだわる背景には,VPNビジネスの促進,PDAなど非PCでの利用,パートナー各社との接続性確保といった意味がある。同社は,シャープや日立製作所のPDAと連携したコンテンツサービスの展開を計画しているほか,将来的なISPを通じた回線の卸売り,あるいは他のホットスポット事業者とのインフラ相互利用(乗り入れ)をも検討していくという。 独自のアプリケーションには「ホットスポットシステム」で対応し,末端の回線は標準的な仕様として汎用性を高める。くわえて,IEEE 802.11aなど将来の拡張性を当初から取り込んでおく。将来の市場拡大と「ホットスポットの一般化」を見越した戦略といえる。 気になるのは採算性だが,榎並氏は「2003年度の10万人加入を目標にしている。このあたりが損益分岐点になるだろう」とした。2年後の2004年度には,単年度黒字化を目指す方針だ。
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