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2003/11/19 23:59:00 更新 |
「WinMXで自由に交換してください」 〜NTTコムのP2P動画サービスとは?
P2Pによるファイル交換システムは、コンテンツプロバイダから長らく目の敵にされてきた。しかし、この巨大な流通経路を逆手にとってしまおうというサービスがある。その仕組みとは?
P2Pによるファイル交換システムは、コンテンツプロバイダから長らく目の敵にされてきた。しかし、この巨大な流通経路を逆手にとってしまおうというサービスがある。
NTTコミュニケーションズと松竹は、共同でショートコンテンツの無料配信サービス「わざアリ」を開始した(記事参照)。ことわざ、金言格言、慣用句など身の周りの「ことば」にちなんだマメ知識を、4分間程度で女性タレントが紹介するという内容。毎週金曜日に3本ずつ、4カ月で60本が配信される予定だ。
「わざアリ」のトップページ。雑誌のようなサイトインタフェース
興味深いのは、1Mbpsという比較的高画質な動画を、“ダウンロード配信”していること。著作権上の問題から、敬遠されやすいコンテンツのダウンロードを、認めてしまっている。それどころか、わざアリでは「コンテンツをユーザー同士で交換することもOK。どんどん交換してください」(NTTコミュニケーションズ)というのだ。
この背景には、NTTコミュニケーションズの開発したコンテンツ流通ソリューション「NetLeader」がある。これは、コンテンツの暗号化、コンテンツIDの付与、流通経路の把握といった各種技術を組み込んで、セキュアなP2P配信を可能にしたもの。これを導入することで、配信サーバの負荷分散を行い、結果的に配信インフラのコストダウンを図ることができる。
同社は以前から同技術の開発に取り組んでいたが、昨年にプロダクトを完成させていた。サービス展開にあたり、まずは松竹と提携して「わざアリ」で試験運用に乗り出したわけだ。
専用ソフトをインストールする必要なし
それでは、NetLeaderの概要を見てみよう。これは、基本的には動画ファイルをカプセル化するもの。コンテンツを暗号化するとともに、各種情報を付与して、まとめてカプセル化する。
暗号化されたコンテンツを視聴するにあたり、専用ソフトをインストールする必要はない。NTTコミュニケーションズの先端IPアーキテクチャセンタ、第1アーキテクチャPTの小柴聡氏は、「ユーザーには、特別なプラグインを入れさせたくなかった」と話す。
NetLeaderでは、「MicrosoftのR&Dセンターと協力して、WindowsのDRMだけを工夫して使っている」(同氏)。このため、IE 5.5以上とWindows Media Player7.1以上という、一般的なWindows環境で視聴が可能だ。
映像ファイルとWindows Media Playerは、連携して視聴権(ライセンス)の管理を行う。仮に、ライセンスを持っていないユーザーがコンテンツにアクセスしようとした場合、事業者側のサーバで広告表示なり、課金なりを行った上で、ライセンスを発行する。このライセンスにより、「10回再生」「何月何日まで再生可能」などの視聴制限も可能となっている。
NTTコミュニケーションズの第1アーキテクチャPT担当課長、横田隆氏は、「ブロードバンドで、映像コンテンツの有料配信は、苦しい。やはり、無料でないと……」と話す。NetLeaderを、基本的には広告モデルのサービスに活用したい考えのようだ。
たとえば、視聴者同士がファイル交換した場合、ユーザーが入手したコンテンツを視聴しようとすると、いったんは広告ページにリダイレクトされる。ここで、所定のFlash動画なり、静止画なりを視聴した上で、ライセンスを取得する――という流れをイメージしているようだ。
「ダブルクリックと提携しており、静的バナーなどを環境に応じて、最適なかたちで表示できる。たとえば、時期に応じて配信する広告を変えるといったこともできる」(同氏)。
P2P交換は「WinMXや、Winnyで」
それでは、この暗号化ファイルをどのように交換するのだろうか。小柴氏は、既に存在するファイル交換サービスを、自由に利用してほしいと話す。
「WinMXやWinnyなど、使い慣れたP2Pクライアントソフトを利用してもらえばいい。NTTコミュニケーションズとして、独自クライアントを開発してはどうかという話も出たが……。WinMXは、非常に優れていて、勝てない(笑)」。
事業者としては、大元となる配信サーバこそ用意するものの、一度ユーザー同士でファイル交換が始まってしまえば、後は流れにまかせる方式だ。
もっともコンテンツの流通が、完全に事業者の手を離れたところで行われるのも困る。そこで、NetLeaderでは流通経路を追跡するための、以下のような技術も組み込まれている。
まず、コンテンツを「最初に」ダウンロードする場合。ユーザーは、動画ファイルをダウンロードするにあたり、配信サーバに個別情報を送信する。これによって、ダウンロードされたコンテンツには“最初のユーザーの個別情報”が書き込まれる。
次に、そのコンテンツが別ユーザーにダウンロードされ、ライセンス発行された場合。この時、視聴しようとするユーザーの個人情報は、コンテンツ自体に書き込まれた情報と、符合しない。これを認識したコンテンツファイルは、違いを配信サーバ側に通知。これにより、「コンテンツごとの所有者の推移」がサーバ側で把握できる仕組みだ。推移は、何世代にもわたり把握することもできる。
NetLeaderではまた、流通経路でのコンテンツの偽装を防ぐため、コンテンツカプセル内にコンテンツIDを付与する領域も設けている。「領域はきちんと空けてあるため、cIDf(記事参照)や、MPEG-7(記事参照)に対応させることも可能」(横田氏)という。
「実績づくり」としてのわざアリ
以上、NetLeaderの技術を見てきたが、説明した全ての技術が「わざアリ」のサービスに適用されているわけではない。現状ではまだ、ユーザーの個人情報は取得していないし、広告表示すら行っていない。
横田氏は、これから1年間ほどの時間をかけて、ユーザーに前述の視聴スタイルに慣れてもらうと話す。ひとまずは実績を作って、実際の広告営業などにつなげる考えのようだ。
P2P業界で人気があり、飛ぶように出回っている動画ファイルは、違法性の高いものや、偏った趣味のものも多い。コンテンツプロバイダが提供するファイルが、こうした流通経路にスムーズに乗るのか、疑問も残る。
しかし小柴氏は、「インターネットではどのようなコンテンツがウケるのかは、松竹側が把握している」とコメント。「初めから合法と分かっているから、抵抗なくコンテンツをアップロードできる」とも指摘する。まずはユーザーアンケートをとって、手ごたえを見ていくとした。
思わず誰かに教えたくなるような雑学・ネタを配信するという趣向は、“P2P向き”を意識したもの。女性タレントがコスプレしているところなども、インターネット的といえば、インターネット的だ
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わざアリ
[杉浦正武,ITmedia]