社会主義的な色彩の強い政策なので、今の日本の政治体制、少なくとも自民党政権が続く限り、ベーシック・インカム制度が導入される可能性はかなり低いと言えるだろう。また、現行の公的年金制度で多大な恩恵を受けている高齢者層は、年金受給額が減る可能性があるベーシック・インカムの導入に大反対することは想像に難くない。
しかし、いずれ大幅かつ抜本的な社会保障制度の改革が迫られるのであれば、最低所得保障の考え方を取り入れ、あまねく国民にお金を配るベーシック・インカム的な発想は大きな意義を持つだろうと筆者は考えている。
かつて、民主党が2009年衆議院選挙のマニフェストで、公的年金制度の改革案として「最低保障年金」という看板政策を掲げていた。民主党政権は3年半という短命で終わったため年金制度改革は全く進まなかったが、この最低保障年金という考え方はベーシック・インカムに近い概念であった。
財源問題を含めベーシック・インカムの導入には課題が多く、税制を含めた大改革を実現するためには、10年単位の長い移行期間も必要となろう。「社会保障と税の一体改革」について国民的議論が再び活発化することを願いたい。
4月に放送されたテレビ番組『そこまで言って委員会NP(読売テレビ)』で、ホリエモンこと堀江貴文氏が、日本を元気にする秘策として、ベーシック・インカムの導入を提唱していたことは傾聴に値する。(完山芳男)
完山芳男
独立系FP事務所「FPオフィスK」代表。
米国公認会計士(ハワイ州)、日本FP協認定CFP(国際上級資格)、1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)。
慶応義塾大学商学部卒業。大手自動車メーカーや外資系企業等の経理財務部勤務を経て、カリフォルニア大学バークレーへ1年間留学し、ファイナンスを履修。帰国後、米系・欧州系企業において経理責任者を務める。2004年愛知県名古屋市にて、独立系FPとして事務所を開所し現在に至る。
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