新卒一括採用が「若き老害」を生み出している常見陽平の「若き老害」論(3/3 ページ)

» 2016年10月07日 07時00分 公開
[常見陽平ITmedia]
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その企業に「いつ入社したのか」問題

 もう一つ、期による世代間格差が生まれる原因に、その企業に「いつ入社したのか?」という問題がある。その企業の業界内シェア、規模、見え方は、入社時期によって変わってくるからだ。

 例えば上場したメガベンチャーなどは、従業員にとっての捉え方が入社した時期によって大きく変わる。黎明期から入社した者は、会社の歴史を知っているし、自分が功労者であるという認識すらあるだろう。一方、規模が拡大した後や、上場した後に入ってきたら「大企業に入った」という認識になってしまう。

 このあたりの見せ方のさじ加減は、経営者も人事部も悩むポイントである。創業期からいる40歳くらいの者は世間からみると、若くして出世した風だが、社内ではすっかり老人、リアル老害だ。上場してから入社してきた者も、“選ばれ者感”を醸し出して若き老害化し、上に噛みつき、新人たちをマウンティングする。

 企業によっては人手が足りず、誰でも彼でも採用していた時代だってある。採用力が弱く、第一志望に落ちた者ばかりを拾っていた時期だってある。その時期に採用された人は、劣等感と、会社を成長させたという自負が同居している。のちに世界シェアトップになった企業でも、業界シェアなどが上がる前に入った者は「ここしか行くところがなかった」という気持ちと、「俺がこの企業を大きくしたのだぞ」というドヤ感が同居する。そのリアル老害に対して、この企業に選ばれたというマインドで入ってきた若手が、若き老害化し、やはり上にかみつき、下の世代をマウンティングする。

 もちろん、これは当たり前のことではある。会社の中での入社した期による違いはこのようにして生まれるというのは一般論だ。また、新卒一括採用は昔から存在する手法だ。

 しかし、近年ではビジネス環境の変化が激しくなったことで、期によって大きな違いが生まれやすくなっている。いまの世代の若者(30歳前後)は昔以上に自分の生き残りに対する不安が大きく、そのため、ついついマウンティングしてしまい「若き老害」になってしまうのだ。

常見陽平のプロフィール:

 1974年生まれ。身長175センチ、体重85キロ。札幌市出身。一橋大学商学部卒。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。

リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。長時間の残業、休日出勤、接待、宴会芸、異動、出向、転勤、過労・メンヘルなど真性「社畜」経験の持ち主。「働き方」をテーマに執筆、研究に没頭中。著書に『僕たちはガンダムのジムである』『エヴァンゲリオン化する社会』(ともに日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)『普通に働け』(イースト・プレス)など。


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