米コカ・コーラとGMの、最先端ビジネス事情Dreamforce 2016(1/2 ページ)

» 2016年10月07日 21時31分 公開
[青柳美帆子ITmedia]

 海外大企業はどのようにITツールをビジネスに活用しているのか。この答えを知ることができるのが米Salesforce.comの年次イベント「Dreamforce 2016」(10月4〜7日、米サンフランシスコ)だ。

 2016年のテーマは「Customer Trailblazer(顧客の中の先駆者)」。Salesforceが提供する「Sales Cloud」「Marketing Cloud」などのITツールを活用し、成果を上げ、変化を遂げた企業や個人にスポットが当たっている。「Trailblazer」は日本では耳なじみのない単語だが、“高い山に誰よりも先に上っていく人”をイメージしてみると少し分かりやすくなる。

 会場内でも特に目立っていたのが、各業界を代表して出展している7つの企業だ。製造業のChevrolet(シボレー)、ヘルスケアのLilly、消費財メーカーのCoca-Cola、金融サービスのFarmers Insurance、通信サービスのT-Mobile、小売のAldoとvineyard vines――どの企業もSalesforceをはじめとしたITツールをビジネスに生かしているのだ。

ITツールを活用した先駆的な取り組みをする北米Coca-Cola

Coca-Colaの事例:ユーザーの先読みをする

 北米Coca-Colaは、B2BカスタマーサービスのプラットフォームにSalesforceを採用している。組み込んでいるサービスは「Service Cloud」「App Cloud」「Sales Cloud」「Marketing cloud」「IoT Cloud」「Analytics Cloud」と幅広い。

 このプラットフォームでは、ウォルマートなどのショップや、マクドナルドなどの飲食店とやりとりをしている。主に導入、発注、メンテナンスといった段階でユーザー数は1万5000(企業、店)にも上る。

 では、具体的にどのようにB2Bビジネスが行われているのか。Coca-Colaの自動販売機を自分の店に導入した顧客Aさんの例で紹介しよう。顧客は契約とともに同社のコミュニティーに招待され、以降はそのコミュニティーのプラットフォームを介したやりとりをすることになる。

 Aさんが仕入れた自動販売機のタンクが古くなってきて、交換の必要が生じてきた。するとタンクに組み込まれたセンサーが、Coca-Colaのサービスセンターに減少を通知する。そこでエージェントが「タンクが古いので新しいものを購入してください。あと○日でタンク内部のCO2が切れてしまいます」とアラートを出せるわけだ。Aさんがアラートを受けて注文すれば、すぐさま交換隊を派遣できる。この一連のやりとりはプラットフォーム上で行えるので、メールや電話は必要ない。

CO2の減少アラートを自動で出すことができる

 現象の予測は、以前からパイロット版がリリースされ、16年9月に正式スタートしたSalesforceのAI「Einstein(アインシュタイン)」が使用されている。Einsteinは同社の新サービスというわけではなく、既存のサービスに組み込んで利用できるものだ。

 米国におけるトレンドは“ユーザーエクスペリエンス”と言われている。ユーザー側がサービスを利用して新たな体験や満足をすることを重要視した考え方で、そのためにはユーザーのニーズを“先読み”し、展開することが必要になる。IoTやAIは、その体験にとって非常に重要になってくる。

 「コカ・コーラを欲している人に効率よく届けるために、Salesforceの製品は非常に役に立っている。顧客だけではなく、会社の所有している工場や、委託工場ともうまく連携を図り、製造、物流パートナーとの関係を深めている」(Coca-Cola CTOアラン・ベーム氏)

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