予想を裏切ってきたトランプは、北朝鮮を攻撃するのか世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)

» 2017年04月13日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

現状は「戦争勃発の一歩手前」

 まずシリア問題だ。4月13日、トランプ政権がシリアを攻撃したニュースは驚きをもって世界で受け止められた。その理由は、米政府とトランプ大統領自身のこれまでのシリアへのアプローチを180度変換させるものだったからだ。

 というのも2013年、シリアのバシャール・アサド政権がダマスカス郊外を化学兵器で攻撃した際に、当時のバラク・オバマ米政権はそれを軍事的に対処する「越えてはいけない一線(レッドライン)」としつつも、攻撃に乗り出さなかった。当時民間人だったトランプは、それに賛同し、シリアへ介入することに反対を示していた。また大統領選でも、中東の問題などにこれ以上関与しないと語ることもあった。

 米政府はこれまで、さまざまな立場の武装勢力と国家が絡むシリアでは、あくまでIS(いわゆる「イスラム国」)との戦いに限定してきた。オバマ政権時にもシリアで空爆を行っているが、ISのターゲットが標的であり、アサド政権への攻撃は実施してこなかった。その背景には、アサド政権を後援するロシアやイランなどの存在があったからだ。

 それが今回、トランプ政権はアサド政権のシリア軍を攻撃した。攻撃の後にロシア高官が主張したように、現状は「戦争勃発の一歩手前」になっている。では今後、シリア攻撃はどう展開するのか。

 今回の攻撃に対するトランプの発言、そして過去の発言などから探ると、米軍がシリアに対してさらなる攻撃を行う可能性は高くない。今回のシリア軍の化学兵器による攻撃(アサド政権とロシアは否定)で、トランプは、シリアの子どもなどに対する攻撃が自分に「大きなインパクト」を与えたと強調し、「シリアへの見方がかなり変わった」と述べていた。米メディアでは大統領が「感情移入」して攻撃を命じたと報じられている。

 そしてトランプは、攻撃の直接的な理由を「化学兵器の使用と拡散の防止」だと挙げている。つまり、トランプはアサドがさらに化学兵器を使わない限り、追加的な攻撃はしないということになる。ロシアなどの手前、すぐに次の攻撃をするとは常識的には考えにくい。

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