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» 2017年07月19日 07時30分 公開

「定時退社」「残業時間2割減」三井住友海上とJALの挑戦劇的な変革のウラ側(2/2 ページ)

[ITmedia]
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女性リーダー不足をきっかけに、全社員の意識改革へ

 特別講演では、日本航空 人財戦略部の久芳珠子氏が登壇。同社が働き方改革に取り組み始めたのは2014年12月。専任組織である「ワークスタイル変革推進室(当時)」を立ち上げたきっかけの1つは、女性リーダーの少なさだった。

 「当時、グループ連結58社の全社員約3万2000人のうち、女性比率47%に対して女性リーダーは15%のみ。自社分析を徹底的に行った結果、働き方・意識・風土の3つの課題が浮かび上がった」(以下、久芳氏)

 育児休職や産休といった社内制度は整っていたが、仕事を免除する「ケア施策」が中心であり、キャリアの不安を払拭できていなかった。在宅勤務や長時間労働の是正を通じ、キャリアブランクを埋める「フェア施策」への転換を図る上で、女性社員だけでなく全社員の意識を変える必要があると判断した。2010年の経営破綻以降、長時間労働が常態化していた企業風土を改善する狙いもあった。

 「当初は変革チームの6人中5人が兼務であり、本業が忙しいなどの理由でなかなか進まなかった」と久芳氏は振り返る。最初の大きな動きは、社内の調達本部を「特区」としたオフィス改革だった。書類で埋もれていたデスクをフリーアドレス化し、個人の所有物は個別のロッカーに割り当てた。空きスペースが生まれ、不足していた会議室の確保にもつながった。

日本航空の調達本部のオフィス

 「社内でも多忙な部署である調達本部がモデルケースになることにより、他部署から『うちはまだなのか』と声が掛かるようになった。通常業務を行いながらオフィス環境を改善するには、スモールスタートが有効だと実感した」

「何を伝えるか」以前に「誰が伝えるのか」

 次に取り組んだのはシナリオの作成だった。特区の事例やグループ各社各部の取り組みから、共通課題を洗い出し、働き方改革に取り掛かる順番を決める。まずはペーパーレス化に着手し、モバイル環境整備や業務プロセス改善へと進めた。ペーパーレスとモバイル環境の整備により、社員が働く場所や時間から解放される流れだ。

実現に向けたシナリオ

 同時に、社員の意識を変える施策も実施する。JALグループの間接部門約4000人を対象に開催した「意識改革ワークショップ」では、先行部門の社員が講師を務めた。

 「なぜ改革に取り組むのか、どうすればうまくいくのか、社員自らの経験とともに伝えてもらった。トップダウンより、聞き手と同じ立場の社員が語る言葉には説得力がある。『何を伝えるか』も大事だが、『誰が伝えるか』も大切」

 ワークショップは、必要性や背景を伝える「マインドセット」と、各自の知識を底上げする「スキルセット」の2部に分かれている。マインドセットは必修だが、スキルセットは1コマ15分単位のミニワークショップを複数受講可能。「在宅制度の正しい理解」や「ペーパーレス化とは?」など、スキルレベルに合わせて細分化されたテーマから選択できるようにし、社員同士のスキルレベルの高低差を埋めた。

久芳珠子氏

 部門ごとに働き方改革が進められてきたところで、全社共通のルールも策定した。「会議は午後5時半まで」「電話・メールは午後6時半まで」などと目標を定めると共に、全部門別に勤務実績を見える化する。フレックス勤務や在宅勤務制度など、柔軟な働き方ができるよう環境整備も進めた。

 こうした活動が実を結び、開始から約半年で残業実績は約2割改善。2016年度は3割の組織で残業半減を達成した。2017年度末までには総労働時間1850時間(注:総労働時間1850時間を達成するためには、年休を20日取得し、残業を月間約4時間までに抑える必要がある)を目指すという。

 「2015年度は意識改革と基本インフラ整備、2016年度は業務プロセス改革というように段階を踏みながら、1つ1つの課題をクリアしてきた。今後は意思決定のスピードアップを図るなど、社員全員が『JALで働いて良かった』と思えるような新たな価値を生み出していきたい」

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