ゴーン会長解任劇で注目、「敏腕」西川日産社長の横顔タフなリーダー(2/2 ページ)

» 2018年11月28日 18時34分 公開
[ロイター]
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<今や反ゴーン派>

普段は早口な西川社長だが、ゴーン容疑者逮捕を受けて19日夜に開いた記者会見では、弁護士や他の幹部を同席させず、急がず冷静な態度で90分近く質問に答えた。その姿にはソーシャルメディアで称賛の声が上がった。

西川社長が頭を下げて謝罪しなかったこともかなり効果的だったと、日産の元幹部は指摘。まるで自身は個人的に悪くないと示しているかのようだったとこの元幹部は付け加えた。

西川社長はまた、「ゴーン統治の負の側面」を率直に認め、前会長に権力が集中し過ぎていたと説明。ゴーン容疑者は金銭的不正に加え、必要な意見を求めることなしに独断で物事を決定していた時期もあったと明らかにした。

一方、20日開かれた幹部会議では、西川社長はいつもの冷静さを欠いていたと、同会議に出席した2人が明かした。そのうち1人は、社長の目は潤んでいるように見えたと述べ、もう1人は声を震わせる場面もあったと語った。

日産とルノーの他の社員同様、西川氏のキャリアもゴーン容疑者の影に隠れてきた。カリスマ的で、「コストカッター」と呼ばれた同容疑者は、日産の5工場を閉鎖して2万1000人をリストラすることにより、負債に苦しむ同社を再生させ、高い評価を得て日本で新境地を開いた。当時、このような大なたを振るえるのは外国人だけだと広く思われていた。

しかし今度は、西川社長が未知の領域に踏み出す番である。

日産、ルノー、三菱自動車工業<7211.T>の3社連合をうまく率いていくことができるのはゴーン容疑者だけだと、多くの専門家はみていた。

自動車産業コンサルティング会社カノラマのマネジングディレクター、宮尾健氏は、3社連合を率いることは西川社長にとって非常に困難であり、日産の株式43.4%を保有する筆頭株主のルノーが支持するか定かではないとの見方を示した。

西川社長はルノーの取締役を10年務めているが、フランス政府と交渉したり、ルノーを率いたり、仏タイヤメーカー、ミシュランの上級幹部を務めたりといったゴーン容疑者のような多岐にわたる経験はない。

だが、西川氏はやり手の交渉人であり、それでなければゴーン容疑者は同氏を社長に選ばなかっただろうと宮尾氏は指摘する。

ゴーン容疑者より数カ月年上で現在65歳の西川氏は40年以上前、東京大学から日産に入社。目立つことは嫌いといわれ、既婚者であるという以外、私生活はあまり知られていない。

キャリアの大半を調達とサプライチェーンの管理に費やし、ゴーン容疑者がコスト削減のため部品供給網を解体するのに貢献した。

2013─16年はチーフ・コンペティティブ・オフィサー(CCO)として、原材料調達費や調整費、企画開発費の節約により、製造費を削減する仕事を任された。西川氏はまた、三菱自動車との資本業務提携交渉でも大きな役割を果たした。

西川氏は数字が全てで、結果を出さない人には厳しいが、自分にも厳しいと、前出の日産元幹部は言う。優しさに欠けるという人がいるかもしれないと、この元幹部は付け加えた。

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

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