「サンリオピューロランド」の来場者数が5年で約2倍 現地で見えてきた“勝因”とは長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/6 ページ)

» 2019年08月20日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

大人が持っても違和感のないキティ

 キティは、マイメロディ(1975年)、リトルツインスターズ(通称:キキララ、75年)、ポムポムプリン(96年)、シナモロール(2001年)、ぐでたま(13年)などといったサンリオが自社内で開発したキャラクター群でも最初にヒットした。ファンシーグッズを直営店で売るというサンリオのキャラクタービジネスを確立した存在だ。

 サンリオは70年代初めから直営店を出していたが、その頃のデザインは水森亜土氏ら外部に頼っていた。

 80年頃には女児に人気を博したキティブームは終息した。山口氏はキティの再構築を進め、デザインで変えてはいけないとされたことを一部緩和して、自由な表現を可能とした。流行の服を纏(まと)うお姉さんキティが登場し、ファッションの発信地として発展してきた原宿ともリンクするようになってきた。キデイランドでは今もキティは主力キャラクターだ。

 90年代半には人気絶頂だった歌手の華原朋美さんがキティファンを公言したのは大きなインパクトを持った。プラダやグッチといった高級ブランドを好む大人の女性が、子どもの持ち物とされたキティグッズを買ってもいいのだと気付かせた。女子高生、女子大生、さらには消費の中心である25〜35歳のF1層へとリーチした。

 また、2000年代に入って日本の漫画やアニメがクールジャパンの象徴として、欧米で評価が高まったのも追い風となった。マライヤ・キャリーさん、レディ・ガガさんら、キティ好きを公言する世界的スターも出現。ハリウッドセレブがキティグッズを持っても、何の違和感もない状況となった。

ピューロランドの成長は持続可能か

 6月にピューロランドとハーモニーランドという大分県にある屋外型テーマパークを運営するサンリオエンターテイメントの社長に就任した小巻亜矢氏は、14年に同社顧問となって以来、ピューロランド館長などを歴任し、改革の先頭に立ってきた。

 その手法については「来場者4倍のV字回復! サンリオピューロランドの人づくり」(ダイヤモンド社、19年7月刊)に詳しい。本書にはV字回復の秘密として、メインターゲットを「大人女子」に変える、キャラクターの輪郭をなくす、と書かれてある。これはまさに、キティが世界的キャラクターに飛躍する段階でとってきた戦略だ。大人仕様のキャラクターにするためには、輪郭をなくしてふんわりした癒(いや)しを感じる雰囲気にするのが重要だ。

 そのうえで、お土産としてプレミアム感あるオリジナルのグッズやレストランメニューを開発し、キャラクターの個性を生かすカワイイ歌舞伎のような他の場所では見られない出し物をつくり、レディキティハウスのように思わず笑顔になる活気あるおもてなしを行っている。

 このような実践を続ける限り、ピューロランドの成長は持続可能ではないだろうか。

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